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2019年9月 8日 (日)

新重商主義の時代(最終回-1)

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---移民政策/消費税増税/カジノ解禁に断固反対!---

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 いよいよ最終回です。いつものように竜頭蛇尾に終わるかも知れませんが、私が考える独断と偏見に満ちた仮説をご一読いただければ幸いです。

大戦後、欧米による植民地支配が終焉を迎えると、代わりにグローバリズムという理念が台頭して来ます。その後ソ連崩壊で米一極体制となると、これが増々世界に浸透して行ったのです。しかしこれは被支配者側にいた途上国にとっては夢のような話でした。

西側先進国と対等に貿易が出来、おまけに場合によっては直接間接の投資までしてくれるのですから涙が出る程有り難いです。自分たちの価値について錯覚をしてしまっても無理はないのです。

中でも最も大きな勘違いをしたのが韓国です。日本からは謂れのない高額賠償金をせしめ、技術面でも惜しげもない支援を受けました。空襲のなかった韓国は日本が残したインフラも健在で、漢江の奇跡は起こるべくして起きたのです。

尤も、この漢江の奇跡という言葉、最近韓国の教科書から消えたようですが、日本の残滓は全て消すべし、でしょうか? ただ90年あたりまでは、韓国のプレゼンスは大したものではありませんでした。ハイテクに関しては手も足も出なかったからです。

80年代後半、現代自動車に対し私が提案したコンセプトカーは、皮肉にもエレクトロニクス技術の粋を集めたハイテク・ラグジャリースポーツカー、でした。

話を進める過程でサムスンあたりとコラボ出来ないかと言ったところ、「韓国に技術はありません。日本の技術を盛り込んで下さい」と現代自トップは言うのです。私はこのトップの持つシビアで正直な見識に驚きましたが、反面日本を頼もしく思ったものです。

そこで日本のエレクトロニクス会社を数社訪問し、首尾よく狙ったコンセプトの車を完成させましたが、目新しさがあったのかショーでは大人気でした。ベストカーオブザショーという賞まで受賞するおまけ付きです。

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(2001年のソウルモーターショー HIC と名付けられたコンセプトカーは実は日本で開発された。)

それが90年代になると様子が変わって来ます。深く静かに日本の先端技術の流出が始まったのです。週末になるとソウル行き航空便は日本人技術者で溢れかえっていたと言います。

その10年後くらいでしょうか。気がつくといつの間にか韓国は半導体でも液晶テレビでも存在感を示すようになっていたのです。サムスン電子の李会長は「開発費は必要ない。日本に出させればいいのだ」とまで言い出す始末です。

何百、何千億円という開発費と長い年月をかけて開発して来た技術がただ同然で、千人単位の日本人技術者によって売り渡されました。バブル崩壊後の不景気も日本売りに拍車をかけます。

ここから日本のエレクトロニクス産業は苦難の道を歩む事になりますが、幸運にも国内での垂直統合型産業システムまでは毀損しなかったのです。これが後に強みを持つようになるとは誰も想像だにしませんでした。

一方グローバリスムを押し進めて来た張本人であるアメリカですが、当初は凄く上手くいっていたのです。国民の血を流してまで維持しなければならない植民地支配より、経済支配の方がはるかに効率が良いに決まっています。世界が発展すればする程米にメリットがあるシステムを構築しました。

特に広い国土と膨大な人口を持つ中国はマーケットとして魅力的です。ここを経済植民地にしない手はありません。78年、キッシンジャーが指南役として派遣され、鄧小平の改革開放政策が始まります。

そうなると米始めとする西側企業がこぞって投資をするようになり、72年に国交正常化を果たしていた日本も遅ればせながら進出を開始、松下電器などが中心になり中国の発展に尽力する事になりました。

後はご存知の通りで、世界の工場として毎年10%台の高度成長を遂げ、日本を抜き世界第二位という経済大国としての現在に至る訳です。ただ中国に関しては、米としては大きな誤算があった事は否めないのではないでしょうか。

ひとつは民主化です。経済発展をすれば自然に民主化への道が開けるかと言うと、そうでもなかったのです。今も香港で揉めているように、民主化の目処は立っていません。むしろ逆行しています。

二つ目はドルペッグです。為替で元の価値が上がらないように当局がドル買いを貿易黒字にリンクする形で進めました。その結果は4兆ドルにも達する外貨準備を積み上げる事になります。

また、その分の元を国内に放出する事になりますが、本来なら過度なインフレになるところ、先進国からの直接投資で供給力は十分でした。結果として中国の発展に大きく寄与した事は怪我の功名かも知れません。

この国際ルール無視のやり方は一見理想的に思えたのです。米からの追及も緩く、中国はこの世の春を謳歌する事に。しかしそれは長くは続きませんでした。リーマンショックで成功ビジネスモデルが大きく揺らぐ事になるのです。

その解決策は国内へのばらまき(公共投資)で、必然インフレと元安を招く事になります。過度な元安は資本流出を生み国力を削ぎますから、今度はドル売りに奔走せざるを得ません。外貨準備が大幅に減少したのはこのためです。

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(人口が減っていくと予想される中国で、誰も住まないマンション建設ラッシュは続く)

しかし米から見れば相変わらず対中貿易赤字が続き、ドルペッグで巨額貿易黒字を得ていた頃と何ら変わりません。トランプ氏はそこがお気に召さないのです。(笑)本来為替で調整されるべきところが全く機能していないのですから貿易赤字は増える一方です。

そうなると関税で調節する以外ないのです。つまり中国のアンフェアは関税で本来の数字に戻すという考え方で動いている訳なので、米としては無理強いしている感覚はないと思われます。矢継ぎ早に制裁策が打ち出されます。

日本の場合も実は安穏としていられないのです。為替介入の過去があり、今も異次元緩和で円安に誘導しています。しかも中国程でないにしても対米巨額貿易黒字を安定して稼いでいるのです。その割に今回トランプさんは控えめです。(笑)余談でした。

さて、誤算の三つ目はと言うと、技術流出です。人・もの・金が自由に動き回る現代、その気になればいくらでもアンフェアな事が出来ます。残念ながらこの世界、性善説では成り立っていません。

特に世界覇権を狙うとなると大義名分も立つというものです。中国はあらゆる手段を駆使して米や日本から技術を導入していきます。マイクロンの台湾工場やシリコンバレーが狙われました。シャープ買収もその一環と言えるでしょう。

その中心には日本政府が6億円も出して援助した中国人科学技術者がリクルーターとなり、海外のハイレベルの人材を招聘するプログラム「千人計画」の人材をスカウトしているというのです。

何ともおめでたい話ではないでしょうか。日本は呑み込まれるかも知れない相手に、あご足付きで一生懸命尽くしているのですから、その平和ボケ度、間抜け度は底知れません。

今回が最終回のつもりが、取り留めなく長くなりました。もう一回最終回-2をやります。(笑)

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