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2018年1月17日 (水)

お金は銀行に預けるな、だって??

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---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

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 16日放送の「バラいろダンディ」(TOKYO MX)で、経済評論家の勝間和代氏が、銀行の将来を切って捨てた。(中略)

勝間氏は、メガバンクを含めた銀行は今後合併を繰り返し、その数を減少させていき、また「銀行員も恐らく7割とか半分になります」と推察。さらに預金については「最低限しか、銀行にはお金を預けちゃいけないんです。1000万円未満。ペイオフも含めて」と語っていた。

 ちょっと絶句です。経済評論家の言葉とも思えません。素人の主婦的発想と言った方がピッタリ来ます。この方昔からそうですが、経済評論家を標榜しながらも、マクロ経済が全く分かっていないようです。しかし、これに対する反論がないのも不気味です。まさか皆が同意している訳ではないでしょうね。(笑)

日本の個人金融資産は右肩上がりで現在1800兆円を突破しています。その内訳として現預金は900兆円強です。後は株や国債などの有価証券、保険年金、他の構成になります。お金を銀行に預けないという事は、この現預金の現金比率を増やせという意味でしょうか。

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(ちょっとデータが古いですが、現預金だけを比べると絶対額としても日本の方が多い。米経済は泡によって成り立っていると言える。)

それとも債券をもっと買えという意味かもしれません。しかし、どちらにしても大いなる矛盾を含んでいます。例えば現金比率を上げると言っても、今現在107兆円でしかない日銀券を500兆円に増やす事はあり得ないでしょう。

まずタンス預金が500兆円にもなったなら盗難や火災、紛失など莫大な損失リスクを国家として抱える事になります。振り込め詐欺だってやり易くなるというものです。住宅売買等の大きな買い物にも気を使います。

どう考えても日銀はここまでは応じないだろうし、銀行だって猛反対します。それは預金残高だけでなく当座預金残高が消える事を意味するからです。銀行にとっては、それこそ死活問題になります。

昨年末時点での日銀当座預金残高は370兆円程です。現金が107兆円なので、マネタリーベースは500兆円近くにもなります。因に日銀は銀行の要請に応じて当座預金を日銀券に替えます。

つまり500兆円の日銀券化は、銀行の手持ち資金(当座預金残高)がゼロという異常な事態を意味する訳です。それを嫌うなら手持ちの債券を投げ売りするしかなくなります。従ってあり得ない前提と言わざるを得ません。

では次に債券を買う、ですが、もちろん基本的には誰であろうが現預金を債券に替えて保有する事は可能です。例えば2000万円の預金残高の内1000万円を株券に替えて持てば、現金で保有した場合より大幅にリスクは減ります。

ところがよく考えると、これもおかしな事になるのです。もし株券の売買が個人投資家間で行われたなら、資金が移動するだけとなりトータルの銀行預金残高は減りません。これが個人対機関投資家なら、例えば株を買った個人の現預金は確かに減りますが、今度は企業の現預金残高が増える事になります。

しかしながら、銀行に預けるのが危険だから債券に替えようという時に、機関投資家がおめおめと預金残を増やすでしょうか。考え難いと言わざるを得ません。真っ先に株や国債を買い漁るでしょう。(笑)その過剰流動性によって本来は逆相関の筈の株高、債券高となり増々金利も下がる事になります。

バブルの再来と言わざるを得ません。つまり勝間氏は日本を破滅に導こうとしている、という事になります。工作員か!

ではどうすれば、そのリスクから回避出来るかですが、結論を言えば日本と日本政府を信じて、そのまま銀行に預けて置くのが一番です。その根拠は銀行が立ちいかなくて困るのは日本人全員なので、政府が当然何らかの手を打つからです。またそれが政府の役目です。

尤も、そうなる前に銀行も自助努力をします。先頃発表されたメガバンクによる大リストラ計画などを見ても危機感は十分に持っているのです。恐らく電子化、自動化、IT化などによってスリム化が進めば、銀行だけでなく日本全体としての労働力の配分もいい方向に向かうのではないでしょうか。サービス業等の労働集約型産業は人手が足りないのです。今後増々その傾向は強まります。

いずれにしても付加価値を産み出し難い、いわゆる無価値産業とさえ言われる金融業に人を大勢集める意味はありません。資金の流れさえ確保出来るならAIが管理する無人の組織に生まれ変わってもいいくらいです。その方が与信にしても合理的で的確な判断をするでしょう。

つまり、勝間氏が懸念しているのはミクロ的視野、例えば自分が預金している銀行が倒産するリスクであって、国家の実力や政治の力を無視した経済音痴のおばさん的妄言と言わざるを得ません。

こういう、顔は売れていても内容が伴わない人が煽るからおかしな事になるのですが、前述のようにそれも限定的です。政府が介入する前に、見えざる手によって最悪の事態は回避されるでしょう。

この方、以前デフレ不況対策として、政府が30兆円程国債を刷って日銀に引き受けさせればいいと言っていましたが、それが出来るのなら銀行は未来永劫安泰です。(笑)かつて自分が言った事との整合性が取れていない事に気付いていません。

 

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コメント

今回の金融の話は難解です。質問したいところが多くありますが、ちょっとそれは後回しにして暗号通貨に関する田中様の意見を聞かせてください。ビットコインの先週の急落は騒がれましたが、それでも1年前に比べて10倍近く値をあげています。海外送金の手数料がいらないことや送金の手軽さから銀行の仕事を奪い、また専用のウォレットを作ってそこに貯蓄できるなど、この低金利では銀行の手数料のほうが高くなってしまいます。このままでは銀行に貯蓄する人がいなくなってしまうのではないかと思います。大手金融機関も遅れじと暗号通貨を作るそうですが、それがかえって暗号通貨の普及を促進しそうです。

投稿: 八丈島 | 2018年1月20日 (土) 19時31分

八丈島さん、金融の話は家計の論理で固まった主婦だけでなく、経験が豊富なビジネスマンでも難しいです。特殊な世界なので常識的に考えると混乱します。月並みな表現ですが、頭の切り替えが必要です。

それにはまず概念を理解する事が肝要ですが、分かり易く解説している文献、サイトにはお目にかかった事がありません。この件、拙ブログでも粘り強く取り上げていくつもりなので、何でも質問してください。一緒に勉強しましょう。

さて暗号通貨の話ですが、結論から言えばナンセンスです。特に円を持つ国の国民にとっての通貨は円以外選択の余地はありません。投機目的なら話は違いますが、それは言い換えれば博打です。一部の人の、言わば娯楽の範囲で止めるが健全でしょう。

今世界は言うなれば円本位制で動いています。プラザ合意はそれを容認する取り決めでした。なぜなら金本位制がとれない今は、経済大国でアメポチ国の通貨、円が金の代わりをするしかないからです。基軸通貨ドルの価値を担保出来る唯一の通貨、それは円です。

そんな価値ある通貨が使えるのに、なんでわざわざ仮想通貨を使うのか意味が分かりません。海外旅行した時に、例えば手数料が安いからと言ってウォンや元を持ち歩くでしょうか。そんなリスクは誰も負わないでしょう。(笑)それと同じ事です。

それはポイントが付くからと言って同じ店に通ってポイントを溜める行為とも似ています。個人的にはうす〜いメリットがあるかも知れませんが、マクロで見ればデフレを助長し、自分の給料を減らしてしまうのですから愚かな話と言わざるを得ません。

もちろん、そういう本質的な事を理解した上で、使い方によってはポイント以上のメリットがある事も考えられますが、いずれにしても限定的というのが現実ではないでしょうか。それより昔のように、もっと円が回転するシステムに戻す事です。

それには米からの実質的独立が必須です。結局そこに行き着きますね。(笑)

投稿: 田中 徹 | 2018年1月21日 (日) 10時47分

田中様、暗号通貨のことよくわかりました。私には暗号通貨がまだ何をするかわからないという感じですが、金融全体にとっては影響が少ないということですね。

〈例えば2000万円の預金残高の内1000万円を株券に替えて持てば、現金で保有した場合より大幅にリスクは減ります。〉どうしてリスクがへるのですか。タンス預金よりましだということですか?

また事実上ドルを支えているのは円だということを、また別の機会に説明してください。

投稿: 八丈島 | 2018年1月23日 (火) 13時56分

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