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2019年3月15日 (金)

一見成功したかに見える、テスラというビジネスモデル(続編)

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 前回からの続きです。
簡単に電動化、EV化と言いますが、充電のための電力以外にもクリアすべき問題は山積しています。

1)肝心要なバッテリーに必要とされる天然資源の供給は十分見通せるのか、

2)バッテリーをリサイクルするための有効なシステムは構築されたのか、

3)大気汚染やCO2排出量削減が、EV化によって満足のいくものになるのか、

見えない点が多過ぎるのです。

まずバッテリーに必要な天然資源、リチウムやコバルトですが、致命的に足りないと言われるコバルトに比べれば、リチウムの埋蔵量は相当量ある事が分かっています。

コバルトを使わない技術も一部で確立されました。しかしながらリチウムの供給の方は全く目処が立っていません。急に沢山掘れと言われても追いつかないのです。

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(需要とほぼリンクしているリチウムとコバルトの価格、欧州勢が本格参戦すれば下がる事はないだろう。)

そのため中国がEV増産を始めた15年頃からリチウムの価格が急上昇し始めました。元々材料費が60%以上を占め、量産効果が薄いとされるリチウムイオンバッテリー、価格に関しては今以上に下がる要素は殆どありません。例え全固体電池が実用化に成功したとしても、その効果は限定的と言えます。

中国では既に安いバッテリーを製造しているではないかと言われるかも知れませんが、この国は政府がバックにいるので参考になりません。そもそも重要部品の大半はリチウムイオン電池の発明国、日本が抑えている訳ですから、中国以外の国で低価格を実現する事はあり得ないと言えます。

次にバッテリーのリサイクル技術ですが、未だ確立されていません。という事はリサイクル前提でバッテリーを作れば作る程価格が上昇します。今でさえバカ高いというのに、それで大衆車クラスの量産が成り立つとは思えないのです。

最後の環境問題に関しては、もっと悲惨です。今既に一部の地域では最悪に近い状態だと言うのに、今後新興国の電力需要増加に加え、さらに電動車分が急激に増えて来る事は避けられない状況です。

その増加分に関してはゼロエミッションにする以外、地球をクリーン化する事などあり得ない筈ですが、原子力発電に足枷が嵌っている今、その実現は非現実的と言うしかありません。

地球規模で考えると、人類は既に車など持てる状態ではないのです。酷くまじめに考えるとそういう事になります。しかし、残念ながら新興国や発展途上の大国(中国やインド)、あるいは覇権を維持したいアメリカなどは、自国の都合しか考えません。

PM2.5 などで環境汚染が酷い中国では石炭から天然ガス発電へのシフトが進んでいるとされていましたが、最近の石炭火力発電監視機関(米NGO)の報告では、中止されていた石炭発電所の建設が再開され、止めた筈の従来の石炭発電所も再稼働していると言います。

つまり経済優先で環境対策は逆行しているという恐ろしい現実がそこにあるのです。もう一つの発展途上大国インドはあまり騒がれていませんが、中国以上に酷いと言われています。

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 世界の石炭火力発電所13000以上を追跡している米NGOのCoalSwarmが、Planet Labs の衛星画像を使った分析によると、中国国内では、新設あるいは再稼働準備中の石炭火力発電所が合計46.6GW分に達してることがわかった。これらの胎動 分がすべて稼働すると、今年の中国の石炭火力による電力は前年比4%増すると推計している。

現実問題としてパリ協定は既に有名無実化していると言って過言ではありません。大国にやる気がないのですから他が従う筈もないのです。日本だってあり得ない数字が突きつけられていましたから、ハナから無理です。(笑)じゃあ、人類はどうなるのか? 地球は住めない星になるのかというと、そんな事もないような気がします。

大気汚染を含む環境問題では一部の地域や国は存亡がかかる程の大問題になるかも知れませんが、方向性を明確にしている先進国や未発展地域は多少余裕があるのです。今後改善が進めば、さらにマージンは増えるでしょう。従って汚染が進む国をどう抑え込むかだけが課題になります。

そうは言ってもC02問題だけはどうにもならないのでは?と言われるかも知れませんが、そこは非常にグレーゾーンです。実は確定されたものは何もないのです。事実1965年から2000年頃までは平均気温の上昇が見られましたが、それ以降はむしろ下がっているという報告もあります。

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だからと言って無制限に増やしてもいいというものではありませんが、現在大気中に0.04%しかないCO2が倍になったところで人体への影響は皆無です。温暖化にしても諸説あって定まっていません。この手の議論には政治的なものやポジショントークがあるので、今一信用出来ないのです。

いずれにしても温暖化に関しては人類にとっての喫緊の問題ではないと言えます。それより毎年何百万人も死んでいると言われる大気汚染を何とかする方が先決です。

そのためにしなければならない事は電力需要を直接増やすEV化ではなく、発電所や自動車、航空機、船舶から排出される有害物質の除去、つまりPMやNOX、SOX等の排出量規制である事は論を俟ちません。

それがある一定のレベルに達しないものは廃止するしかないのです。まず石炭火力発電はやめるべきです。次に石油、それらを天然ガスに置き換えるだけで、かなり改善されます。

その状態でのEVなら価値がないとは言いませんが、逆にそのレベルであれば汚染に関しては内燃機関も大差がないのです。むしろSOXでは圧倒的に有利です。但し、ディーゼルエンジンは除きます。

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結論としては、再生エネルギーによる発電や脱火力発電に成功した国はEV化が有効です。そうでない国は車外から充電をしない電動車、つまりハイブリッド車や天然ガスエンジン車を選択する事が大気汚染を軽減する近道なのです。

再生可能エネルギーや常温での核融合等の新技術が発電のメインになるまでは、発電は天然ガスがメイン、自動車はハイブリッド、特にエンジンを最も高効率で稼働出来るシリーズハイブリッドが、妥当な解ではないでしょうか。

シリーズハイブリッドの代表例としては日産ノート等の eパワー、ホンダ・アコード、インサイト等の i-MMDがあります。市街地走行が多い場合は日産方式、オールラウンドならホンダ方式が有効です。

テスラ? そうそう、最初はテスラのビジネスモデルの話でした。(笑)石炭、石油火力が総発電量の50%を超えるアメリカではEVは最新のハイブリッド車に劣ります。テスラのようなEVが増える程、大気汚染が原因で亡くなる人が増えるという訳です。

因に米国の発電による1kWh あたりのSOX 排出量は日本の8倍、NOX は2倍だそうです。他の先進国ではもっと酷いケースもあります。(東京電力の資料による)

EVは小型にすればする程そのメリットが増えるのですが、大型にしてしまってはコストと環境負荷が増えデメリットが増幅されます。存在意義が限りなく薄れるという訳です。

テスラより日本の軽自動車の方が余程クリーンだという事実を、東京でテスラに乗っている人たちは恐らく知らないのでしょう。アメリカで乗るよりは多少ましですが、バカ高い車両価格に見合ったものは何もありません。

Battista

(テスラに近いコンセプトでデザインされたBattista / Pninfarina のデザイン 1900ps 2億円?のモンスターEV 限定150台の生産になる。)

そもそもあそこまでデカくして、さらに動力性能を誇りたいのであれば、数を取りに行くのは間違いです。上のスーパーEVのようなニッチマーケットで勝負すべきでした。それなら多少の生存空間もあるというのに、欲をかいては虻蜂取らずで滅亡あるのみです。

テスラというビジネスモデルは70年代までのアメ車を彷彿とさせます。爆食いの恐竜には絶滅の未来しかないのですが、同じ間違いは繰り返されるようです。

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