誰がための自由貿易なのか(臨時編)
---日米 FTA/消費増税 /カジノ解禁に反対します ---
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元FRB議長でヘリコプター・ベンの異名を持つバーナンキさんが来日していた様子がTVで報道されていました。彼は黒田日銀総裁と会い色々助言をしたようです。その時の話を要約すると、
1、2%のインフレ目標の継続
2、日銀の量的緩和は上手くいっていないが継続すべき
3、その場合、減税と財政出動をセットにすべき
そんな感じだと思います。
正に我が意を得たりです。(笑)と言っても日本人エコノミストの中にも異口同音にそういう事を言っている人はいます。表には出て来ないだけです。日本のマスコミは面白い人とか、左翼の人、また頭のおかしい人を重用する習慣でもあるようで、まともな人は殆ど出て来ません。
上記バーナンキ発言を分かりやすく私なりに解説します。まず、大前提として日本の実力を正しく評価している事があります。これは、デフレは給料の減少が原因で、決して商品に魅力がない訳でも、ものに満ち足りた先進国だからという理由でもないという意味です。
だから国民にお金を与えて購買力を持たせろとバーナンキ氏は言っている訳です。その手段として減税と財政出動をあげていますが、これが意味するのは政府債務拡大です。つまり国債をもっと刷って国民のためにお金を使えというのが彼の言いたい事なのです。
そうすれば必ず消費は上向き、2%のインフレ目標は達成出来る、つまり、いくら政府債務を膨らませても経済成長する事で対GDP比を下げれば問題がないと言っている訳です。至極まともで、マクロ経済を理解しないエコノミストが幅を利かす日本の国情にもあった考え方です。
政府は是非参考にして具体策を決めてほしいのですが、減税と言えば消費税です。これを少なくとも5%に戻す事で6兆円の効果があります。さらに財政出動を10兆円も追加すれば合計16兆円、単純計算でGDP3%もの押上効果がある訳です。
そうなれば量的緩和の規模を縮小する事も可能です。年間30〜40兆円規模で十分かもしれません。肝心なのはマネーストックの増加率です。90年以前の平均9%は望めないにしても、今の倍である5〜6%を達成出来れば4%(実質2%)の成長も夢ではありません。
しかしながら、安倍政権はやらないと思います。(笑)いきなり奈落の底へ突き落とすようですが、そうは問屋は下ろしません。過去にもクルーグマン教授始め、何人かの外国人経済学者も同じ事を言っていました。
それでも消費税を上げたのですから確信犯です。どうしても逆らえない誰か、あるいは勢力が陰にいて、それが障害になっているのでしょう。あくまでも推測に過ぎませんが、日本を立ち直らせたくない力が働いています。
ついでと言っては何ですが、読者の方からのご質問に対する回答の補足をしておきます。
貿易黒字などで得た外貨は円に交換されますが、その時に円の量が市場に潤沢であれば、日銀は敢えて円を増刷する意味はありません。従って、円高を防ぐ意味での売りオペもしません。
今は異次元緩和でマネタリーベースが日銀当座預金に350兆円以上もあります。何度も言いますが、これは米やEUとの比較でも異常というくらいに多いのです。従って入って来たドルなどの外貨を交換する事に何の問題もない筈です。
その場合、どういう事が起きるのかと言いますと、まず輸出業者が稼いだドルは海外から輸出業者の取引銀行に振り込まれます。その銀行は外為市場(と言っても証券取引所のようなものがある訳ではない)で円と交換し輸出業者の口座に振り込む訳です。その時にその銀行の当座預金残高も同額増えます。負債=資産という訳です。
その売ったドルは、輸入業者など、必要とする会社が受け取ります。その輸入業者の取引銀行の口座からその分の円が引かれ、その銀行の当座預金が同額減って、これでプラスマイナスゼロになり円の量に変わりはありません。
一方のドルは累積で積み上がります。円の量が変わらずドルがどんどん増えれば必然円高になりますね。それを嫌う政府が時々為替介入をするのですが、その時のドル購入のための資金は政府短期証券を刷って銀行に買わせる訳です。
そうすると買った銀行の当座預金が減りますが、政府がドルを買う事で、その相手の銀行の当座預金が増えます。結局円は増えないのですが、今度はドルが政府に渡る事で市場から消える事になり、その分ドル高円安に振れるという訳です。政府が持つ外貨は外貨準備としてカウントされます。日本の場合大半が米国債に化けています。
この異次元金融緩和を見た米、トランプ大統領が先頃日本やドイツなどを為替操作国に指定するという事態が起きました。今はそれから外れたようですが、日本特有であるインフレ目標を理解したのだと思われます。表向きはですが。(笑)
つまり、現状は為替介入の代わりに日銀が当座預金残高を増やしてるという訳です。貸借対照表が頭に入っていないと分かり難いのかもしれませんが、基本的にはそういう事だと理解しています。もし間違いがあれば指摘して下さい。
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コメント
理解できているかどうかに自信はありませんが、太字のついでと言っては何ですがからを面白く思いました。
納得できるのですが、全くこういう解説はマスコミでは見受けられないので勉強になります。
たしかどこかの週刊誌で、アベノミクスは成功していると言う文を見たことがあります(外国人の方の論だったと思います)。私はそれに関しては首を捻って考えても全くよくわからないので、田中様の観点と総合してこう思うという内容がありましたら教えていただけませんか?。
忙しければお返事貰えなくても全く問題ありません。
投稿: nao | 2017年5月26日 (金) 21時49分
naoさん
アベノミクスに関しては、少し長くなりそうなので、近い内にブログ記事の方でやります。
少しお待ち下さい。
投稿: 田中 徹 | 2017年5月27日 (土) 08時41分