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2019年1月20日 (日)

今さら聞けないマネーの話(前編)

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---移民政策/消費税増税 /カジノ解禁に断固反対! ---

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 先日某テレビ局の朝のドラマで、ある信用金庫が取り付け騒ぎに巻き込まれるシーンをやっていました。一人の預金者が全額引き出したいと言って来たのです。それは瞬く間に他の預金者に伝播し大騒ぎになります。人の心理は恐ろしいです。疑心暗鬼になると、いても立ってもいられなくなるのです。

現在の日本ではペイオフ制度があるので、そこまでにはなりませんが、実際に73年には豊川信用金庫が取り付け騒ぎに遭い破綻寸前まで行きました。その頃の日本は不況でもなんでもなかったのです。一人の女子高生が友人に話した何気ない「あそこは危ない」という一言が引き金になったと言います。

あそこにはお金があるので強盗に狙われるかも知れないと思った、と本人は言いますが(笑)そこからの伝言ゲームが疑心暗鬼を生み笑い話では済まない結果をもたらしたのです。希なケースだと言って無視出来る問題とも思えません。

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  (数年前にイタリアで起きた取り付け騒ぎ)

それにしてもこのドラマを放送した局、何か銀行に恨みでもあるのでしょうか。凄い悪者に描いています。バブル崩壊、リーマンショックと大不況二つに見舞われ、散々銀行にお世話になった私の経験から言っても全く考え難いのですが、何か意図があっての事なら大問題です。

ただ人にもよりますが中小企業と見ると平気で嘘をつく人がいたり、居丈高な人がいる事は確かです。私も担当者の不誠実さにムカついた事は多々あります。(笑)しかしながら銀行としては決して無茶な事は言いませんし、むしろ協力的でした。

因に融資を受けた銀行は4行です。それぞれ意外な程個性がありますが、融資の姿勢は積極的で少しでも多く貸そうという熱意が見られました。経営が厳しい時にはリスケの要求にも快く応じてくれたのです。銀行の名誉のために言っておきます。

ともあれ、放送法にも抵触しかねない海外との黒い結びつきや日常的な反日偏向報道と、何かと悪い噂ばかり立つこの放送局ですが、政府が改革に消極的なので我々には受信料を払わないという抵抗しか出来ません。この件言い出すとキリがないのでやめます。

ところで現実問題として、現時点に置き換えても預金者は自分が預金している額を全て引き出す事(現金化)は可能だと考えていると思われます。そりゃあ預けたのですから、そのお金は銀行にある筈です。例え預けた銀行になくても日本全体で見ればあると考えるのが普通です。

ところが先日友人と話している時に、そのお金はどこかに貸し出されているか、債券などを買っているから銀行にある筈がないじゃない、と言うのです。つまり当座預金残高を除く、銀行の手持ち資金は全て投資に回る筈だと・・恐らくですが、これが一般的な知的層の認識ではないでしょうか。

私は一瞬反論しようかと思ったのですが、これは簡単には説明出来ません。従ってやめておきました。(笑)一言で言えば、この考えは家計の論理の延長です。始めにお金ありきなのです。

世の中にお金が沢山あって、それが何かの巡り合わせで自分にも廻って来る、必要なだけ使い、後は銀行に預けておけば安心、そういう人が沢山いるから銀行は成り立つ、銀行は預かったお金は誰かに貸して商売をしている、こういう理屈だと思われます。

しかしこれではマネーストック(預金残高+現金)は増えません。国民の貯蓄が増えれば増えるじゃないかと言われるかも知れませんが、通常預金残高が増えれば日銀券などの紙幣が減る、預金残高が減れば紙幣は増えるという関係なのです。

このブログで何度も書いていますが、現状マネーストックを増やすには、国内取引だけで言うと、誰かが銀行から借り入れをするしかありません。借り入れと返済の差額がマネーストック増減の数値となり借り入れの方が多ければマネーストックが増えるのです。

経常収支の黒字や海外からの直接投資も増加要因ですが、ややこしくなるので今回それは無視します。ではその借し出しのためのお金はどうやって調達するのでしょうか?大半の人が国民が預けたお金からと言うでしょう。大間違いとは言いませんが、先ほどのマネーストックが増えないという理屈で言うと正しくありません。

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(18年2月末の銀行のバランスシート、海外分は除く、現金預け金は当座預金残高を指す。預金残高を大きく上下回っている。融資のための資金はどこに?)

調達先があるとして、信用金庫などは銀行から調達する場合があるようですが、銀行の調達先は自分自身なのです。融資のための資金は自分で創造します。この意味はどこからも調達する必要はないという事です。すなわち無から有を生じさせるのです。

国民が貯金したお金はどうなっているのかと言われるかも知れませんが、正確に言うと、国民は付加価値は作っても、お金を創り出している訳ではないので、そこから調達する事は出来ません。

国民による貯金は右から左へ移動するだけです。つまりどこかの銀行が貸し出したお金が他の銀行へ移動するだけなのです。それは貸し出した銀行の当座預金残高が減って、貯金した銀行の当座預金残高が増える事を意味します。

先ほども言ったように銀行全体で見れば増えも減りもしないのです。実は国民が持っているお金(預金)は幻に過ぎません。件の番組でもやっていた貸し剥がしではありませんが、銀行が返済を迫ればお金は消えて行くのです。

よくお金は消えない、誰かのところに廻って行くだけだと言いますが、大きな間違いです。返済額が借り入れ額を上回れば消えていくのみです。それでも 返済したお金は誰かに貸すだろうと言われるかも知れませんが返済したお金は存在しません。ひたすら消えるのです。(笑)この点は分かり難いかも知れません。

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     (日銀の最新のバランスシート)

銀行のバランスシートを見れば分かりますが借用証(貸出し残)は資産の部にあり、預金(国民の借入残)は負債の部にあります。返済されれば預金の残高が減り、同額貸出し残高(資産)も減るのです。それでバランスが取れます。何も残りません。ね、消えたでしょう。(笑)

借金は悪だからなるべく早く返済をして借入残を減らす事が自分のため世のためと思っている方は未だ多いと思われますが、間違いです。個人にとって都合がいいだけで日本全体でそういうことが起きると経済は破綻します。

つまり現行システム上、借金は善なのです。返済も出来る限り遅くした方が世のためだし、ひいては自分のためにもなります。

長くなりました。この話は続きます。

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コメント

うーん、ここが難しいところです。もっと丁寧に説明お願いします。

投稿: 八丈島 | 2019年1月20日 (日) 17時40分

八丈島さん、いつも有り難うございます。

後編を読んで頂いて、それでも難しければ、具体的にどこが分かり難いか言って下さい。場合によっては続編を考えます。

投稿: 田中 徹 | 2019年1月20日 (日) 22時59分

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