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2017年10月26日 (木)

これでいいのか、トヨタの新タクシーキャブ

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 最近、心底驚いた事があります。トヨタが発表した東京オリンピックに照準を合わせたというタクシーキャブですが、このデザインのつまらなさ凡庸さは特筆ものです。日本の街にあわせたと言いますが、本気でそう思っているのでしょうか。だとすれば日本の街も見くびられたものです。唖然としてものが言えません。

しかし、ここまで不細工にするのはある意味難しいと言えます。新米が普通にスケッチを描いても、もう少しましな絵が描けるでしょうに。レトロを意識したのかな? それにしてはランプなどが妙に新しいし、腑に落ちません。

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四代目プリウスなどを見ても最近のトヨタデザインが、少しやり過ぎではないかと思っていましたが、これはこれでまた違う意味でやり過ぎです。何をどうすればこうなるのか、説明して欲しいくらいです。これは各方面からブーイングの嵐が起こるのではないでしょうか。

私がタクシードライバーなら乗りたくありません。従来のキャブも、やる気の感じられない、決して優れたデザインだとは思っていませんでしたが、普通である分、まだましです。

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(従来のキャブはいかにもコスト優先という感じか。)

さて、かなり厳しく言いましたが、ではなぜ私がそこまで言うのか、素人の皆さん向けに、クルマのデザインについて話す必要があります。クルマと他の工業製品のデザインに対する考え方が大きく違うという訳ではありませんが、クルマは動き廻るし、安全性の確保という至上命題があるだけに少し趣を異にします。

まず、こういう目的がはっきりしたクルマの場合は、機能が前面に出る必要があります。ぱっと見てタクシーだ、と識別出来る必要があるのです。そういう意味では形だけでなく色も大事です。

米などで少しどぎつ目のイエローがタクシーカラーの代名詞になっていますが、それなりの理由があるのです。そういう点で言えば、今回のタクシーは形上的には比較的分かり易いが濃紺という色が中途半端という事になります。そこまでシックにする必要はどこにもありません。

Londontaxi_800

(ず〜とこのデザインという事に意味がある。ロンドンで乗った時に、あまりの広さに驚いた。荷物と一緒に乗るタイプ。)

真っ黒なロンドンタクシーを意識したというのなら大きな間違いです。あのクルマの場合は歴史があって、既に認知度が半端ではありません。思い切り背も高いしロンドンで見ても差別性が十分です。古くてしぶいロンドンの街に合わせるなら、丁度いい感じかもしれません。あれにイエローを塗ったなら犯罪的と言えるでしょう。(笑)

次にデザインの役割の中で大きいのは提案性です。タクシーに提案も何もないだろうと思われるかも知れませんが、そうではありません。従来の概念を超える新しい使われ方や時代に対応したサムシングがあった方がいいに決まっています。

乗り易い、広い、頑丈、荷物もたっぷり積め、快適な居住空間が確保されている、等々に従来にない機能が付加されれば価値が倍増します。そういう点で言えば、スライドドアやハイルーフ、大きな窓等の工夫があり、そこも一応合格と言えるでしょう。専用のキャブにしただけの事はあるという、最低限の提案性はあります。

しかしながら、折角のそれらの処理が生すぎるのです。要素を並べた、あるいはくっつけただけという感じが拭えません。そこに知的な処理がなされた形跡が認められないのです。コストのためだなんて言い訳をしてはいけません。それでは何のための工業デザイナーかという事になります。

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(NV200 バネットベースのニッサンのタクシーキャブ、デザインも今風だし、使い勝手のよさそうなタクシーに見える。)

実は提案性にはもう一つあります。もっと抽象的なところ、言わばイメージですが、見る人に新しい世界、使い方を連想させる事が出来れば大成功なのです。例えば凄くセクシーでカッコいいスポーツカーを見て、そこに美人とドライブするカッコいい自分をイメージする、これは妄想です。(笑)

しかし、その時に着る服をそのクルマに合わせて今風のお洒落なものにする?あるいは先進的な小道具を携帯するなどなど、ユーザーのライフスタイルにまで影響を及ぼす、言うなれば使い方の可能性に広がりを感じてもらえたならデザイナー冥利に尽きるというものです。

そういう意味では、やはり全く新しいデザイン提案をするからには最低限の先進性や未来感は必須という事になります。よくレトロや復刻版のデザインを見て面白いと評価する人もいますが、デザイナーから言わせると怠慢の極みです。

ニュービートルや新しいマスタング、カマロは処理を新しくしただけで何の提案性もありません。それにこのケースだと、次はどうするの?という問題があります。また違う何かをコピー、あるいは参考にするのでしょうか。

特にビートルの場合ですが、RRをFFにしてまでムリコヤリコに昔のデザインを乗せるという暴挙には何の正当性も提案性もないのです。この場合は正常進化にしか道がありません。アイデンティティを守りつつ、時代の要請に応える形での正常進化なら昔のデザインの踏襲、延長線は認められます。

翻って、何の脈絡もなくいきなり表れた、このキャブを見てお客は何を思うでしょうか。素敵だわ、一度乗ってみたい、と思うでしょうか。これで東京の街を見て回ったら楽しそう、と感じるでしょうか。そもそも、どちらかと言えば未来感や先進性とアジア的混沌が入り交じった東京の街に合っているとは思えません。

むしろ東京の悪い方である混沌、カオスに拍車をかけるデザインと言えます。そうではなくて、この混沌とした街並を少しでもましな方向に引っ張って行くような、何かそういう工夫が欲しいのです。デザイナーには志を高く持って頂きたいと言うしかありません。

日本的でありながらも使い勝手がよく、近未来を予感させるような爽やかで知的な・・言うのは簡単ですが(笑)そういうデザインは出来ないものでしょうか。残念というしかありません。語り始めると止めどなく長くなりますので、これくらいにしておきます。

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コメント


田中社長のご意見に一票!個人が乗るクルマと公共性が高いタクシーでは役割が違います。このようなタクシーが街を流すなんて!街の景観を考えてくださいm(__)m天下のトヨタさん!

投稿: go to | 2017年10月26日 (木) 10時01分

go to さん言うとおりです。さらに付け加えて言えばすごくやすっぽく見えます。中途半端なのでしょうか。プリウスも未来の車を象徴しているつもりなのでしょう。運転中に後ろから見ることが多いですがあのテールランプ、なんか変です。

投稿: 八丈島 | 2017年10月26日 (木) 18時47分

JPN TAXIってライセンス・プレィトに表示されていますが、思い上がっているのかなこの会社? こんな不細工なデザインにJPNなんていれてほしくないな!まず最低限お顔を直してね。

投稿: | 2017年10月27日 (金) 16時09分

天下のトヨタさんと言えども、VW・テスラその他競合他社の電気自動車群の洪水に対抗するべく戦場の様に忙しいであろうデザイン・設計・テスト分野の方々、、この車、乗客の利便性・使い勝手等の基本機能は充分な出来栄えなのですからフロント周りはもうちょっとカッコよくしたら良いのでしょうね。

投稿: AZ生 | 2017年10月28日 (土) 01時11分

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