誰がための異次元緩和なのか
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日本の大企業の2倍の初任給を中国の大企業が出せるという事実に、リアルに日本の衰退を感じた。
中国の通信機器メーカーである華為技術(ファーウェイ)の日本法人が大卒初任給として40万円以上を提示するなど、外国企業の給料の高さが話題となっています。かつて日本はもっともコストが高い国と思われていた時代がありましたが、今となってはもっとも安上がりな国となりつつあります。
中略
製造ラインを国内に戻している理由のひとつは、日本の経済力の低下によって、国内の労働コストが相対的に大きく下がっているからです。
(あるサイトで見かけた記事)
いやいやいやいや(笑)何をおっしゃるウサギさん。その赤い目は一体どこに付けているの?と言いたくなるような記事です。挙げ句の果ては、日本は後進国になりつつあるとも書いています。この手の日本下げを日本人がやっているとすれば、とんだ自虐ボケと言うしかありません。
まず、言っておかなければならないのは中国企業と言えども日本法人の給料だという事です。つまり法的には日本の会社が日本人に支払う給料が高いという事なのです。それは、それだけ優秀な日本人技術者のニーズが高い事を意味します。決して中国人に支払う給料ではありません。
例えば日本の自動車メーカーが米などに進出し始めた頃の話ですが、現地メーカー並の給料では優秀な現地エンジニアが来てくれないのは自明です。現地の水準より高めにするのは当然ではないでしょうか。それを見たアメリカ人が日本は凄い、と思うでしょうか。否、アメリカ人は価値があるんだ、と思うに決まっています。
これが中国本土での大卒初任給なら驚愕ですが、そんな訳はありません。10万円がいいところではないでしょうか。因に中国のGDPが正確だと仮定して、昨年が日本円換算で1266兆円です。それを人口で割ると100万円を切ります。つまり一人当たりのGDP、すなわち付加価値を生む力が一年間で100万円もないという事です。
対する日本は落ちぶれたとは言えGDPが537兆円です。一人当たりにすれば約420万円になりますから中国の4倍強です。何十倍もあった頃に比べれば差は縮まりましたが、でもそろそろ限界でしょう。中国は無茶な通貨、金融政策からの元暴落を恐れて通貨防衛に入っています。外貨の流出が止まらないのです。
今年は年間800万人にも達すると言われる日本への観光旅行にも台湾、韓国に続き制限が入りました。これは余程の事だと思って間違いありません。例えば日本政府が我々に対し、外貨が減るから海外に行くな、と言うでしょうか。使い道のない溜まる一方の外貨を持て余している金満大国日本が言う訳はありませんね。
この流れはいずれ中国企業が海外に展開する研究開発機関にも及んできます。どういう事かと言いますと、外貨の持ち出しを制限されると現地社員に給料が支払えなくなるのです。従っていつ何時、突然引き揚げるとも言い出しかねません。そんなところに、目先の40万円欲しさに行く人が本当に優秀な人材かどうかは・・お分かりですね。
ともあれ、インバウンドで浮かれていた皆さん、特に観光収入の40%を占めるという中国人観光客で潤っていた観光業は大変です。爆買いどころか観光客そのものが激減します。だから言ったじゃないの。(笑)不安定な外需に依存してはいけないって。
(この光景もあまり見られなくなります。)
もう一つ言っておかなければならない事があります。米の中央銀行であるFRBは金融緩和策から出口戦略にシフトしたようですが、日本の中央銀行はなお異次元と言われる金融緩和を継続しています。どちらがいいとか悪いとかではありませんが、どう考えても米のやり方は唐突で乱暴です。余程金利を上げたいと見えます。今でもいいとは言えない景気を冷え込ませたいのでしょうか。
その点日本は気楽なもんです。(笑)金利が上がる要因や圧力は全くありません。正確に言えばデフレ脱却をしていませんから野放途に金融緩和が出来る環境にあります。その結果の円安です。そりゃそうです。円をバカスカ市場に供給しているのですから実力とは関係のない円安になります。
実質実効為替レートがそれを示しています。それでいけば実力的には80円前半が妥当ではないでしょうか。その数値で国民一人当たりGDP計算すれば、ある程度の人口を持つ先進国の中で一躍トップクラスに躍り出ます。つまり、日本の中央銀行は日本円の価値を自ら落としてまで、やらなければいけない事があると信じ込んでいる訳です。一応表向きはですが。。
という事は、中国は元の価値を力技で維持し、日本はむしろ円を無理矢理下げていると言えます。つまり両方が為替レートを神の見えざる手に委ねていたなら、もっと彼我の差はついているという事です。分かり易く言います。ファーウェイの給料にしても中国は分不相応な事をしていて、日本は不必要にへり下っているという事です。
さすがにそれでは色々なところに歪みが出て来ます。それに異を唱えて、日本もそろそろ出口戦略を考えるべきだなどとネガティブな意味合いで言う人がいますが、それはそれでどうでしょうか。緩和策による買いオペで政府の実質債務が減っていくのですから、むしろ歓迎すべきと言ってもいいくらいです。
(人口が3倍近い米国のマネタリーベースを超えてしまった日本)
問題は、それでもインフレにならない事です。日銀の新任審議委員である片岡氏が問題にしているのもそこです。異次元緩和でも2%程度のインフレターゲットが達成出来ないのなら、他の手を考えるべきだというのは正論と言うしかありません。
このケース(異次元緩和継続)でのインフレ要因になり得る貿易収支の黒字も思った程伸びていないようです。普通であれば円安になれば日本製品の割安感から黒字幅が広がるのですが、円建て貿易が増えた事と、今や300兆円近い売り上げがある海外生産によって、それが望めないのです。従って通貨のバランスが狂います。
つまり不当に安い円によって、海外からの日本買いが加速し、あるいは輸入する側から見れば優秀な部品や素材が安価で手に入る訳です。それを売れたからと言って喜んでいてはいけないのです。必ずブーメランになって戻って来ます。
あくまでも優秀な製品、部品、素材は高くなければいけないのです。ただ、それでは困る人達が世界に五万といるため日本円は不当に安く設定され、世界に便宜供与を強いられます。少なくともそういう圧力が日常的にある事は想像に難くありません。
つまり安倍政権と日銀は日本のためではなく世界のために存在しているのです。それを自覚しているかどうかは知りませんよ。いや、正確に言えば、立場的にそれしか出来ないと言うべきかも知れません。
片岡氏の一言で気がつく人が増えればいいのですが、まあ、今はそれどころではありませんね。(笑)
前々回の明るい自動車の未来の話の続きですが、先に書きたいことが出来て後回しになっています。忘れた訳ではないので、ご安心下さい。そこまでボケてはいません。(笑)その内満を持してエントリーします。
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