新重商主義の時代(その2)
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外国人観光客が押し寄せ、「観光公害」が社会問題になっている京都。そのことが広く知らたためか、日本人観光客が4年連続で減少する事態になっている。
京都市観光協会などが実施している市内主要ホテルを対象にした調査によれば、2018年の日本人の宿泊客数は206万2,716人で、前年度比10万4,129人減少。4年連続のマイナスが続いており、増え続ける外国人観光客と対照的になっている。
外国人観光客が年々増えて、代わりに日本人観光客が減る状態が続いています。しかしこれこそ本末転倒ではないでしょうか。政府は外国人観光客を4000万人に増やしたいなどと訳の分からない事を言っていますが、その数字に何の根拠もありません。
確かに昨年までで見る限り海外からの観光客が増えたせいで旅行収支の黒字は増え続けています。ところがその分肝心な内需、日本人観光客が減ったのでは元も子もありません。最も上客である日本人は自分の国でありながらお気に入りの観光地にも行けないという状況に追いやられているのです。
さらに地元の人は大迷惑です。交通機関がオーバーフローし移動も困難になります。道徳観、価値感、果ては歴史認識の異なる外国人には不快な思いもさせられかねません。一体何のための観光立国なのかと文句のひとつの言いたくなるのです。
私なども中途半端な旅は諦めました。ゴルフで伊豆の温泉宿に宿泊した時の事です。格安コースのためか食事は体育館のような大広間でとる事に。そこに大挙押し寄せて来たのは殆どがアジアからの外国人観光客です。正に多勢に無勢状態。(笑)
しかも彼らも格安ツアーで来たようで、大多数の人はマナーもいいとは言えません。賑やかな事、騒がしい事(笑)大きな声の外国語が飛び交います。食べたい料理に接近するのさえ困難です。
これでは落ち着いて酒も飲めません。次回からは誘われても参加しない事にしました。観光立国は日本人が落ち着いて温泉宿にも泊まれない状況を作り出しています。
日本の様に文化レベルが高く、人口密度が高い国には数を取りに行くのではなく、少数の富裕層狙いの高付加価値型観光が適しているのですが、そういう声はあまり聞こえて来ません。
確かに2.3兆円も黒字化した旅行収支は観光業にとっては魅力的です。しかしそれが全てGDPに反映され、国民の所得が増えるとは限らないのです。増えた分経費も増えるという事実が忘れられています。
例えば、最近は中国からの観光客が最も多く、お金も韓国人の三倍落としてくれると言います。そのため通訳も兼ねた中国人を従業員として雇う店や旅館が増えて来ました。という事は彼らの生活のため日本に落とす以外のお金は本国に送金されるのです。
それは2.3兆円が丸々日本人の所得に反映されない事を意味します。さらに内需である日本人観光客が減る事はGDPを減らすのです。そのせいか観光立国を推進しても日本の実質GDPは増えていません。むしろ民主党政権時代よりも減っているという事実があるのです。
尤も、旅行収支や貿易収支の黒字は外需(外貨獲得)に過ぎないので基本的には通貨高を招き、自動的に調整されていきます。それを嫌って従業員の人件費を減らしたり、安いパックツアーを増やしたのではデフレからの脱却は遠退くばかりです。
これは失われた20年に於ける製造業の衰退という歴史が証明しています。大幅な貿易収支の黒字は円高とデフレ、株安をセットで増進させました。つまり給料が減り貧困化に拍車をかけただけだったのです。
また生産性の低い労働集約型である観光産業の場合、拡大すると日本全体での労働生産性が下がるというリスクもあります。農業のようにどうしても必要な産業ならやむを得ませんが、観光業がなくて国が滅ぶ事はありません。
このように問題だらけの観光立国構想ですが、私が懸念するのは日本の接客クオリティの低下です。数を取りにいくと必然そうなります。従業員の質、料理の質、おもてなしの質がお客に合わせる形で知らず知らずに落ちていくのです。正に亡国の観光立国構想ではありませんか。
話が横道にそれましたが、日本はかつて貿易収支の大幅黒字から米と摩擦を起こし、自動車などは輸出を一定数に自粛し現地生産を増やして来た経緯があります。そのため現在は輸出量の3倍は現地で生産しているのです。
それもあってか、今回の日米貿易交渉でも自動車関税に関しては現状維持となりました。米が輸出する農産物に関してはTPPレベルまで引き下げさせられたにも関わらずです。
しかし、それを伝える批判的報道にはやや違和感を感じます。まさか時代を逆行させて自動車関税を減らしたかった?という事は、いくらおバカな日本政府でも考えていないと思われるので、そこを批判がましく強調する意味はありません。
巨額対日貿易赤字が続く限り米政府も自国産業を守る義務があるのです。それが意味するのは相手のある貿易で自国の純輸出によるGDPを増やす事は持続可能ではないし、敵を作りかねないという事です。しかもその結果としてのデフレ不況では泣くに泣けません。
そういう歴史を繰り返して来たというのに、政府は相変わらず観光立国やインフラ輸出など外需依存策を採り続けます。今日本が必要としているのは持続可能な内需なのです。アベノミクスでも当初内需拡大と言っていたではありませんか。
ともあれ、いずれにしても米が今、日本に貿易などで強引に身勝手な要求を押しつけて来る事はないと思われます。というのは今は米中摩擦が主戦場だからです。目先の脅威は中国で、ここをあるレベルまで後退させるまでは日本は味方です。
米国はご存知の通り、建前上自由貿易、グローバル化を押し進め積極的に海外にも直接投資などで進出して来ました。またいくら赤字になろうが輸入品も欲しいだけ買って来たのです。ドルさえ刷れば問題は全て解決すると思われたからです。
その結果として世界各国をある程度富ませ、金融でその上前をはねる(ドルの還流)形で繁栄を謳歌して来ました。しかしその本当の狙いは共存共栄ではなく、穿った見方をすれば、格差拡大にあるのかもしれないのです。
自由貿易などで途上国をある程度富ませるが、それ以上に自らが富まなければ覇権国家として意味がありません。その上で情報とハイテク産業を牛耳っていれば不安はないのです。
そのためにあらゆる手段、特に圧倒的な軍事力と金融力を背景に強かな政治力を駆使して来ました。もちろんかつての日本のように行く手を阻む国は容赦なく潰されます。自動車や半導体で日米摩擦が起きたの当然の成り行きです。
中国との貿易摩擦も単に対中貿易赤字が巨額という理由だけとは思えません。覇権維持にはIoTや5G含む情報通信分野とAI 技術は欠かせないのです。
そこで最近急激に存在感を示し始めたファーウェイが叩かれました。カナダでの副会長逮捕劇は衝撃的でしたが、この場合スパイ活動があったかどうかは大きな問題ではありません。
中国政府の支援の下に国策として不公正にシェアを広げ、大量に技術者を米に派遣して技術を持ち帰り、5Gでも米を凌ごうとしたのが米の逆鱗に触れたのです。
そこで関税引き上げ合戦が始まり、ファーウェイ閉め出しキャンペーンが張られました。ファーウェイと取引した企業にはペナルティが課せられるという徹底ぶりです。かなり本気なのです。
[ワシントン/北京 23日 ロイター] - 中国が米国製品に対する追加報復関税を発表したことを受け、トランプ米大統領は23日、対中関税の新たな引き上げを発表した。
さらに米企業に対し中国からの事業撤退も要求した。通商問題を巡る米中の対立は深まる一方となっている。
そこを軽く見ている日本の経営者達がいて、未だに事の深刻さ、時代の流れが呑み込めていないように見えます。日本もあれだけやられたというのに、米の本当の怖さが分かっていないと言うしかありません。
長くなりました。この続きはまた次回に。
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コメント
田中様また心配になってしまうのですが、5Gでは中国の技術たとえば特許数では米国をはるかにしのぐらしく、この覇権争いどちらに軍配があがるかわからないと言う意見をよく聞くのですが、どんなもんなんでしょう。まして日本など蚊帳の外だと。
観光とは違いますが、目黒区のある公園では花見で韓国人が宴会をするようになって、その場で用を足すでらしく臭くてしょうがないので、花見の宴そのものが禁止になりました。
また私は波乗りでよく行く場所ですが、夷隅川の河口にある塩水湖付近は、貝もたくさんとれ、釣りにもいいところだったのですが、週末には南米人のたまり場になってしまい、柵ができ車が入れなくなりました。
投稿: | 2019年8月29日 (木) 13時08分
八丈島さん、5Gに関しては前の記事にも書きましたが、未だ始まったばかりで海のものとも山のものともつかないのです。そもそも自動運転に貢献しようにもその車がありません。(笑)
Iotだってこれからでしょう。様子を見ながら追いかけて行っても何の問題もないと言えます。と言うか、別に遅れているというレベルでもないと専門家は言っていますよ。
さらに5G関連部品で見れば日本の独壇場です。ホワイト国問題でもありませんが、そもそも日本が売らなければ成立しないのです。
個人レベルで言えば5年後くらいに、そう言えばあれはどうなったんだろう、そのくらいのイメージなんですけど。
投稿: 田中 徹 | 2019年8月29日 (木) 17時29分
ネットで出会う専門家はあまりに悲観的なのでつい気になってしまいました。ありがとうございます。
投稿: 八丈島 | 2019年8月30日 (金) 16時37分