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2018年11月20日 (火)

絵に描いた餅か?

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=ベトナム初の自動車会社の新モデル 日本車と遜色ない出来か=

(前略)

 ビンファーストには母体がありました。それがベトナムの大手不動産企業である「ビングループ」です。近年ではリゾート施設やショッピングモール、病院や学校経営まで行うなど、事業の多角化を図っています。そして、今度は自動車です。

 しかし、彼らの進める自動車ビジネスは本気も本気。「プロトタイプを出品して、様子を見る」とか「話題となって、何か続きができるといいな」とか、そういうレベルではありません。

 すでに2017年からハノイ郊外のハイフォン経済特区に15億ドルの費用をかけて335ヘクタールの工場を建設しているというのです。起工式には、ベトナムの首相も参加。相当に期待されているようです。

CEOに元GMのジェームス・デルーカ氏を起用。プラットフォームとエンジンは、古いBMWのものを使います。BMWだけでなく、マグナ社、ボッシュ社、シーメンス社など欧州の有力企業の協力も得ることに成功しました。

 また、新しいクルマのデザインは、イタリアのデザインハウス「ピニンファリーナ社(Pininfarina)」と共同で設計しました。そんなベトナム&欧米の協力の元に生まれたのが、今回のパリで発表された「LUX A2.0」(セダン)と「SA2.0」(SUV)の2台の新型車です。

 パワートレインは、2リッターの4気筒ガソリン・ターボ・エンジンとZF製8速AT。セダンは後輪駆動、SUVは後輪駆動と4WD。最高出力はセダンが130kW(175馬力)/170kW(231馬力)、SUVが231馬力だそうです。

そんなパリのモーターショーでビンファーストは「ニュースター賞」を獲得。さらに本国では販売店を募集中で、2019年には販売を開始する予定とか。さらに、乗用車だけでなく、電動バスなどの電動車両の開発も行っていると報じられています。

(別記事)
ベトナム政府は2018年1月から、主要な自動車部品の関税をゼロにする。東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体の完全実施で域内からの輸入車の関税が撤廃されることに合わせ、国内の自動車組み立て産業を保護する。ベトナムの新車販売は16年に過去最高の30万台となった。

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 日曜夜にBSカーグラテレビでパリサロン(モーターショー)特集を観ていると、ベトナムから二台の乗用車の出展があったとレポーターが物珍しそうに伝えていました。日本車と遜色ない出来映えだと他のメディアも伝えています。カルチャーショックでも受けたのでしょうか。(笑)

いえいえ、何をおっしゃるウサギさん。二台のショーカーだけを見て何が分かると言うのでしょうか、「日本車と遜色ない?」気は確かですか?と言いたくなります。そもそも一人当たり名目GDPが2500ドル(28万円) 日本の20分の一程度の国でEセグメントの車を開発して販売する??

う〜〜ん、日本車でもそのクラスは300万円以上はします。そんな車をベトナム国内で作って売るなんて事を本気で考えているのだとすれば、その経営者は頭がおかしいとしか言いようがありません。

自動車生産では先輩格のインドだって、タタが20万円台の国民車ナノを10年程前に投入しましたが、大赤字になり結局上手くいきませんでした。

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(安いのはいいが、装備が充実していないなど、ユーザーからの不満が多かったタタ・ナノ)

車ビジネス(開発、販売、その後のサービス)は本当に一大事業なんです。GDPがベトナムの比ではない台湾やタイだって自国オリジナルは作れていません。中国のように国ぐるみで資金力にものを言わせてもあの程度です。謎だらけで突っ込みどころ満載の上記記事、今日はこの件を少し分析をしてみたいと思います。

ともあれ、この手の無責任記事は結構あって、10年程前にも中国某メーカー生産の乗用車をアメリカの某企業が輸入販売するという話をセンセーショナルに伝えるニュースがありましたが、いつの間にか立ち消えになっています。

その中国メーカーはかなり大手で中国内の実績もありますが、先進国へ輸出するなんて言うのは10年早いというか、あれから10年以上経っても実現する気配すらないのですから、30年くらい早かったのかもしれません。(笑)もっとか?

先進国以外で曲がりなりにも先進国へ輸出が出来ているのは韓国しかありません。なぜ韓国にそれが可能だったのかと言えば日本が傍にあって、最大限の協力を惜しまなかったからです。三菱自動車などがグループぐるみで手取り足取り教えた過去があり、その結果としての現在があります。

しかし、それも最近になって電動化等の技術的立ち後れから失速が目立つようになって来ました。おまけに最近の度を過ぎた国を挙げての反日ですから、見通しは暗いと言わざるを得ません。つまり半導体などと同じく重要部品を日本に頼っている立場で、何を血迷ったかという事なのですが、本人達は気がついていないようです。

翻ってベトナムはどうでしょうか。ボディはイタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリナのデザインと言いますから、確かにそういうところに依頼すればあるレベルのボディ設計は出来ます。スタイリングもお洒落で悪くないでしょう。

元GM経験者をトップに据え、プラットフォームとエンジンはBMWから供給されれば格好はつきます。部品の調達も欧州メーカーからの協力で問題ないと思われます。

しかしながらこのクラス(E セグメント)では輸出は無理です。途上国では高過ぎるし、例え数々の難問をクリアして先進国に輸出が出来たとしても名もないブランド、先進国では誰も買いません。ではベトナム国内で売れるかと言うと、これも無理があります。こんな高級車、公官庁を除いて誰が買えると言うのでしょうか。

そこでふと気がついたのですが、ベトナムに世界で一番投資をしている日本の姿がどこにもないではありませんか。これは全く腑に落ちません。今後必要とされる電動化や自動化技術の殆ど全てで先頭を走っている日本の姿が見えないというのは不可解です。

だからと言う訳ではありませんが、この話も近い将来立ち消えになるでしょう。いや絶対になります。(笑)その理由は主に金銭面からですが、テスラを見ても分かるように赤字続きでは会社は保ちません。

大赤字のテスラを何とか保たせているのは政府からの補助金と錯覚した一部の新しいもの好きのファン、さらにトップ、イーロン・マスク氏の詐欺師的錬金術のお陰で、普通ならとっくに潰れています。莫大な市場を持つ米国でさえ新参会社は大変なのです。

ベトナムの場合も今回の新型車開発にテスラ同様莫大な費用がかかる事は言うまでもありません。協力してくれる相手が皆世界の一流企業ですから技術にせよ部品にせよ安く売ってくれるなんて事はあり得ないのです。むしろ足下を見ます。

さらに彼ら欧州企業は技術移転など全く眼中にないでしょう。そんなお人好しな事をすれば今後継続するかも知れないお得意さんを失うのですから、する筈がありません。

その辺りは全く日本人とは違うのです。日本の場合は企業としてその気はなくても、派遣されたエンジニアが一生懸命地元のエンジニアを教育したり情報提供したりします。ゴルフと同じで、教え魔が多いのです。(笑)損得関係なくそれをやりますから日本が協力している国は皆繁栄しているではありませんか。

韓国、台湾、中国等、近いという事もありますが、日本企業が入り込んだ国は払った金額以上の恩恵を受けるのです。倍返し?それ以上でしょう。遠くではタイ、これは親日国だし料理や国民性が日本人好みなので得をしています。

反対に欧米企業が入ると国であれ企業であれ、まず草狩り場になります。中国よりはましかもしれませんが、元々植民地主義の国々です。時代が変わった今、露骨な事は出来ないとは言えメンタリティは昔と大して変っていないのです。

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(スズキジムニー・シエラ 原点回帰で大成功した例。一目で車の性格が分かる。やはりシンプルで骨太コンセプトが一番。欲しくなる一台だが、買い物等の街乗りでも威力を発揮するだろう。疫病神のVWと分かれてから元気がいいスズキ車。こうでなくちゃ。)

日本の例で言えば、VWとの別れ話に手こずったスズキ、ダイムラーに現在進行形で痛めつけられている三菱ふそう、上から目線で対等な立場に立たせてもらえません。ニッサンもそうです。どんどん利益や技術が海外へ移転しています。(この件、ゴーン氏の逮捕によって歯止めがかかるかも知れません。ニッサンにとっては千載一遇のチャンスが巡って来たと言えます。今後を注視しましょう。)

そういう強欲な人達を相手にして自分がのし上がるには相当な資金力と精神的しぶとさが必要です。さらに将来展望がないと話にならないのですが、一人当たりGDPが2500ドル(28万円)ならナノクラスでも国民車として難しいかもしれません。

日本は一人当たりGDPが3000ドル(今の為替レートの3分の1の円安時代なので100万円くらいか)を超える頃から車が爆発的に普及し始めました。つまり年収の半分くらいが普及の分岐点と言えるのかも知れないのです。

そう考えた時に、ベトナムは時期尚早と言えます。しかも、国民車を作る条件としては、普及し始めた頃の日本の様に部品のサプライチェーンを国内に持つ必要があります。部品の大半を海外に依存して低価格は実現しません。

つまり裾野(生産要素)を充実させなければならないのですが、その資金や人的リソースを考えると気が遠くなります。途上国が日本の協力もなしに一朝一夕に実現出来る話ではないのです。

そんな事より現実問題として鉄道やバスの交通インフラを充実させるのが先決ではないでしょうか。それによって生産性を上げ内需を拡大し経済力をつけてからでも遅くはありません。いずれにしても日本なしで実現出来る話ではないのですが、そこに気付かない限りベトナムに明日はないでしょう。(笑)

絵に描いた餅は食えないのですから、叶わぬ夢を追うのはやめるべきです。まあ今回の件、一言で言うと金持ちの道楽ですかね。ビジネスモデルとしてはあり得ないと言っておきます。もっと地に足をつけなきゃ。

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