EV vs HV (前編)
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今日は読者の方からのご質問にお答えします。最近さぼっているので自動車の話もとんとしていませんが、その間、特に何かが大きく変わったという事はありません。もちろん今回の新型コロナ騒ぎは抜きにしての話です。
それはそれで大きく世界が変わるかも知れないのですが。その話はもう少し時間が経ってみないと分かりません。日本に限って言えば夏までに収束してもおかしくないし、あるいは不測の事態に発展しないという保証もありません。
専門家が言うには日本のピークはこれからだそうです。欧米の悲惨さをみると説得力があります。日本だけがこのままというのはないのではないでしょうか。
いずれにしても世界規模で俯瞰するならば、最低一年を通してみる必要はありそうです。そういう意味では、現状の話というのは大して意味を持たないかもしれません。
従ってこの記事はコロナ後の世界が大きく変わらず、原状復帰が90%以上という楽観的前提で書きます。本当にそうなる事を祈らざるを得ません。
まず電気自動車関連ですが、結論から言いますとEVが今のガソリンエンジン車のように世界を席巻する事はあり得ません。少なくとも二次電池を積んで走るEVシステムという前提ではそう見ています。
その根拠は山ほどあって整理するのが困難な程です。専門家ではないので遠い将来の事は分かりませんが、まず二次電池には限界がありそうです。
基本的にはメーカーが巨額投資を嫌がります。未だ固定されたデバイスではなく、いつ何時革新的なものが出て来るか予測不能という点が悩ましいところです。
従って急速に伸びる需要には対応が難しいです。さらに向こう10年くらいで見てもリチウムイオン電池では何の解決にもならないし、大手がこぞって開発している全固体電池でも圧倒的能力不足と言わざるを得ません。
(ポルシェよ、お前もか、と驚きを隠せない超弩級 EVスポーツカーのタイカン、失笑してしまうのは私だけ?)
全固体でもハイブリッド車との比較で、走行距離では実質半分がいいところです。強引に沢山の電池を積んで走行距離をカタログ上500キロ程度まで伸ばしているEVもありますが、これこそ本末転倒、愚の骨頂と言えます。自動車の本質が分かっていません。
今走っている車の大半は重量との戦いの成果と言っても過言ではないのです。設計者は日夜グラム単位で軽量化に血道を上げています。コストと重量がその商品の存在価値を決めるとさえ言えるでしょう。
軽量化は燃費や走行性能向上には切っても切れず、耐久性にも影響します。従って重量増がエコに反する事くらいは小学生にも分かる理屈ですが、テスラの経営陣はどうも理解していないようです。
闇雲に車をデカくし高コスト高付加価値化に励んでいます。本当に地球の事を考えるならミニマム指向、つまりマイナスしていく考え方で設定すべきは明らかです。
電力爆食いで際限なく電力需要を増やしていくビジネスモデルに勝算などある筈がありません。それでトヨタ並の大企業にするなどと夢を見ている訳ですから頭がおかしいです。
と言うか、ニッチ狙いならあり得たビジネスモデルを中途半端に安い「モデル3」を上市して量をとろうとしたのが間違いでした。そうは問屋は卸しません。
今は時価総額がバブル的に高いので誤摩化せていますが、実力相応の株価になった時が企業としての正念場でしょう。私はこういうヤクザな企業は近い将来に消える運命にあると見ています。
昔のような国内好事家向けのニッチメーカーに戻らない限りその運命しかありません。その点は欧州車も同じです。ジャーマンスリーの御三家と言えど高級車の市場は限られます。
そもそものEVの基幹部品である二次電池の材料、リチウムそのものが有限で、今分かっている埋蔵量ならすぐに底をつくのは自明です。とてもほぼ無尽蔵と言われる石油には勝てないのです。
従ってコストの点でも不利な戦いを強いられます。さらにリチウムイオン電池は工業製品としては例外的に量産効果が出難い商品と言われています。リサイクルシステムさえ確立されていません。
従って不完全と言えるこの商品を前提に量産を考えるなんてあり得ないのです。余程人件費の安い国で作るなら話は別ですが、品質に神経を使う製品故にそれも限界があります。
もっと悪い事にはリチウムの採掘は産出国を汚染しているという事実があるのです。リチウムだけでなく他の金属の採掘も含め土壌汚染、水質汚染等、掘れば掘る程環境汚染が進みます。
(ボリビアのウユニ塩湖は世界の総埋蔵量の50%が眠ると言われる世界最大のリチウム鉱床である。)
EV生産国では問題がないかも知れませんが、先進国のエゴで途上国を汚染してしまっては元も子もありません。地球トータルで考えるべきという視点がない事に驚かされます。
EVを使用する先進国にもまた違った問題が発生します。肝心要の電力をどうやって作るかによって全く違う結果が導き出されるのです。今までのような火力発電で石炭を主に使う場合などは、国によってはガソリン車より汚染が酷くなる事もあり得ます。
少なくとも歴史が20年以上と長く低価格化が進んだハイブリッド車には一定の安定感があり、さらに同じ延長線上にもっと上を狙えるポテンシャルもあるのです。
それが分かっている欧米メーカーは自分たちでは上手く作れないストロングハイブリッド車で勝負をする気はありません。そこで何とか引きずり下ろしたいというのが本音なのです。
ところがこれから増々厳しくなる各国の排ガス規制を見た時に選択肢はそうはありません。欧米勢は多くの排ガス浄化装置に依存せざるを得ないディーゼルエンジンでは成り立たない事を知っているのでEVに向かいます。
デンソーがリードするコモンレールも燃料噴射の圧をどんどん高くせざるを得ないし、日産ディーゼルが大型のために開発したNOx除去装置の尿素SCRも小型車にはコストやメンテナンスがネックになります。
他のデバイスも同じで、とても小型車が堪えられる装備ではありません。そもそも重くてデカく高いディーゼルエンジンそのものが小型車には向いていないのですから何をか言わんやです。
当然欧州メーカーも全て承知の上で、行きがかり上繋ぎでしかない今は採算度外視して作っているものと思われます。かなり内情は厳しいのではないでしょうか。
長くなりました。続きは出来る限り早くアップする予定です。
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コメント
田中様
早速の投稿有難うございます
やはりEV車の現状はあまり芳しくはないのですね。私は嘗てH社でモーター開発の仕事をしていたので、4輪にモーターで駆動するなんてことは素晴らしいと期待していましたが、現状では期待外れのようですね。また、全個体型の電池にも期待できないとのこと残念です。
最近の発電で石炭を使用する場合、石炭をガス化して燃焼するようです。これは蒸気機関車や微粉炭にしての燃焼より燃焼効率、排ガスなど格段に効率が良いようです。石炭をバカにできない時代が来ています。
次の投稿をお待ちします。
投稿: ナベ | 2020年3月25日 (水) 20時24分