« どこからどう見てもリスキーな自由貿易 | トップページ | 日本の財政問題を再考する(前編) »

2017年6月26日 (月)

公務員を減らして節約する、は正しいか?

Photo     

---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

ブログランキングに参加しています。

 昔から日本には公務員の数が多過ぎる、税金の無駄遣いだから減らせという議論があります。ところが調べてみるとそうでもないようです。時々目にする暇そうな公務員を見て言っているのかも知れませんが、国家と地方合わせて355万人という公務員数は人口千人あたりで見るとフランスの3分の1、米の半分弱とかなり少ないです。

しかし実際のところ公務員を減らすと経済効果はどうなのか、興味がない訳ではありません。今日はそのあたりを考えてみたいと思います。減らしても行政サービスの質が落ちない事を前提とします。

Photo

2011年の公務員の人件費が28.9兆円なので半分にすると14兆円程で済みます。そうなると14兆円も少なくて済むので、その分消費が増えて経済がよくなる・・のでしょうか?GDPの3%近い額ですから期待が持てそうです。

中央政府による歳出は総額でざっと100兆円くらいですが、その中で公務員人件費は7.6兆円(国家公務員5.2兆円、地方公務員2.4兆円)です。一方地方歳出に占める公務員人件費は21.3兆円(歳出予算66.8兆円中)にもなります。

それが半分で済めば確かに楽にはなるでしょう。プライマリーバランスで言えば昨年のマイナスが10兆円ちょっとですから4兆円以上の黒字化が達成される訳です。地方一般会計のマイナス分は、政府による地方交付金が同額マイナスされると仮定すればその数字になります。

しかし、よく考えると今税収不足分は国債発行に頼っています。従って公務員削減によって税金が減る訳ではなく、国債の発行額が減るだけなのです。という事は公務員が減った分の消費が減りGDPはマイナスになります。(実際には削減された公務員も一定の消費はするので、そこまで計算は簡単ではありません)

さらに歳出が減る事が何を意味するかですが、マネーストックの増加に重大な影響を与えかねないです。今、年間での増加が30兆円程(対M2でみて3%程)なので、単純計算すると16兆円まで減る事になります。

Photo_2

(わざわざ将来世代の負担などという注釈を入れている。国民を洗脳しようといういやらしい魂胆が見え見え)

言うまでもありませんが、国民の財布であるマネーストックは政府の財政支出と民間金融機関の貸出し増加にかかっています。政府分が減った場合、民間分が増える保証は全くありません。というかむしろ逆のような気がします。

政府がお金を積極的に出さないのに民間は怖くて貸せないのです。どういう事かと言いますと、政府が財政出動をすると必ず銀行の資産が増えます。まず政府が国債を発行して銀行が買うと銀行の当座預金残高が減り、その分有価証券の資産が増え資産自体はイコールです。

次に政府がその資金を公共投資などで民間に対し支払う事で、民間企業の取引銀行の預金残高と当座預金残高が同額増える訳です。つまり銀行の金融資産がその分は確実に増えるという訳です。(実際には現金資産は元に戻るだけ)これなら安心して貸出しが出来ます。

という事は、政府が財政支出を減らすと悪循環に入る可能性が大なのです。90年以降の日本は銀行や企業がバランスシートの健全化を進め、貸出し、借り入れを抑制したたため、代わりに政府が財政出動する事でマネーストックを増やして来ました。年平均で30兆円くらいでしょうか。それが日本経済を支えて来たのです。

因に90年までは日銀の窓口指導により民間銀行が積極的に貸出しを行いマネーストックを増やして来ました。前年比で平均9%にもなります。それくらいマネーストックを増やしても実質で言えば4~5%の成長でしかなかったのです。

ところで、職を失った公務員はどうなるのでしょうか。180万人もの働き口を探すのは大変です。例え見つかったとしてもマネーストックが増えない状況下では、今の就労人口にプラスされるだけ、という恐ろしい事になりかねません。

つまり今の売り上げ高を、増えた分も含めた就労人口で割る事になり一人当たりの給与はむしろ減るのです。就労人口増加によって生産量が多少増えたとしても、使えるお金の量が変わらなければそうなります。それはデフレの深化でしかありません。

職が見つからない場合は当然の事ながら失業手当が必要になります。その財源は財政支出に頼らざるを得ず、国債を発行せざるを得ません。すなわち元の木阿弥になるという訳です。何のこっちゃです。それなら今まで通り働いてもらった方がいいでしょう。

結論としては、民間の人手不足が外国人を入れなければならない程深刻になったなら、少しづつ公務員が民間、特に労働集約型産業に移るのはいいかもしれません。その代わりAIを駆使するなどして欠員の穴を埋めなければいけないのですが、それは新たな投資(借り入れ)に結びつくので悪くない話ではないでしょうか。

いずれにしても政府はマネタリーベースより、マネーストックを増やす事に注力すべきです。ちょっと竜頭蛇尾でしたが、公務員を節約目的で減らしたからと言って、特に何かがよくなる訳ではなく、むしろ経済は悪くなるという話でした。

 共感いただければクリックをお願いします。

|

« どこからどう見てもリスキーな自由貿易 | トップページ | 日本の財政問題を再考する(前編) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« どこからどう見てもリスキーな自由貿易 | トップページ | 日本の財政問題を再考する(前編) »