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2020年11月24日 (火)

クルマの価格が5分の1になる日(後編)


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---移民政策/消費税増税/カジノ解禁に断固反対!---

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 遅くなりましたが前編の続きです。

クルマの場合、現実にはいくら生産台数が増えても価格は下がっていません。むしろ上がっています。なぜなら人件費の安い途上国では、そんな最先端の高付加価値創造物を作れないからです。

先進国はと言うと、生産拠点を途上国に移して価格を下げる努力はしましたが、それでも抑えきれない程の高付加価値創造=莫大な投資があって簡単には下がりません。

生産拠点は出来ても重要部品は日本や他の先進国からの輸入に頼るしかないのも下がらない理由の一つです。さらに途上国の賃金も海外からの直接投資等によって上がって行きます。従って長期に渡って安い人件費を都合良く利用する事など不可能なのです。

日本の軽自動車で言えば、50年前は30万円ちょっとでした。それが50万になり100万になり、今では200万円近いものもあります。ボディが多少大きくなったとは言え6倍の上昇です。

高級車も30年前なら300万円程でしたが、今では国産でも500万円以上はざらで1000万円を超えるものもあります。それは付加価値が量、質共に激増したからに他なりません。

その付加価値は今後CASE 化が加速するにつれて増々増大します。さらに環境問題絡みの政治問題としてもどう転んで行くのか予測困難な状況になりつつあります。それはこれまでと違って桁違いに大きい不確定要素なのです。

パリ協定を持ち出すまでもなく、温暖化問題があり、環境汚染も限界に達するのは時間の問題でしょう。貴重な資源をこのまま消耗させていいのかという問題もつきまといます。

尤も、それらは政治的に都合よく利用され、日本のような真面目な国は往々にして割を食う事になるのです。私はここで何度も言っていますが、CO2温暖化ガス説を信じている訳ではありません。

むしろ疑わしいと思っています。エネルギー資源も簡単には枯渇しない筈です。それでも今回の菅総理の50年までにCO2排出ゼロの決定に関しては一定の評価をしてもいいのではと思い始めました。

但し、その場合でも原発ゼロという選択肢はないと思っています。再生可能エネルギーだけではいかにも心許ないからです。従って現存する原発をフルに活用するしかないのですが、それなら可能性は十分あり、日本にとって面白い展開になるかもしれません。

なぜそう思ったのかと言いますと、ミライを見たからです。いえ、タイムトラベルの話ではありません。トヨタのFCV(燃料電池車)新型ミライが全くイメージを変えて登場したのです。

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(全体としてはシンプルで好感が持てるが、虫の腹のようなRグリルは好きになれない。)

一見、クラウンクラスの普通のクルマに見えます。しかもトヨタにしては珍しくスタイリッシュなのです。プリウスのように奇をてらっていないし、カムリの様な得体の知れない気持ち悪さもありません。

それは真面目に未来のクルマとして考え始めた証です。早速資料集めをしました。実車もお台場のメガウェブに見に行ったのですが、それが写真以上に普通なのです。安心したと同時にやや拍子抜けしました。

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(このアングルが一番普通で良く見える。実物は意外にデカい。)

内装はと言うと、これまたこれまでのトヨタ車とは趣が違います。変にデザインっぽいところがないのです。機能本意でシンプルにまとめた感があり好感が持てます。

ただ、カラーリングのセンスは今一でスイッチ類やパッドの質感も含め、英国車は疎かジャーマン3にも劣ります。なかなか垢抜けませんね。そこはもっと本気でやって欲しいところです。

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(トヨタらしくなくスッキリしているインパネ、サイドミラーはカメラ化して室内に収めて欲しかった。)

さらに、圧縮タンクを3個に増やしたためにトンネルの出っ張りが大きく、後席の中央は大人はムリかも知れません。さらにそのタンクを守るためにサイドシルの高さと幅がかなりあって、乗降性に多少難があるのも事実です。

それでもDセグ車よりは広い感じがするので、許容範囲と言えるでしょう。全般的に言える事は凄い高級車というのではなく、近未来の真面目なセダンと言う感じでしょうか。

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(後席の下にも三個目のタンクが横置きで搭載される。二次電池はリチウムイオンでその上。)

さて、性能はと言うと、これが素晴らしいのです。航続距離が燃費新基準で850キロと大幅アップ、ハイブリッド車並になりました。水素の充填時間も3分と言いますからガソリン車以上で、EVとは比較になりません。

加速性能に関しては大容量バッテリーを搭載するテスラには敵わないようです。それでもEセグセダンとしては標準的と言えそうなので、クルマの性格上問題ないと思われます。

そんな事より静粛性や乗り心地、操縦安定性、旋回性能等ではレクサスLSをも凌ぐと言うのですから、凄い話ではないでしょうか。エンジン振動がない事、50対50の重量バランス、あるいはタンクを防御するため強度を上げたボディ剛性が奏功していると言います。

それによって少し重くなった車両重量も、悪い方に作用している訳ではなさそうです。むしろ重厚な乗り味と評価する人もいます。いずれにしても評論家が絶賛するこのクルマ、是非近い内に試乗して真価を試したいです。

問題は水素ステーションの数ですが、日本には既に130カ所以上あり、状況によっては今後加速度的に増えるかもしれません。航続距離が延びた事もあって、使い方によっては苦にならない場合もあり得ると思われます。

逆に言えば問題はそこしかないのです。肝心な水素の値段ですが、航続距離を加味すれば、現状ハイオク並と言います。供給側は今は多少無理しているのかも知れませんが、菅さんの今回の発言で劇的に安くなる可能性が出て来たという訳です。

再生可能エネルギー発電は自然頼みで非常に不安定です。そのため需要の倍くらいの供給力を持つ必要があります。この余剰電力を有効活用出来るかどうかが再生可能エネルギー発電の鍵だったのです。

ところが、その余剰電力を使って液化水素を生産するなら問題が一気に解決します。逆に電力が足りなくなれば、その蓄積された水素を電力に戻せばいいのですから無駄がありません。

肝心な時には使えない等、制約が大きいEVへの蓄電とは比較にならない程効率的です。となると後は魅力的な商品の登場を待つのみですが、そこに新型ミライが現れたという訳です。

トヨタは運がいいのか、あるいは読みが鋭いのか?分かりませんが、このミライがある程度成功すれば、既に計画のある商業車に加え、バリエーションが充実して来ます。一般的な乗用車だって商品化は十分あり得るのです。

ただ、車両価格という点では、EVと違って重厚長大的性格故そう簡単ではないと言えるでしょう。ましてコモディティ化して家電屋さんが作るなんて事はあり得ません。

従って5分の1になる日は永遠に来ませんが、価格はむしろ高くてもいいのです。普通の人が買えない程高いのは問題がありますが、クラウンサイズのFCVが500万円なら十分ではないでしょうか。

それで環境問題が解決するのなら安いものです。途上国は買えない?そんな事は知りません。(笑)地球のために自分たちで努力して、自分たちのコストで作ればいいのです。それが出来ないならクルマに乗るのは諦めてもらうしかありません。

いずれにしても、本命と見られていたBEB(バッテリーEV)の優位性が一気に失われかねない状況が出現したと言えるでしょう。FCVは安全性他で問題山積のEVよりはるかにポテンシャルがあります。何よりBEBと違って持続可能です。

これでまた欧米勢が大慌てで後追いをするか、ずるくルールを変えるか?まあ、何か嫌がらせをして来るのは間違いありません。(笑)

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コメント

今回の記事最高です。気持ちが明るくなります。だけど少しだけネガなことがあります。この燃料電池車中国に技術を盗まれるという心配はないのでしょうか。

投稿: 八丈島 | 2020年11月24日 (火) 17時16分

八丈島さん
FCVの特許は一部解放されています。肝心なところは押さえているようですが、トヨタは教えを請うメーカーには前向きに協力すると言っているのです。

まあでも、これだけ余裕を持っているという事は、それだけではFCVは作れないという事だと思います。

中国が例え技術を全て手に入れたとしても、トヨタの協力がなければ難しいのではないでしょうか。

周辺技術やインフラの問題もあるし、何よりコストがネックになるでしょう。そういう訳で私は心配していません。

投稿: 田中 徹 | 2020年11月24日 (火) 17時30分

ありがとうございます。日本の技術力は素晴らしいですね。
確か今年の6月ごろだったと思いますが、阪大と協力してワクチンを開発している人(代表が)ユーチューブに出ていて、その人が言うには、そのワクチンの開発費は米国の何百分の一以下、ワクチンそのものの価格が10分の1以下だそうです。早く国産のが出てきてほしいですが、欧米の製薬メーカーがまたなんらかの手立てで潰してくるのでしょう。

投稿: 八丈島 | 2020年11月25日 (水) 17時22分

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