EV化は魔法の杖ではない
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前回の続きのようになりますが、今日もEVの話です。と言うのも数日前にテレ東WBSでEVに関するいかがわしい話を聞き、看過出来ないと思ったからです。いかにも自動車の最先端分野で中国が先頭を走り、他を引き離しているかのような印象操作と、中国上げ日本下げ風の話の持って行き方に、私でさえ一瞬騙されそうになったのです。(笑)
何度も言いますが、中国製のEVはあくまでも国内専用で輸出は無理です。電力や充電設備等のインフラが脆弱な途上国向けにはハードルが高く、先進国では安全基準等の規制にひっかかります。さらに品質問題、商品魅力の問題があって国内以外では通用しない代物と言って差し支えないでしょう。
莫大な補助金と、公官庁やタクシー等への半ば強制的な販売で、確かに世界一数はこなしていますが、それでも80万台にも届きません。2500万台も売っている国の3%にも満たない訳ですから、これを見て何かを判断するのは早計と言うものです。
(BYD の EVタクシー、長い充電時間に休憩を取る?)
そもそも世界全体で1億台にもなろうとする自動車販売の1%程度が今のEVのシェアですから、そんなものを評価するだけアホらしいと言えます。経済の成り行き、あるいは政策次第でどう転ぶか全く分からないというのが実態です。
そんな不確かなものはともかく、現実的には、より実態に近く厳しい国際統一ルール(WLTP)になると言われる燃費排ガス規制下で、リッター20キロ程度が要求されるCAFE(各社ごとの平均燃費)問題をどうするかでメーカーは頭が痛い筈です。これをクリアして行くには既に商品として確立されているハイブリッドカーの数を増やすしかありません。
そのため満足なストロングハイブリッドが作れない欧州勢は48ボルトのマイルドハイブリッドとPHVに舵を切ったのは明白で、それらの関連部品に全く存在感のない裾野しか持たない欧州勢は、サプライチェーンの確立に血道を上げている最中と言えます。
驚いた事に、先日も韓国や中国からリチウムイオン電池を調達するとの報道がありました。大言壮語した割には内容が薄いと言わざるを得ません。人ごとながら心配になります。
つまり欧州が言うEV化というのは一種の目くらましに過ぎず、主流にはなり得ないのです。それが例え全固体二次電池が完成したとしても大して変わるとは思えません。2030年を過ぎても世界シェア10%程度が限界と見るのが妥当ではないでしょうか。実際日本の各メーカーはそういう見立てをしているようです。欧州の魔法に騙されてはいません。
それにしても中国のやり方は極端です。石炭による発電が主流の国においてEVを増やせば増やす程大気汚染は進み、CO2も垂れ流す事になります。経済優先、国民の健康、地球環境は二の次という訳です。さらに中国はお金を大量に刷るという魔法を覚えたがためにドツボに嵌りつつあります。
(読み難いのですが左が固定資本形成、中が家計消費、右が輸出、ブルーが中国で赤が日本、内需は公共投資に頼り、外需は輸出に頼って来た中国経済の構図がよく分かる。それに比べて家計消費が少なく、さらに右肩下がりなのは健全とは言えない。)
通常途上国は政府が大量にお金を刷れば制御不能のインフレになりかねないので自重します。逆に日本のような万年経常黒字で技術先進国は政府が自重し過ぎるとデフレになる訳です。
ご存知のように今は大量のお金を市場に供給する異次元緩和を行っていますが、折角国債を発行しても銀行から現金を吸い上げるだけに終わった失われた20年間はセオリー通りのデフレに苦しみました。
この話をし始めると長くなりますので今日はやめておきますが、今中国がやっている事を過去に日本がしていれば、と思うと残念でなりません。ではなぜドツボかと言いますと、中国経済を支えているのは海外資本、あるいは海外の技術であって中国自前のものではないからです。
分かり易く言います。日米欧が資本を投下した合弁企業の供給力、生産力は莫大です。従ってマネーを刷れば刷る程間違いなく経済発展します。それと人件費の安い輸出(先進国から見れば逆輸入)で、嘘か誠か年平均7〜8%もGDPを伸ばして来ました。これで無茶さえしなければ、あるいは地下経済がほどほどであれば未来は保証されていたのです。
ところが図に乗り過ぎた政府は世界覇権のためか、海外に資本を実力以上に投下し、技術導入にも湯水の如くお金を使って来たのです。さらに悪い事には独裁政権を嫌っての資本逃避があり、シャドーバンキングでも分かるように闇経済の方も活発と来ています。これでは経常収支の黒字がいくらあっても足りません。外貨不足に悩まされる事になります。
減ったとは言え未だに対外純資産をはるかに上回る外貨準備に、それが如実に表れているのです。つまり利払いにも汲々とする状態ではお金をバカスカ刷れる訳はないのです。
やり過ぎると通貨安を招き、さらに外貨流出が止まらなくなります。それを防ぐための通貨防衛、ドル売りも外貨不足に拍車をかける訳で、正に悪循環です。トランプさんからのバッシングもこの時期としては痛い。(笑)
この悪循環は間違いなく破綻への道なのですが、そう言われて久しいと思われる方は多いのではないでしょうか。まあそうは言っても、いずれは帳尻を合わせざるを得ないので、それがいつかというだけの問題のような気はします。
世界で唯一EV生産で黒字と言われるBYDなどの中国メーカーは、補助金などによる政府の赤字によって成り立っている訳で、決して持続可能ではないし、ましてEV化は魔法の杖にはなり得ないという事だけは言っておかなければなりません。
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コメント
田中様これまでもそうですが、この事実は多くの日本人が共有するべきでです。ネット番組にでも出て話して欲しいです。私もこのブログのことを知らなければ騙されていたでしょう。日経はもう何十年も前から中国絶賛でしたが、その記事に騙されて中国に進出して身ぐるみ剥がされた中小企業が数知れないのではないでしょうか。罪深いことです。
投稿: 八丈島 | 2018年3月14日 (水) 19時16分
田中さん、有難うございます。
20年ほど前からNHK 、朝日、日経などがこぞって中国進出を煽っていました。彼らは共産主義国シナのカントリーリスクを全く説明しませんでした。彼の国には近代的な法体系もなく、裁判制度もなく、共産党幹部の恣意的な運営で事が進むのです。これに対抗するのには日本国の確固たる軍事力の後ろ盾が必要です。米国資本のマックでさえ店舗の強制立ち退きを強要される国です。
今の中国政府が平気な顔していられるのは、将に共産主義国家だからです。輪転機を回転させ元を摺り続けています。資本主義国ではとてもかんがえられないことです。でもそれもいつまでも続くとはおもえません。その時に備えて日本国、企業などマジで準備しておく必要があります。
投稿: ナベ | 2018年3月15日 (木) 19時28分