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2017年6月12日 (月)

日経、電子のバーン、を読んでみた

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---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

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今日は番外編ですが、アベノミクスとも関係があるので取り上げました。日経電子版の記事です。

預金残高ついに1000兆円 回らぬ経済象徴
2017/6/10 21:25
日本経済新聞 電子版

  金融機関に預金が集まり続けている。銀行や信用金庫などの預金残高は2017年3月末時点で、過去最高の1053兆円となった。日銀のマイナス金利政策で金利はほぼゼロにもかかわらず、中高年が虎の子の退職金や年金を預け続けている。預金は銀行の貸し出しの原資だが、今は活用されないまま積み上がる「死に金」。沸き立たぬ日本経済の今を映し出す。

  「預金を集めているわけではないんだが」。大手銀行幹部は苦笑する。メガバンクの普通預金の金利は0.001%。100万円預けてももらえるのは1年で10円(税引き前)だけ。時間外手数料を1回でも払えば「元本割れ」してしまう。16年に日銀が導入したマイナス金利政策は貸出金利を押し下げ、お金が市場に向かうとの期待があった。

 ところが、蓋を開けると預金に集中。個人の金融資産1800兆円の半分を預金が占める。欧米に比べ預金比率は高い。その多くは高齢者の資産。老後の不安から退職金や年金を預金として温存している。運用難から企業や機関投資家らも預金を大幅に増やしている。

  かつて銀行にとって預金はパワーの源泉だった。集めた預金を元手に企業や、自宅を購入する個人にお金を貸すのが銀行のビジネスモデル。企業の借り入れ需要が旺盛だった1990年代ごろまで、多くの銀行で預金は不足した。「行員にノルマを課して預金を集めていた」(地方銀行の元幹部)

  預金をどれだけため込んでも、銀行は全く困らなかった。貸し出しに回らないお金は「余資」と呼ばれ、国債を中心に市場で運用。国債の金利は長期でみれば、ほぼ一貫して下がり続け(価格は上昇)、国債を買っておけば利益が出た。

  そんな左うちわで過ごせる環境を一変させたのが、日銀のマイナス金利政策だ。10年物国債の金利は0%近傍に低下。利回りのない国債は買いにくく、銀行も運用できない余剰資金を預金のまま抱え込むようになった。

  日銀が国債を市場から大量に買い入れてお金を銀行に供給しても、そのお金が個人消費や住宅購入、企業の設備投資に向かわず、現預金という形で銀行にたまる構図だ。

  集めた預金はどこに向かっているのか。貸し出しとして一定量出ているのは間違いない。だが、貸しても貸しても余る。国内銀行の預金残高に占める貸出金残高の比率を示す「預貸率」はピーク時の1988年に137%に達したが、直近は70%台にまで低下。分母の預金残高の多さを如実に示す。

  三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループなど3メガバンクの17年3月末時点の現金・預け金は157兆円。1年前から23%増えた。銀行の金庫で死蔵させるわけにもいかず、多くは日銀の当座預金に向かう。300兆円を超え、1年前から2割以上増えた。

  みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長は「運用できる以上の資金が集まっている」と話す。銀行も途方に暮れる。りそなホールディングスは18年3月期、2年連続で預金が減る計画を立てた。三井住友は中期経営計画で預金目標を示さなかった。できれば減らしたい。それが本音だ。

  預金を集める必要性が乏しくなれば、支店拡大やATMは重荷になる。店舗数は維持しても、業務を絞った小型店に変えるなど変化は起き始めている。手に負えなくなれば、預金者に一定の負担を求めることもありうる。

  マイナス金利を日本に先んじて導入した欧州では一部で法人顧客らに負担を転嫁した。日本でも信託銀行が運用先のないお金を預けてくる年金基金などに一部マイナス金利分の負担を求めた。近い将来、預金に手数料を求められる時代が来るのか。

  1000兆円のうちの1%、10兆円でも市中にお金が回れば、経済活動に弾みをつけることができる。中小企業の支援やベンチャー育成など日本経済の底上げにつながる手立てはある。銀行が預金者の資産防衛意識の強まりと一緒に萎縮していては経済は回らない。

私が日経新聞をとるのをやめてからもう何年も経ちます。日経電子版も最初は物珍しさで読んでいましたが今はもう殆ど読みません。(笑)なぜなら内容が稚拙で読むに耐えないからです。素人にでも分かる経済の基本すら分かっていないようです。日本を代表する経済新聞がこの体たらくです。

そもそも上の記事でも分かるように、預金の本質すら分かっていないのですから驚きです。国民がどこかから稼いで来て銀行に預け、始めて預金残高が記録されるような書き方です。家計の論理から一歩も出ていません。

国民の預金がどうやって作られるのかと言うと、当座預金をベースにして、日本の場合、その100倍(預金準備率による)までのお金を、銀行が貸し出せるからです。(現実にはそこまでは出来ませんが、ややこしくなるのでその理由は省きます)つまり我々の預金残高は国民による借り入れの結果でしかありません。

例えば企業が設備投資で銀行から借り入れた資金が設備会社の社員に給料となって支払われ、個人の預金口座に記録されます。あるいは家を買う時のローンが建設会社に支払われ給料になります。このようにして当座預金残高を変化させる事なく個人の預金残高を膨らませる事が可能です。(今は政府債務が多く、公共投資の結果としての預金残高も相当量含まれます。)

つまり、本当の消えないお金は中央銀行の当座預金口座にしかないのです。日銀券も存在がはっきりしているので本当のお金と呼んで差し支えありません。この二つがマネタリーベースと呼ばれ別名ハイパワードマネーと称される程の力がある訳です。

その意味は、それをベースとして際限なく預金、つまりマネーストックを膨らませる事が出来るからで、国民の稼ぎからの預金ありき、という考えは家計レベルから一歩も出ていない事を露呈しています。さらにその預金は簡単に消えます。

政府が増税などで政府債務を減らそうとしたり、民間企業がバランスシートを改善したり、あるいは個人が借金を減らせばどんどん減っていくのです。デフレなんてもんじゃありません。(笑)最後にはゼロになります。

だから上の記事に書かれているように預金残高を減らしたいなどと銀行屋が、いかなる場合にでも言う筈がありません。自殺行為です。もし本当にそう言ったとすれば金融モグリでしょう。(笑)

>集めた預金はどこに向かっているのか。貸し出しとして一定量出ているのは間違いない。だが、貸しても貸しても余る。

これは新米銀行員目線です。それに余る事もあり得ません。銀行の金融資産は主に当座預金残高と所有する有価証券、貸出金、プラス多少の日銀券で構成されるので、余るという概念はどこからも出て来ないと思います。しかも現実に500兆円以上も貸している訳です。

>1年前から23%増えた。銀行の金庫で死蔵させるわけにもいかず、多くは日銀の当座預金に向かう。300兆円を超え、1年前から2割以上増えた。

これは特にナンセンスです。順序が逆です。預金が増えたという事は、その前にその銀行が持つ日銀当座預金残高が増えているのです。(同時ですが)だから預金が当座預金に向かう事などあり得ません。当座預金残高は全体で見ると日銀との国債等、有価証券の売り買いなど、国への支払や受け取り、利払い受け取り以外で基本動く事はありません。

さらに民間銀行の金庫にあるのは現金(紙幣)ですから、古い札の交換以外で現金(紙幣)を日銀に返却する事も考え難いです。当座預金残高が増えたのは銀行が自律的に増やしたのではなく、日銀による買いオペの結果です。そんな事も知らずに経済記事を書く神経が凄い。(笑)唖然です。

最後に

>1000兆円のうちの1%、10兆円でも市中にお金が回れば、経済活動に弾みをつけることができる。

これも正解のようで、そうでもありません。個人消費は約300兆円なので10兆円は3.3%増にもなります。今の消費性向が0.8として10兆円の上乗せは0.826になり大幅アップになる訳です。そのアップ率が毎年可能かと言えば、そんな訳ないのは小学生にも分かる理屈です。

まあ、言うなれば全て順序が逆なのです。使えるお金に限界があって今の消費が決まるので、使えるお金を増やさない限り経済活動に弾みはつきません。だから第二の矢の財政出動が必須だと言っているのです。政府が国債を刷り借金をして、有効需要を増やすよう公共事業等でお金を民間に渡すのです。

ケインズさんはこれが一番手っ取り早いと言っています。すなわち、経済の活性化には、お金を民間に直接渡す事が肝要なので、穴掘って埋めるだけの行為にさえ、お金を払う価値がある、という話に繋がった訳です。

日経新聞の記事を読んでいると、全くの経済音痴になりますので気をつけて下さい。(笑) 

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コメント

うーん。面白い内容でした。勘違いがあれば以下正してくださるとありがたいです。
 マネタリーベースが一番重要な気がしますがその中身は税金の歳入歳出とは全く関係は無く、借金というか銀行の貸し出し金で構成されているように思いました。
 景気が良くなるのには貸し出しが必要で、庶民などの貯金(銀行へ預けた)はそれには何の関係も無いのでしょうか?。
 この前、森友学園の土地をほぼ只同然か、補助金を考えたら学園に利益が出るような事を政治家や官僚がするのは、国民を馬鹿にしきって結局は国の扱うお金を考えたら微々たる額だからなのでしょうか?(笑)。
 笑とは書いたけれどなんとなく腹が立つ。加えて新聞の記事の中の預金を集めているけれど、有効活用出来ない事が出来るというのは疑問があります。詳しくは分からないけれど、なんとなく銀行員が高給を取るのが厳しくなってきていると思う。
 銀行が潰れる事は無いかもしれないが、銀行経営で儲ける事は厳しくなってきているように思う。とても不思議だった事が良くわかる説明でされているところがありそれはほとんど大きく頷いています(具体的でありませんがコメントを書いている途中で本文を参照できなくなりすみません)。

投稿: nao | 2017年6月13日 (火) 23時43分

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