平然と嘘がつける電波芸者
---日米 FTA/消費増税 /カジノ解禁に反対します ---
ブログランキングに参加しています。
昨日のWBSに落合陽一というユニークな青年?が出ていました。その態度は不遜で、どうひいき目に見ても突っ張った偏屈者(失礼)なのですが、言う事はまともです。特に人口減少と高齢化は日本のテクノロジーを進化させるチャンスだというフレーズはテレビでは新鮮でした。
さらに高齢者、特にホワイトカラーは活用すべきというのも的を射てるというか、実に正論です。日本は高齢者の使い方が下手です。退職後の高齢者を安く使おうという時点で論外なのですが、長引くデフレが経営者のマインドまで貧しくしているようです。
ところがこの青年、経済に関しては疎いようで、政治家になったら何をしたいかという視聴者からの質問に対しては煮え切りません。社会保障問題に手をつけたいと言いながら、背に腹は替えられないと言い出す始末です。もちろん背に腹は替えられない、というのは財政問題を指すものと思われます。
このように日本には優れた考えをもつ若者も少なくないと思われますが、マクロ経済までは理解が及びません。実はそこが肝なのです。日本中に渦巻いている緊縮財政論が全ての元凶になっています。何をやるにも資金がなければどうにもなりませんから、そこで話は終わってしまうのです。もったいない話ではないでしょうか。
その財政の問題に関して、また池上彰がやらかしてくれたようです。私は観ていなかったのですが、カミさんによると、あるテレビ番組で「国の借金は国民の預金でチャラに出来る」というような事を言ったそうです。
(某番組では政権批判のために子供を使ってやらせをさせたのではないかという疑惑が持ち上がっている。どうもこのところ評判が芳しくない池上氏)
この方は一見まともで話も上手く、インテリ然としているので騙されますが、テレビ局によって、あるいは時と共に言う事がコロコロ変わります。全く信用ならないのです。今回の発言は正に暴論です。日本国民としては看過する訳にはいきません。
第一そんな事が出来る訳がないのです。それは技術的にという事でも、国民感情に配慮して、などというような事でもなく、物理的に不可能なのです。それを今日は説明します。小難しい専門的な話ではなく、大人の常識論として読んでいただけると幸いです。
言うまでもなくお金は一般国民には作れません。それが出来るのは政府だけです。あるいはその政府から権限を委譲された政府系金融機関、お馴染みの日銀です。その日銀に当座預金口座を持つ金融機関も、日銀券は刷れませんが、お金を創出する事が出来ます。
いわゆる信用創造というやつですが、国民にお金を貸し出す事によってお金を増やす事が可能です。その限度は、その金融機関が日銀に持っている当座預金残高の70~1000倍近くにもなるのです。預金準備率がそれを決定します。それはどの国でも基本的には同じです。
日本の預金準備率は極端に低く0.1~1.3%(預金の種類や額によって差がある)ですが、例えば中国などは20%を越します。それは金融引き締めをしているという事になるのです。そういう点で言えば日本は全く引き締めていません。ただ、別の形で引き締めているのですが、それを言い出すと長くなりますので今日は割愛します。
つまり銀行は日銀当座預金残高を根拠にお金を貸すのです。技術的にはその金融機関が持っている資金以上のものが貸し出せる仕組みです。それは返済によって消えて行き、返済が終了した暁には資産も負債もゼロになります。
という事は政府や日銀が保有国債を売らない限りにおいて、消えないのは当座預金残高だけという事になり、それと日銀券発行残高がその国が持っている全てのお金という事になるのです。100円玉等の政府が発行する硬貨は額が小さいので省略します。
今日本には当座預金残高が400兆円程、日銀券発行残高が100兆円程あります。すなわち500兆円が持っている正味のお金という訳です。これは決して多ければいい、少なければ悪いというものではありません。その国の経済に適した量があればいいのであって、多ければいいのはGDPだけです。これだけが豊かさを示すからです。
さて、そこで件の池上氏の話に戻ります。日本政府が1000兆円以上ある借金を返済するためには国民の金融資産を召し上げればいい、という事ですが、国民の総預金残高であるマネーストックのM3 は1300兆円程あるので一件可能そうに見えます。
(ここで言っている事は、事実を知りながら国民を煽動している(確信犯)とすれば反政府活動と解釈されても仕方がない)
しかし一斉にそれをやると銀行が対応出来ないのです。日本の金融機関全体で400兆円プラス日銀券100兆円、マイナス国民保有日銀券、しか持っていないのですから500兆円以上足りない事になり、出来る訳はありませんね。
難しいかも知れないので、もっと噛み砕いて説明します。例えば国民の誰かが100万円を政府に払うとしましょう。その場合その人の口座から100万円が減って、同時にその銀行の当座預金から100万円が減ります。
銀行の負債である銀行預金残高と資産である当座預金残高が同額減って釣り合うという訳です。で、その100万円は日銀内の政府の当座預金口座に移動する事になります。このやり方だと日本全体で400兆円払ったところで銀行の当座預金残高がゼロになりますから、それ以上は払えません。
しかもその場合は銀行から現金が消えますから、銀行そのものが取引不能になるのです。500兆円も持っている有価証券を売ればいいじゃないかと言われるかも知れませんが、そもそも、当座預金残高がゼロでは、どの金融機関も取引が出来ないのです。
例外として、唯一日銀だけが買う事が出来ますが、そんな事をしてまで限りなく現金を減らして行く意味があるとは思えません。日本全体がフリーズします。
池上さんの言っている事がいかに荒唐無稽かという事が分かりますね。いや池上氏は、そもそも金融の仕組みそのものが分かっていません。貸借対照表を見た事がないのでしょうか。資産の反対側には必ず負債があり、プラスマイナスでゼロになります。
という事は、政府がプラスになれば国民の側はマイナスです。それで国民が納得しますか?する訳がありませんね。(笑)また、そんな国はありません。(一部の独裁国等を除く)
だから今の、政府が大量に負債を増やして国民の側が大量に資産を持つという構図こそが正常で、何の問題もないのです。それにしても1000兆円は異常じゃないか、と言われるかも知れませんが、実は政府だって負債の反対側に資産を持ちます。
(日銀の貸借対照表/2018年3月期)
それは600兆円程あり、プラマイすれば400兆円程の赤字という事になるらしいのですが、その額以上の国債を日銀が保有(今は450兆円程)している事を忘れてはいけません。
日銀は政府の一機関ですから、政府が日銀に返済するのは妙な話です。民間企業なら連結決算でゼロにしてしまうでしょう。その程度のものです。つまり国の借金と言われているものの実態は、実は決算上は何も問題がないのです。増して将来世代の借金である訳がありません。負債の側だけを見て騒ぐなら、あの大トヨタだって問題になります。(笑)
しかも日本政府の場合は、借りている(国債発行)のは全て円ですから、例え決算書が大赤字だとしても政府は自らお金を刷って返済する事(法改正が必要)が出来るのです。だからIMFは日本の財政破綻リスクが世界で一番小さいと言っているのです。
これが海外からの借金なら話は違います。ギリシャや97年の韓国が返済に窮してデフォルト(破綻)しましたが、払える外貨がなければそういう事になりかねません。だから外貨(対外純資産)を潤沢に持つ日本に、中国でさえ通貨スワップをしてくれと泣きついて来る訳です。
ところで世界で一番借金(純債務)が多いのはアメリカですが、それなのにデフォルトもせず、経済が好調とは?どういう事なのでしょうか。その件はまた次回にでもやります。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 円安で国が滅ぶと騒ぐ愚かな人達(後編)(2022.12.12)
- 円安で国が滅ぶと騒ぐ愚かな人達(前編)(2022.12.05)
- いまだによく理解されていないお金の話(2022.06.27)
- これだけ痛めつけられても何も変わらない基本的経済マインド(2022.06.15)
- 近況報告とEV その他(2022.05.19)
コメント
日本の借金、正確には政府の借金がなんの問題もないというこを納得してもらうのには苦労します。まずこれは政府の借金であって日本国の借金ではないということ、日本国全体でみれば世界一の黒字国だということから始めます。しかも円建てだから政府がお札を刷れば返せるのだと。そのため日本の国債の金利は世界最低水準ですと。バランスシートの話もしますが円を刷ればいいというのがの最も説明しやすいです。実際は日銀が国債を買い通貨を供給するということですが。先日も同窓会で久しぶり会った旧友に説明しましたが、わかったのやらわかっていないのやら。今日の田中様の解説は難しくて私にもわかったのやらわかっていないのやら。
投稿: 八丈島 | 2018年10月10日 (水) 18時31分
それにしても、この池上彰というやつ、なんでもわかっているのにTVに迎合しているだけだと思っていましたが、何にもわかっていない単なるメディアの操り人形のバカでしたね。
投稿: 八丈島 | 2018年10月10日 (水) 18時55分
田中徹さん、八丈島さんに座布団5枚づつ差し上げま~す‼
胸がすーつと致しました。池上氏とどっこいどっこいなのが、にちぎんとかざいむしょうあたりにウヨウヨ居るのかもしれないです。。。
投稿: AZ生 | 2018年10月10日 (水) 19時35分
池上氏がテレビで言う事は信用ならない事と負債と資産は釣り合っている(政府でも会社でも大抵そういう運用をすることが当たり前のようだ)は、同意です。
しかし、かなりかみ砕いた説明をしてくれているように思いますが、主旨についてはちんぷんかんぷんで、同意どころか理解が追い付いていません・・・。
今回のものをじっくり読み、理解に努めたいと思います。アメリカの借金があっても破綻していないと言う事の説明は日本と似ているかもしれないと思い、次回の内容が楽しみです。
投稿: nao | 2018年10月13日 (土) 23時04分