今さら聞けないマネーの話(後編)
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預金準備率が10%の時、銀行が融資を行う過程で以下の通り信用創造が行われる。
1. A銀行はW社から預金1,000円を預かる(そのうち900円を貸し出すことができる)。
2. A銀行がX社に900円を貸出、X社が900円をB銀行に預金する(そのうち810円を貸し出すことができる)。
3. B銀行がY社に810円を貸出、Y社が810円をC銀行に預金する(そのうち729円を貸し出すことができる)。
4. C銀行は729円をZ社に貸し出す。
A銀行は1,000円の預金のうち、100円だけを準備として残り900円を貸し出す。A銀行が貸し出しを行うと貨幣供給量は900円増加する。貸 出が実施される前は貨幣供給量はA銀行の預金総量1,000円のみであったが、貸出が実施された後の貨幣供給量はA銀行預金1,000円+B銀行預金 900円=合計1,900円に増加している。
このとき、W社は1,000円の預金を保有しており、借り入れたX社も900円の現金通貨を保有している。こ の信用創造はA銀行だけの話ではない。X社がB銀行に900円預金することで、B銀行が10%の90円の準備を保有し残りの810円をY社に貸し出す。さ らに、Y社がC銀行に810円預金することで、C銀行が10%の81円の準備を保有し残りの729円をZ社に貸し出す。
このように、預金と貸出が繰り返さ れることで、貨幣供給量が増加していく。以下の図は、1,000円の本源的預金が、預金と貸出がされるたびにその何倍もの預金額となり、貨幣供給量が増えていくことを示している。
A銀行の貸借対照表
資産 負債
準備 100円
預金 1,000円
貸出 900円
B銀行の貸借対照表資産
資産 負債
準備 90円
預金 900円
貸出 810円
C銀行の貸借対照表
資産 負債
準備 81円
預金 810円
貸出 729円
前回の続きになります。上はWIKIPEDIA 信用創造からの引用ですが、これを見て現実の銀行員はどう思うのでしょうか。フムフム、この通りだね、と言ったならその人はモグリです。(笑)
これは間違いとまでは言わないものの、かなり手を抜いた解説だと言わざるを得ません。これだと実際に現金があって、それが銀行間を巡る事によってお金(マネーストック)が増えて行くような錯覚を読み手に与えます。
一点だけ、預金は通帳に印字された幻に過ぎないと思わせるところは正にその通りです。ではどこを手を抜いているのかという事を例を示しながら解説して行きます。これだけはいつもの私の独断と偏見ではありません。
まず上のA銀行の貸借対照表を見て下さい。預金者であるW社から1000円預け入れ900円貸し出しています。準備に100円とありますが、これは日銀当座預金残高の事です。貸出し額と合わせて1000円です。一見負債側、預金残高とのバランスが取れているように見えます。
ところが実際に貸し出す場合は日銀券などの現金ではなく900円と印字された通帳を債務者であるX社に渡し、代わりにX社の実印が押された借用書を受け取るのです。そうするとその時点の負債の部は預金1900円としなければなりません。X社がその後そのお金をどう使うかに関わらずです。
あれ、バランスが取れませんね。W社の1000円の通帳とX社の900円の通帳を足すと1900円です。方や資産の方は1000円から変化しないように見えます。これだと銀行は900円の債務超過になってしまいます。
さらにこのケースではどの銀行も、次に他の誰かに貸し出す場合は新たな預金者、あるいは出資者の出現を待つしかないように見えます。そんな悠長な事ではビジネスにならないのです。
現実には預金残高が1000円で当座預金残高が100円の場合、900円の貸出しを実行する事は出来ません。なぜなら預金準備率が10%だからです。その意味は900円を新たに貸し出すためには当座預金残高が最初の100円と合わせ190円必要だという事です。
つまり当座預金口座に90円積み増す必要があるのです。当座預金190円で1900円の預金残高(負債)となり、資産の部が準備金190プラス現金の残り810、貸出し残高900で計1900円、これでバランスが取れます。
例えその時点で既にW社から預かった現金の残り810円で国債を買っていたとしても、900円の貸出しは可能です。つまり90円だけを当座預金に振り込めば銀行は900円という現金がなくても900円を貸し出す事が出来るのです。
預金残高は幻だという理由がお分かりいただけたでしょうか。最初にW社から預かった1000円でさえ誰かの借金の結果に過ぎません。それが例え日銀券で預かった場合でも、その1000円は一切貸し出しには廻されず、当座預金分以外の現金に関しては手持ち現金(日銀券)にするか、国債などを買うかになります。当座預金は金利が低い(本来はゼロ)ので準備分以外は有価証券を買うのが一般的です。
いずれにしても。預かった資金1000円で1900円の資産持ちになります。美味しい商売ではないでしょうか。(笑)しかもこの行為、当座預金残高を増やす事によって繰り返し出来るのです。1000円の資金を全て準備金とすれば最終的には10倍、10000円まで資産を膨らませる事が可能です。
これは預金準備率が10%(仮)の場合ですから、今のように準備率が1%程になると10万円まで貸出し出す事が出来ます。それを規制するのはBISで定められた自己資本率だけです。今は国際業務を行う銀行の自己資本率は8%です。
因に中国の預金準備率は15%程度(最大23%の時もあった)いかにインフレ懸念が強いかが分かる。米で3%くらいか。
日本は預金準備率が世界一低い国ですが、それでも今は貸出しが増え難い状況が続いています。もしもですが、異次元緩和の結果、景気が過熱して3%を越すようなインフレ懸念が起きた場合、日銀は預金準備率を上げて貸出しを抑制したり、手持ちの国債を銀行に売って当座預金残高を減らすという訳です。
デフレの今はその逆で、日銀が銀行などから国債等を買って当座預金残高を増やしています。もっと貸出しを増やせと言っている訳です。よく国民が貯蓄に励んだ結果銀行に貸出しのための資金が増えて、その国の産業が栄えるなどと言いますが、全くの見当違いだという事が分かりますね。
こう見ると信用創造というのは銀行にとって都合のいい事だらけのようですが、そうとも言えないケースがあるのです。例えば当座預金残高1億円のD銀行がEさんに住宅購入のための融資1億円をしたとします。Eさんはその1億円を住宅販社に払わなければいけませんから、自分の口座からその住宅販社の口座へ振り込みます。
その時に預金口座の数字が住宅販社の銀行へ移動するだけでなく当座預金残高も同じく移動するのです。その結果EさんのD銀行の当座預金残高はゼロとなり、新たな貸出しが出来なくなります。それどころか預金者の引き出し要求にも全く応じられなくなるのです。
一つの銀行だけでなく日本の銀行全てで見た場合も同じことが起きます。当座預金残高を預金残高が大きく上回る訳ですから取り付け騒ぎが起きると、全額払い戻しは物理的に不可能なのです。
でもご安心下さい。最後の貸し手がいて、その気になれば全額払い戻しが出来なくはありません。。そんな凄いやつは誰だって?(笑)そうです。日銀です。日銀だけは銀行が持つ全ての債券(リスク資産)を買う事が出来ます。
融資残高でさえ証券化してしまえば日銀が買う事は理論的には可能なのです。という事は銀行のバランスシートを見ればお分かりのように預金残高に見合う現金が作れるという訳です。
それは今やっている異次元緩和の延長線上にあります。中央銀行は購入した債券と同額の円を創造する事が出来るのです。もちろんそうなる前に、政府が然るべき手を打つでしょうから日本全体が取り付け騒ぎでパニックになる事は考え難いと思われます。
いずれにしても、中央銀行がいくらでも通貨を発行(創造)出来るという点が管理通貨制度のいいところで、これが昔の金本位制の時代ならパニックが起きる前に預金封鎖をするしかなくなります。
ただ、既にインフレがかなり進行している国や国全体が債務超過の状態、つまり対外純負債を持つ場合は最後の貸し手(中央銀行)も慎重にならざるを得ず、日本と同じ手は使えません。
それにしてもWIKIPWDIAにはなぜ、こういう中途半端な事が書かれているのでしょうか? 話を分かり易くするためだと言うかも知れませんが、それにしては正確とは言えず、かえって読み手を混乱させます。
恐らくですが、こういう銀行にとって都合のいいシステムを一般預金者に知られたくない人がいて、わざと一見それらしいフェーク情報を流している? のでしょうか。
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コメント
丁寧な解説ありがとうございます。
なるほど、私は銀行の融資は「個人の現金の貸し借り」と
同じ感覚でとらえていました。
信用創造ですか...
リーマンショックがなぜ起きたのか、少しだけ分かった気がします。
投稿: ブログファン | 2019年1月22日 (火) 21時09分