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2018年5月30日 (水)

働けど働けどわが暮らし楽にならざり。

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---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

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【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権は23日、安全保障を理由に自動車や自動車部品に追加関税を課す輸入制限の検討に入ると発表した。商務省が鉄鋼に課した輸入制限と同様に、車の輸入増が安保上の脅威になっているか調べる。米メディアによると乗用車の関税を25%引き上げる案が浮上している。対米輸出が多い日本にとっては大きな打撃となり、世界的な貿易摩擦が激しくなる恐れがある。

これを真に受けて日本では大騒ぎしていますが、長年自動車の開発に携わる者として、今日はそれに異論を唱えたいと思います。そもそも関税はその国が自主的に決める事であって他国がとやかく言う問題ではありません。関税自主権は守られなければならないのです。

逆の立場で考えれば分かりますが、日本でアメ車が40%も走っている事を想像して下さい。日本国内にある工場でその内の半分を生産し、韓国や中国で生産したアメ車と、米国からの直接輸入で残り半分を受け入れていたなら、何で輸入やねん。全て日本国内で作れよ、と言いたくなっても無理はありません。(笑)

増して米は万年貿易赤字国です。これまで乗用車の関税を2.5%で我慢して来たのは、むしろ人が良すぎるくらいではないでしょうか。日本などはこれまでコメに778%もの関税をかけて来ました。最近国際相場の実情に合わせて280%に変更したようですが、それでもべらぼうと言えます。それに比べれば2.5%なんてないに等しい。。

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(対米輸出で言えば台数が増えていないのに売り上げが上がっているのは高付加価値車へのシフトと円安によるものか)

ところでマスコミは肝心な事に気がついていないようですが、日本から米に輸出する自動車の関税は実は2.5%などではありません。平均するともっと高いのです。と言いますのはSUVはトラックのカテゴリーに入り、トラックは昔から25%の関税なのです。

さて、ここで米市場をよく見てみたいと思いますが、売れているのはデカいSUV始めとするトラック系乗用車です。いや、その言い方は語弊があります。米はトラックを乗用として使っているケースが日本などよりはるかに多く、最近ではトラック系乗用目的車が販売の60%を超えているのです。

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(ガソリン価格下落と共に年々トラック系乗用車比率が上がっている米市場)

フォードがセダンから撤退したのはそういう事情があるからで、売れ行きが年々落ちているセダンに見切りをつけただけなのです。日本からの輸出もセダン系は価格の変動による影響を受け難い高級車に絞られ台数も年々減っています。反対に中級のSUVが伸びていて、それらにはしっかり25%の関税がかかっているのですから、何を今さら25%で騒ぐのかと言いたい。(笑)

それより何より、為替相場を見ろと言いたいです。今は1ドル110円前後をうろうろしていますが、第二次安倍政権になる前は80円台だったのです。つまり当時より35%も車を安く売れる、逆に言えば35%も利益を出す事が可能なのですから、25%くらいいいじゃないかと言いたくもなります。実際、実質実効為替レートで言えば82円あたりが妥当ですから、今は不当に安いと言われても仕方がないのです。

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(対ドル為替の推移/オレンジ色、近年、実質実効レート/青、との乖離が激しい)

しかし思うのですが、日本はずっとこの問題を解決していません。対米貿易黒字はコンスタントに6〜7兆円もあり。自動車はいつもその主役です。矢面に立たされても仕方がないのではないでしょうか。確かに現地では370万台も生産していて米の雇用に多大に貢献している事は事実です。

それでも170万台も輸出していて、それだけで5兆円以上も貿易収支の黒字を上積みしていては言い訳出来ません。関税が何%に上がろうが謹んで受けるべきなのです。それがいやなら内需拡大にシフトするだけです。

日本は万年貿易黒字国で経常収支の黒字を膨らませて来ました。その結果は少し減ったとは言え328兆円もの対外純資産を持ちます。しかしながらこれは決して自慢出来たものではないのです。なぜなら為替が正常に機能していたなら黒字国へのペナルティである通貨高がそれらを相殺して黒字にはならない筈だからです。

ではなぜ黒字なのかというと為替介入と国内デフレの結果と言えます。為替介入しきれないところは自らの給料を減らしてまで円高に耐えて来たのですからバカげた話です。「働けど働けど我が暮らし楽にならざり、ぢっと手を見る」を地でやっています。(笑)

プラザ合意を受け入れた時点で外需依存から内需拡大に舵を切っていたなら、こういう事にはなりませんでした。天然資源の購入以外には外貨を特に必要としない先進国が外貨を無駄に溜めたために国民の暮らしは貧困化したのです。

もちろんそれが貧困化の理由の全てではありませんが、国内資源を持ち出してまで米にものを貢いだ分、貧しくなったのは事実です。そろそろこの愚策から卒業しないと日本人は、ずっと手を見つめ続ける事になります。

 

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コメント

日本は万年貿易黒字国で経常収支の黒字を膨らませて来ました。
その結果は少し減ったとは言え328兆円もの対外純資産を
持ちます。しかしながらこれは決して自慢出来たものでは
ないのです。

強く同意します。

2年ぶりの投稿になりますが、言ってる事は、
2年前とほぼ同じです(残念ながら)。

3月の国際収支状況では、
経常収支 3兆1223億円の黒字(11年ぶりの3兆超え)。

2018年1~3月期GDP速報値は、
2015年10~12月期以来9四半期ぶりのマイナス成長。

外需は強く、内需は貧弱という馬鹿馬鹿しいものです。

安倍首相言うところの、「打って出る」「世界で勝つ」
「内向きの発想は許さない」の実態・結果がこれです。

加えて、外国人労働者、在留最長10年に延長、家族の帯同も
条件によっては認める。だそうで、完全な移民政策です。

世界各国の右派・保守派が、外国人の受け入れに厳しく
制限を設ける方向に動いている中、安倍首相だけは、
「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」
などと能天気なことを言っている訳ですから、どうしよう
もありません。

これでは、賃金上昇圧力が下がるのは必至で、
安倍首相による壊国路線をやめない限り、
日本人の生活が豊かになる可能性は、ほぼゼロです。

「働けど働けど我が暮らし楽にならざり」は
まさにその通りで、供給過剰・需要不足による貧困化など、
世界中で日本だけです。

投稿: インテグラル | 2018年5月31日 (木) 22時29分

インテグラルさんのコメント、大当たり。エンジェルスのピッチャー大谷が私に打たせて下さい…みたいな感じで代打でクリーンヒットを放った感じのタイムリーなコメント。
 安倍首相言うところの、「打って出る」「世界で勝つ」「内向きの発想は許さない」の実態・結果がこれです・・・内需拡大が先決問題なのですよね、現状の国民の財布状態を見たら消費増税なんてしたら反乱が発生しちゃうかも。日本も米国もフツーのサラリーマンの年収が100万円位、下がって来ている様です。政治・経済・軍事の3つが揃わないと独立国にはなれません。
 移民推進政策には大反対致しましょう。スパイ工作員の巣窟がもっともっと増加致します。野党のほぼ全てとG民党の半分はインチキ日本人。
一番困るのは安部さんレベルよりマシな議員が全く見当たらない事でしょう。

投稿: AZ生 | 2018年6月 1日 (金) 02時59分

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