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2018年1月 8日 (月)

日本の低成長を国家社会主義のせいにする経済学者

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  PB黒字化なんて大した問題ではない。それは財政赤字の一つの目安に過ぎず、それを黒字化したところで、日本の財政が危険な状況にある現実は変わらない。たとえば長期金利が2%上がると、GDPの1割が吹っ飛ぶ。このように財政が金融市場に対して脆弱な状態を財政危機と呼ぶのだ。(中略)

 三橋は「日銀が国債を引き受けてお札を印刷すればインフレが起こって名目成長率が上がる」というが、それを日銀がコントロールできるとは限らない。5年たっても2%のインフレ目標さえ達成できない日銀が、財政インフレをコントロールできるとは考えられない。

 要するに三橋の話は、政府が経済を統制しろ(そして統制できる)という国家社会主義である。それは安倍首相が岸信介から受け継いだ思想でもある。予算編成の大詰めの時期に首相が(予定をオープンにして)三橋と会食したのは「予算編成でPB黒字化目標は認めない」という意思表示だろうが、その国家社会主義が日本の生産性が上がらない最大の原因だということに彼は気づいていない。

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有名な経済評論家でトップブロガーの三橋貴明氏がDV容疑で逮捕されたようですが、彼の分かり易い解説は入門編としては大変貴重です。早い復帰を祈らざるを得ません。私も昔はお世話になりました。

だからと言う訳ではないのですが、事件にかこつけて三橋氏の経済論まで批判する人がいましたので少し反論してみたくなりました。上記記事を書いたのはテレビの露出も多い有名な経済学者なのですが、慰安婦問題や原発問題発言は傾聴に価するものの経済記事は??というのが多いです。

まず一番上の記述ですが、長期金利が2%上がるとGDPの1割が吹っ飛ぶというのは全く理解不能です。どんな計算をすればそうなると言うのでしょうか。10年もの国債の金利が0.05%前後と限りなく0に近い昨今、いきなり2%まで上がるというリスクも限りなくゼロに近い訳で、仮定するだけばからしいと言えます。

まあ、それを言っちゃあお終いなので続けますが、昨年の利払いは9兆円程でした。これは金利が1%を越していた時の国債が未だ残っているからであって、ゼロ金利の現在、利払いは段階的に減っていくのは明らかです。つまり利払いに関しては、固定金利が大半なので市場での金利変動の影響は受け難いのです。

従って例えあり得ない事が起きて金利が2%に急騰したとしても、政府が負担するのは新規に発行する国債からなので、その後1年間で最大6千億円(年間30兆円の発行に対し)の増加でしかなく、GDPの10%(50兆円)には程遠い訳です。

国債発行残高1000兆円(多めに見て)に対する6千億円は0.06%に過ぎません。尤も、一度に30兆円分も発行する事はないのでせいぜい2〜3千億円か、そうすると対GDP比でも0.06%以下です。10%にはなりようがありません。

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そもそもそんな状態になるまで日銀が放置する筈がないです。さっさと買いオペ額を増やせばすぐに沈静化します。毎年何十兆円も買い入れているのですから、なんて言う事はありません。もっと言えば何%になろうが、今は日銀及び政府系金融機関の保有が60%以上にも達している訳です。実質負担分はその分減ります。

その分の利息は一時的に払っても最終的には国庫に戻るからです。ね、バカバカしいでしょう。(笑)彼程の人がなぜ、素人にも分かるデタラメを言うのか謎です。本当にそう思っているとすれば・・・これ以上は言えません。

次に「日銀が国債を引き受けてお札を印刷すればインフレが起こって名目成長率が上がる」の箇所の批判ですが、この人は日銀を甘く見ています。ただ、この文章のままでは確かにインフレが起こる保証はありません。なぜならいくら日銀が国債を買っても金融機関による貸出しが増えるとは限らないからです。

金融機関は基本的に担保がないとお金を貸しません。従って地価が上がらない現在では返済分しか担保余力が出来ないのです。という事は貸出し残高は横ばいが精一杯です。ここに来られる方は既にご存知でしょうが、マネーストックが増えない限り消費を増やすのは困難です。

そのマネーストックを増やすためには政府か民間が借り入れを増やすしかないのですから、政府が財政健全化にこだわるあまり財政出動をためらい、金融機関の貸出し残高も増えない状況ではインフレになりようがありません。

でもご安心下さい。日銀には奥の手があるのです。80年代後半にやっていた窓口指導です。各金融機関に貸出しのノルマを課す事によってバブルを醸成していきました。崩壊したのはそれを急に90年頃やめたからです。甘い与信でバカスカ貸していたのが、いきなりストップし、さらに金利を上げたならどうなるかは明らかでしょう。

これを国家社会主義というなら、そうかもしれません。しかしながら、それが生産性向上を阻害すると断言するのはお門違いです。何の根拠もないではありませんか。だって今日本は先進国の中で最も生産年齢人口一人当たりの実質成長率が高い国なのですから。2000年からの10年間は1.5%で、直近では2%もあると言います。

日本の名目GDPが伸びないのは生産性が低いからではなく、貸出しが伸びないために中小企業など資金が必要とされるところに回らないからです。その証拠に給料は下がる事はあっても増えていないでしょう。

銀行の貸出しが増えてお金が行き渡り消費が増えれば当然追加の労働力が必要になります。その結果就職戦線は売り手市場になる訳です。そうなれば給料はいやでも上がり、それに連れてさらに消費も増えるのは自明です。

つまり、正しい統制経済を実施すれば、日本のように供給力がある先進国の場合、害にはならず、むしろ経済成長するのです。正月早々からデタラメを書くんじゃないよ、って言いたいです。(笑)

 

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コメント

三橋さんのDV騒動で彼が最低の男だということがはっきりしましたが、経済論は正しいです。三橋さんと他の経済学者の違いは、「デフレ時は需要が足りないので、まず日銀がお金を刷ってそれを政府が使え」といっていることです。
「政府がお金を使え」この部分がデフレ脱却のためには最も大事なわけですが、リフレ派は金を刷れとしか言わないし、それ以外の経済学者は国の借金で日本は経済破綻する、これしか言わない。三橋さんは最低の男ですが、いっていることは正しい。貴重な言論人です。

投稿: 名無し | 2018年1月31日 (水) 17時01分

名無しさんの投稿内容・・・正しいですよね

投稿: AZ生 | 2018年2月 1日 (木) 06時22分

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