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2017年7月12日 (水)

質問にお答えします。(3)

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---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

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 今日はまた、読者の方からの前回記事に対する質問にお答えする形で記事を進めていきます。

1)プラザ合意は日本が為替介入をして円安に導いていたのをやめさせたのだと聞いています。

プラザ合意は米の凋落が最大の理由です。戦後は日欧とも戦争で疲弊した国だらけだったので本土が無傷だった米の一人勝ちでしたが、日欧が復興して来ると当然相対的地位が下がります。それで71年に変動相場制に変えたのですが、それでも吸収しきれなかったのです。

特に対日貿易赤字が酷く日米貿易摩擦を見ても明らかに日本が目の敵にされました。さらにインフレが原因で米の金利が10%以上に高止まりし、米国への投資が集中する事でドル高が避けられなかったのも大きな原因です。

日本の為替介入が原因というのは聞いた事がありません。もしそれが事実なら各国が協調介入する必要はなく、米の当局が一言「為替介入すればペナルティを与える」と言えばいいだけです。

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(実質実効為替レートの推移/オレンジが対ドル為替レート、今の円安は悪性だと言える)

2)また円高がデフレをもたらすのは輸入物価が安くなるからですか。すると国内で作るより買ってきたほうが手っ取り早いから国内が成長しないということでしょうか。また貿易も不利で今もそれが続いていると。

円高になると輸出産業がコスト削減に動きます。当時で言えば欧州勢との価格競争力を維持するためです。そのため仕入れ先や協力企業がコスト削減に協力させられます。メーカーも賃上げに抑制圧力が働かざるを得ません。仕入れも下請けも突き詰めれば全て人件費です。つまり人件費を下げる事で外需依存を続けたのがデフレの大きな要因です。

輸入(逆輸入含む)は国内空洞化を推進しただけで、デフレに対する影響はさほどないと思われます。それよりマネーストックが増やせない状況が人為的に作られた事は見逃せません。犯罪的行為とさえ言えるでしょう。それに関しては次の質問で説明していますのでご参照下さい。

今は極度の円安状態なので貿易に不利とは言えませんが、円安分のインフレになっていないのが大問題です。相対的国力低下を招いています。

3)ならば公共投資はしないほうがよかったのですか。また国債を大量に発行すればお金が増えるのだからインフレになるように思うのですが。しかも国債ではなく現金ならよかったと??

米が日本に巨額の公共投資を迫ったのは、行き過ぎた日本の外需依存を方向転換させ、国内に目を向けさせる(内需拡大)ため、という名目であった事は確かです。それもないとは言いませんが、そもそも米が進めるグローバル化や自由貿易と矛盾します。従って本当の狙いはそこではないと思われます。以下にその根拠を説明をします。

適度な公共投資は勿論やって悪い事はありませんが、その場合財源が問題になります。まず税金でやっても景気は刺激しません。元々国民の所得であったものをゼネコンに廻すだけですから全体で見れば同じです。むしろゼネコン優遇になりかねません。

次に国債を刷って、その資金を使えばお金が増えるからインフレになるとの事ですが、そうとは限りません。国債を銀行に買わせれば、まず当座預金残高が減ります。その資金を政府が使えば国民の側にお金が廻り、その分はマネーストックが増え、単純に考えれば景気を刺激する事は確かです。

ところが国債を刷って得た資金が全て国民の側に廻るとは限らないのです。長年それを続けていると償還費と利払い費がバカにならなくなります。2016年の歳出を見ても24兆円が償還費と利払いに消えます。これは主に銀行の取り分です。

つまり34兆円国債を刷っても国民の財布(マネーストック)には10兆円しか廻らないのです。今はそこから公共投資分を捻出していると考えて下さい。もう一方の銀行からの貸出しによるマネーストック拡大には足枷がついていて思うように増えません。

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        (マネーストックの伸び率)

その足枷のひとつは固定資産税などが原因での地価下落です。担保価値が下がったのでは貸出しは増えません。BIS規制や金融検査マニュアルの厳格化も貸出しの足を引っ張ります。

もう一つは銀行などによる国債を含む有価証券の保有です。有価証券を保有すればする程銀行の全資産に占める当座預金残高比率が減ります。つまり貸出しに廻す分が少なくなる訳です。これも足枷になります。

今現在は異次元緩和で当座預金残高は潤沢になりましたが、第二次安倍政権誕生まではそういう状態が続いていたのです。そこには狡猾な米の計算があったのでしょう。まず、バブルを醸成させ崩壊させる事によって企業や個人に大変な負債を抱えさせます。

例えば不動産をピークで買った人は半値に下落したとしても住宅ローンが全額ローンの1億円とした場合、5000万円も余分なローンを抱える事になるのです。返済に必死になって新たな借り入れどころでない事は自明です。これではマネーストックがどんどん減っていきます。(参考ーバランスシート不況

そのバブル崩壊後の非常事態とも言える状態なら国債は銀行に買わせるのではなく日銀引き受けにするべきでした。そうすれば金融機関の国債保有もなく、当座預金残高は増える一方なので貸出しに積極的にならざるを得ないし、刷った分の資金も全て国民の側に行き渡ります。

現金にすべきというのはそういう意味です。国民の側である銀行を通さず国側(政府と日銀)で資金を用意すれば現金が全て国民の側に行くので効率が一番いいのです。

米と日銀が考えたシナリオは、政府(財務省)に国債を大量に刷らせて現金量(マネーストック)を増やし難くする事です。例え増えても消費税などによって格差をつけ、企業や高所得層が吸収するところまで考え抜かれています。マネーストックが微増しても、それに見合っただけの経済成長がないのはそのためです。

このように10年単位で見れば米の魂胆が透けて見えて来ます。国債発行は最初こそメリットが大きいのですが、それを続けていくと徐々に首を絞めていく訳です。財政赤字の拡大です。そうなると逆に大胆な内需拡大策が採り難くなります。

それを裏でバックアップするため、国民一人の借金が〜や、グローバル化は既定の路線というプロパガンダをマスコミを使い盛んに流しています。また法律その他で規制したり邪魔したりして国民の手足を縛っていきました。

そのエクスキューズは米からの年次改革要望書などの内政干渉です。日本政府が米に対して、どれだけ譲歩を重ねた事か、日本の屈辱の歴史と言えます。

4)米も抱きついているのもそれはそれで苦しいというのはどうしてでしょうか。

上記のように日本の動向ばかり見ていて、やる事なす事に一々ケチを付けたり、難癖を付けるのは大変だろうと思った訳です。(笑)かと言って離せば日本が再生してしまいます。

5)もとに戻りますが、金利差が米に利益になったのは投資資金が日本から大量に米に流れたというこでしょうか。

拙過去ブログ「異次元金融緩和、真の目的は?」をご参照下さい。「円キャリー」でググっても分かると思います。

http://ust.cocolog-nifty.com/blog/2017/05/----c11e.html

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コメント

ありがとうございます。大変よくわかりました。プラザ合意については、記憶が確かではありませんが、高橋洋一氏が言っていたように思います。私も「え??」と思いました。しかし米国は狡猾ですね。財務省日銀もグルですか。このことがもっと知られてほしいです。

投稿: 八丈島 | 2017年7月12日 (水) 20時21分

追伸
プラザ合意の為替介入についてですが、上念司氏の「習近平が隠す本当は世界3位の中国経済」の84ページに書いてあります。

投稿: 八丈島 | 2017年7月12日 (水) 22時13分

八丈島さん

為替介入をすると、外貨準備高に証拠が残ります。円安維持のためにはドル買いをしますから外貨準備高が増える訳です。

ところが80年代の外貨準備を見ても低位で安定しています。300億ドル台で85年にかけてはむしろ減らしているくらいです。今は1兆2000億ドルも持っていますから、その差が歴然でしょう。

上念さんや高橋さんが何と言おうが数字は騙せません。例え介入の事実があったとしても極小規模なものです。それが原因で世界を揺るがすようなプラザ合意に至るという事はあり得ません。

投稿: 田中 徹 | 2017年7月13日 (木) 09時32分

私も「え??」と思いました。田中様のおっしゃることの方がずっと合理性があります。もし上念さんの言うとおりなら日本が不公正だったことになります。プラザ合意は米国にしてやられたと思っていた私にとっては意外でした。

投稿: 八丈島 | 2017年7月13日 (木) 13時47分

八丈島さんの質問→田中徹さんの回答・・・どちらも素晴しいですね!
有難う御座います。

投稿: AZ生 | 2017年7月14日 (金) 15時04分

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