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2019年1月13日 (日)

政府がやるべき事(中編)

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---移民政策/消費税増税 /カジノ解禁に断固反対! ---

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始めに、日本における直販投信の先駆け、頑固一徹の長期投資家と言われる人の記事を一部紹介します。

 日経産業新聞で昨年の末に、平成はどんな時代だったかを振り返ってくれという依頼があった。ちょっと長めだったが、しっかり書いた。 しかし、紙面の都合でものすごく圧縮されてしまった。そこで今日は、紙面とは違う角度でもって平成の30年間を振り返ってみようと思う。

ひと言でいうと、日本全体のゾンビ化だ。 それが、ジリ貧の一途をたどった経済であり、先進国で最悪を独走する国家財政という結果となっている。ゾンビ化とは、自助自立の精神を捨て、他力本願と問題先延ばしで、ズルズルと悪い方向へ流れてしまうこと。

そのツケは、いずれ自分に降りかかってくるだろうとは感じながらも、勇気を出して悪い連鎖を断ち切ろうとはしない。もっといけないのは、自分の代では問題が噴き出ないよう、さらにさらに厚化粧を重ねるサラリーマン根性や役人根性が、日本中にはびこっていることだ。

やっかいなことに、多数の意見を尊重する民主主義の悪い面があちこちで噴き出ている。たとえば.医療財政や年金財政は急悪化しているのだが、抜本的な改革には高齢者が反対する。高齢者の票が欲しいから政治家は問題先送りに明け暮れる。 結局は、なにもしないまま問題の悪化に振り回されるという悪循環だ。

日本全体がゾンビ化ということは、誰も抜本的な解決策を打ち出さないし、国民に訴えつつ行動に移す勇気も見識もない。そういうゾンビ化が、一体どれほど酷いのか? 早い話、この20年間で米国やヨーロッパ経済は2倍規模になっている。

それだけ欧米では、国民全体では豊かになっているのだ。 若者の失業率が高いとか格差拡大とか、あれほど問題が噴出しているというのに。ひるがえって日本経済はずっとジリ貧と停滞に喘いでいる。 国民全体が無為無責任のゾンビ化に身を任せ、総貧困化の道をひた走っているのだ。

それでも、なんとかなっている? まだ、なんとかなるのでは? そういった甘えが、もうゾンビ化である。いまや国家財政が危険ゾーンに入ってきている。 来年度予算101兆円においても、その35%を国債発行で賄う。

国債発行残高は積み上がる一途でやってきたが、その50%近くを日銀が保有するところまできた。事実上の財政ファイナンスを続けているのだ。 その先では、財政破たんと悪性インフレが大きな口を開けて待っている。そこまで行ってしまうのだろうか、日本全体のゾンビ化は。

 日経産業新聞のレベルが分かる記事ですが、未だこんな事を信じている業界人がいる方が驚きです。正にデジタル・デバイド、情弱と言うしかありません。しかも突っ込みどころ満載で、とてもプロの文章とは思えないのです。さらに欧米崇拝と来ては、いつの時代の人?と疑問符がいくつも頭の中を駆け巡ります。

中でも一番酷いフレーズは「いまや国家財政が危険ゾーンに入ってきている。 来年度予算101兆円においても、その35%を国債発行で賄う。」という下りですが、予算の35%も借金が増えているととられかねない、印象操作とも言える表現はまずいです。

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そもそも35%ではなく、32%です。内訳は借り換えに当たる償還費が約15兆円、債務残高に対する利払い費が9兆円、プライマリーバランスのマイナス分が9兆円で、債務残高を増やしているのはこの9兆円と利払い費の9兆円で計18兆円でしかないのです。

しかもアベノミクス効果で徐々にではありますが、増加分は減って来ています。それは債務残高の伸びが鈍化している事を意味するのです。こういう事を正しく書かないのはフェアとは言えません。煽っているととられても仕方ないのです。

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こういう記事を書く人は思い込みが激しく、思考に柔軟性がないのかもしれませんね。そのため安倍さんが言うところの三つの敵の一つである財務省のプロパガンダを鵜呑みにしているのです。その三つの敵はそのまま日本国民の敵でもあります。

さて、今日はこの記事にも関連しますが、前回の続きです。簡単に財政出動と言っても、それをやれというと必ず財源はどうするのかという反論が噴出します。マクロ経済を理解していない不思議ちゃんのエコノミストや財務省の言いなりの政治家が大勢いるので呆れますが、これこそ借金を悪とする家計の論理です。

確かに家計なら身の丈以上の借金は悪です。やり過ぎると破綻が待っています。500万円の年収の家庭が1200万円も借金をし、さらに毎年何十万円も増えるのであれば、その内返済不能になるのは自明です。万歳するしかありません。

国家の場合はどうでしょうか。政府が1200兆円も借金をするという事は、家計とは違ってその分の資産も作っている事になります。誰かが借金をしない限り資産は増やし様がないのですから当然です。では国が借金をしなければどうなるのでしょうか。

その場合は国民が国の代わりに借金をするしかないのです。そうしなければ1200兆円はおろか、1億円の資産も作れません。我々国民にとってどちらがいいかは自明です。問題はその1200兆円が有効に使われているかどうかです。あるいは、その国の経済活動に十分なのか、足りていないかが重要なポイントになります。

私に言わせると有効に使われたからこそ現状がある訳で、ご不満かも知れませんが(笑)ある程度豊かな生活が維持出来ているのです。また経済活動に十分かどうかはインフレかデフレかで決まりますが、十分とは言えないので実質的にはデフレから脱却出来ていません。

だから日銀の黒田さんが金融緩和で現金(マネタリーベース)を増やしているのです。その政策がベストかどうかには異論もありますが、少なくともあるレベルまでは有効だったと言えます。アベノミクスで長期に渡って微々たるものとは言え(笑)景気が拡大しているのですから、全くダメだったとは言えません。

ここで日銀の役割をおさらいしてみましょう。一言で言えば国の中央銀行は物価の安定のために存在すると言われています。という事は過度なインフレやデフレは仕事をしていない、存在価値がないという事になるのです。

日本はバブル崩壊後失われた20年と言われた間ずっとデフレでした。これでなぜ容認されて来たのかは謎としか言いようがありません。中央銀行としての仕事をしていないのですから潰してしまってもいいくらいです。

たまにそういう説も出るのですが、なかなかそうさせてはもらえないようです。この問題は海外との絡みがあってややこしいのでここでは触れません。

話を戻して、日銀は黒田さんが総裁になってからは、日銀としての仕事はして来ました。2%のインフレターゲットを掲げて一生懸命金融緩和に精を出して来たのです。その結果、当座預金残高は400兆円以上に膨らみました。

最初は90兆円くらいだった当座預金残高を、毎年80兆円も国債他を買って増やして来たのですから当然ですが、これは平時に於いては世界的に見ても例を見ない程異常な事です。上の記事を書いた人はそれを財政ファイナンスと言って批難しています。

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(ちょっと資料が古いが、日米欧のマネタリーベースの比較、今は日本が400兆円を超えていて米並になっていると思われる。)

健全な経済大国ならこのような事にはなり難いので、数字だけを見て、そう言いたくなるのも分からないではありません。この問題を論じ始めるとと長くなるし、本記事から逸れてしまうので今日はやめておきますが、いずれにしても大変なマネーを日本は保有しているのです。

ここで、よくご存じない方のためにマネー(マネタリーベース)はどうやって増えるのかという話をしておきます。独立した主権国家の政府には通貨発行権があり、政府自ら紙幣を発行する事が可能です。もう一つは中央銀行による発行ですが、その場合は政府が発行した国債を中央銀行に買わせる事になります。

ただ、これらのやり方だと、政権を守る(利権を?)ために政府が暴走してお金を刷りまくり過度なインフレを発生させる懸念があるのです。途上国ではよくある事ですが、供給力不足が原因で発生したジンバブエの何十万%ものハイパーインフレは有名です。

そういうリスクを負わないため今の日本では国会での承認なしにこれらの事が出来ない事になっています。なので仕方なく国債を発行して市場に買わせる事になります。もちろんその国債発行も国会の承認が必要ですが、これだと財政ファイナンスにはならず通りやすいのです。

国債と一言で言っても色々あって1年程度の短期ものから長期だと10年、もっと長期の場合、建設国債では60年償還だったりします。国は人間ではないので戦争でもない限り60年では死にません。そういう意味ではもっと長期の国債があっても大した問題ではないのです。

さらに無利子国債とか色々議論される事もありますが、政府の考え方次第で臨機応変に運用されるという訳です。よく長期国債の金利が何%とニュースなどで聞きますが、これは10年もの国債の金利を指します。

償還が保証されているので銀行は安全資産として、この国債を一定量確保しておくのが常です。具体的に言うと銀行が持つ日銀内の当座預金口座の現金との交換となります。その場合日本のマネタリーベース、当座預金残高プラス現金が減るのです。それは銀行からの貸出し枠が制限を受ける事になり、金融引き締めの効果があります。

景気が過剰になりインフレ懸念がある場合はこの方法がとられます。逆にデフレの場合は銀行等が持つ国債を日銀が買ってマネタリーベースを増やす訳です。ところが今はいくらマネタリーベースをいくら増やしてもインフレになりません。なぜでしょうか。不思議ですねえ。

その話も長くなるので置いておいて、(笑)日銀が国債を買ったり売ったりするのは、そういう効果を狙っての事だという事がお分かりいただけたと思います。日本の場合はその枠がやたらデカイという事になりますが、逆に言えば、その分経済的に発展する余地が大きい事になるのです。

で、単純な疑問が生じます。経済発展とは何でしょうか。上の記述からも分かるようにお金が沢山増える事?ではなさそうですね。お金が一杯あればいいのであれば日本は米と並ぶ程の金満大国という事になります。どう見てもそうではありませんね。

経済発展というのは付加価値をいくら作れるかなのです。つまりGDPが大きい程経済大国という事になります。GDP?やっぱお金じゃんと言われるかも知れませんが、そうではありません。この場合のお金は単に価値を表す尺度でしかないのです。

GDPが500兆円であれば、年間にそれだけ分の付加価値を作った事になります。付加価値とは人が原材料に対して付加した価値の事です。つまり人件費の事とも言えるのです。GDPが横ばいなら人件費が上がっていない、あるいは一人当たりの人件費が上がっている場合は労働者数が減った事になります。

面白くなって来ましたが、また長くなりました。続きは次回となります。

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