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2019年3月 1日 (金)

主権国家としての条件

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 最近、MMT(Modern Monetary Theory)という理論がアメリカで話題になっている。かつてはそれをトンデモ経済学として嘲笑していたクルーグマンも、それをまじめに検討している。これは単なるアカデミックな話題ではなく、日本の財政を考える上でも重要である。(中略)

MMTの元祖とされるのはアバ・ラーナーで、彼の内国債は将来世代の負担にならないという議論は、今も使われることがある。国内の資源は、国債発行で増えも減りもしない。政府の借金は国債を買った人の資産なので、国債が将来世代に相続されるなら国民全体としてはプラマイゼロだ。

国債をすべて償還する必要もない。名目金利が名目成長率より低ければ政府債務は発散しないので、国債を借り換えれば増税しなくてもいい。もちろん永遠に借り換えることはできないが、償還が100年後なら大した問題ではない。(池田信夫 2月25日のアゴラの記事)


 ついにこの頑固おやじも変節せざるを得なくなったようです。昔はテレビなどで財政破綻論をヒステリックに展開していましたが、多勢に無勢状態になったと見えます。元々頭の良い方なので、当然と言えば当然です。それにしても随分時間がかかりました。

この内容、前回記事にも書きましたが、国全体のバランスシートの概念があればすぐに理解出来る筈です。すなわち、国民にも政府にも資産があり、また同時に負債も有します。一国単位で見た場合はトータルがプラマイゼロになるので、政府債務だけを取り上げて問題にするのはナンセンスなのです。

国が成長過程にあって国民が積極的に借金(設備投資)をする場合は税収が増えるしマネーストックも増えるので政府が負債を増やす必要はありません。逆の場合、日本の様に成長が鈍化して金余りなら国民は積極的に借金をしないので、その代わりに政府が負債を増やさざるを得ないという訳です。

そうしないと成長に見合った分のマネーストックの伸びが得られません。ただそれだけのシンプルな話なのです。ただこの問題、海外が絡むと全く様相が違って来ます。つまり国内ならいくら利息を払っても循環するというメリットがありますが、海外からの借金なら出て行く一方で、利払い負担が重荷になります。

さらに元金の取り立てもシビアです。返済が遅れるとデフォルト(債務不履行)という不名誉な事になり信用ががた落ちします。最近では韓国やギリシャが有名ですが、経常収支の赤字から来る外貨不足が原因でした。

さて、その具体的数字ですが、どこで判断が出来るかと言うと、下に示したような日本国全体のバランスシートを見れば一目瞭然です。右側の負債の部に純資産があればプラス、左側(資産)に純負債があればマイナス、つまり海外に対する借金が海外に対する資産を上回るという事になります。
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  (日本全体のバランスシート 2018年時点)

日本の場合は資産が負債を上回りますから、右側に純資産が計上されます。それは世界最大で300兆円(=対外純資産)を超しますから、決算書としては凄く優等生と言えるのです。従ってデフォルトなどしようがありません。

むしろ、そこから生まれる所得収支の黒字は年々増える一方なので、多少貿易赤字が出ようが何の問題もないとさえ言えるのです。いや、外貨が貯まり過ぎるのは、逆に言うと赤字国を作る事になり、摩擦の原因にもなるので、やり過ぎるのは感心したものではありません。

いずれにしても、こういうマクロ的視野がマスコミや政府関係者だけでなく、一部のエコノミストにもないのが大問題なのですが、それも少しづつ変わって来ているようです。つまり池田氏のように財政破綻論者は減る傾向にあるのです。

ではこの考え方がどの国にも当てはまるかと言うと、それは違います。ヨーロッパ(EU)の場合は自国の意思では通貨だけでなく国債も発行出来ないので、必然、緊縮財政にならざるを得ません。ECBは積極財政には後ろ向きなので伸びる国の芽を摘んでしまう事の方が多いのではないでしょうか。

中国はデタラメな程の積極財政なので、もうダメだろうと何度言われてもなかなか破綻には至りません。でもそれをする事によって中身がどんどん薄まりますから、徐々に存在感が低下し、景気も後退して行く事は確かでしょう。

元々味が薄い鍋に水(信用のないお金)をどんどん注いでいる訳ですから、暖めるだけでも時間がかかり、終いには具がふやけてスープの味もなくなるのです。そうなると具がどんどん逃げ出します。

日本も同じだなんて言ってはいけませんよ。(笑)日本の場合は美味しい具が一杯詰まっている鍋が煮詰まり過ぎたのでお湯(信用力のある資金)を足しているのです。煮詰まった状態=デフレです。反対に薄まった場合がインフレと思えば分かり易いでしょう。

日本の場合、そのお湯を足すのが政府であろうが国民であろうが、そんなものはどちらでも良いのです。いずれにしても迅速な手当が必要です。折角の美味しい鍋も煮詰め過ぎては食えなくなるからです。

因に量的緩和だけではお湯は足せません。それに加えて財政出動が必要なのですが、財政再建派が幅を利かせているので、その方法が採れないもどかしさが続いているのが日本です。アベノミクスは宙ぶらりん状態だと言っておきましょう。

ところで米ですが、FRBのパウエル議長が26日に米政府の債務が持続可能ではないので財政再建せよと言い出しました。米国はいくらでも基軸通貨であるドルが刷れるのに、なぜでしょうか。

確かに22兆ドルは巨額ですが、半分くらいはFRBが保有しているし、世界にばらまいた分に関しても、ある程度の米の成長があって、世界も成長する限りドルが還流する循環を作れるので基本的には問題はない筈です。

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【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は26日、米上院銀行委員会での議会証言で「連邦政府の債務が持続不可能な経路をたどっていることは、広く認められることだ」と述べ、議会に財政再建を急ぐよう求めた。3月2日には政府債務が法定上限に到達するが、同氏は「議会が上限の引き上げに失敗すれば、大きな不確実性が生じる」と警鐘を鳴らした。

実は米は日本同様、主権を持った独立国家とは言えないのです。主権国家とは文字通り誰からも制約を受けず、主権を完全に行使出来る国の事です。つまり自分の事は自分で決められる国の事なのです。通貨発行然りです。それが出来ないなら世界にデカい顔は出来ません。

米の場合の中央銀行(FRB)は政府機関ではなく、民間銀行だと言います。しかも外国籍の株主が大半を占めるのです。という事は米政府が国債を発行してFRBに売れば売る程海外に対する借金が増える事になるのです。これではとても持続可能とは言えません。

日本の場合、一応日銀は政府機関なので体裁は保てますが、一部の海外株主の意向を強く反映している事も確かなようです。だから根も葉もない財政破綻論が出てくるのかも知れません。

これら株主情報は秘匿されているので詳しい事は分かりませんが、日本の景気が良くなると困る人達が一定数いるのは確かなようです。そう考えると日本に色々起こる不思議な事にも納得がいきます。

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コメント

ちょっと疑問に思ったのですが、ECBも独国の影響か緊縮財政支持のようですが、欧州の経済学者もほとんどが金融と財政のことがわかっていないのでしょうか。日本の場合財務省の誘導があって財政破綻論が表に出ていますが、ネットではもうそう理論は論破されています。心ある市井の人にも見破らています。欧州の場合論壇や市井の人々はどんなもんなんでしょうか。

投稿: 八丈島 | 2019年3月 1日 (金) 19時04分

八丈島さん、疑問はごもっともですが、欧州人が何を考えているのは、遠い地にいる私にもよく分かりません。

そもそも国境があるにも拘らず、通貨を統一する事自体がバカげています。そんな事をする人の頭はおかしいに決まっているのです。(笑)

いずれにしても、この壮大な実験が失敗する事は間違いないでしょう。

投稿: 田中 徹 | 2019年3月 2日 (土) 13時12分

欧州はもう手遅れですね。徐々にヨーロッパでなくなり何かわけのわからない人々が、問題を起こしながら住んでいるという地域になってしまうのではないでしょうか。これはアジアアフリカや南米を植民地にして苦しめてきたことのカルマだと思っています。日本はそんなに悪いことはしていないし、まだまだ間に合うと思いますが・・・。

投稿: 八丈島 | 2019年3月 2日 (土) 21時09分

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