クルマの価格が5分の1になる日(前編)
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日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は10日、第22回日経フォーラム「世界経営者会議」で講演した。世界的な環境規制強化を背景に電気自 動車(EV)が普及し、「2030年に自動車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と述べた。EVの核はモーターとバッテリーであるとして、「高額な バッテリー価格は技術革新で変わる」と話した。
今日は日本電産の永守重信会長が2月の時点で言っていた内容(上記記事)を先日のWBSでもまた繰り返したので、前にも書いたかも知れませんが、電動化に関する新しい情報もあるので再度検証します。
結論から言いますが、はっきり言って高くなる事はあっても5分の1まで下がるなんて事は考えられません。凄く簡単な理屈ですが、それが分からなくても大企業のトップは務まるようです。
そもそもそんな事になったら、モーターはカーメーカーにいくらで買ってもらえるのでしょうか? モーターだけ特別待遇はあり得ないのです。他の部品と同じく5分の1近辺と考えるのが妥当でしょう。
そうすると売り上げも5分の1になります。ところが本人2030年には今の1兆5千億円を10兆円にしたいと言っているのです。???凄い矛盾ではないでしょうか。
(日本電産の優秀な車載用モーター、中国に売り込みをかけているが、5分の1の値段でも売るのだろうか。それをやったら経営者としてはどうしようもなく、日本人従業員の敵と言えるだろう)
今の売り上げが仮に車載部品だけとすれば売り上げも5分の1の3千億円になります。10兆円にするには今の33倍もモーター他の部品を売らなければならないのです。いくら世界が相手だと言っても絶望的な数字です。
まず資本主義経済の仕組みを知ってもらいたいです。私も日本や西側先進国が全て共産主義なら、5分の1はあり得ないとは言いません。価格は国が決めればいいのですから何とでもなります。
逆にそれをやるから共産主義は発展しないのです。中国は別ですよ。資本主義経済のメリットだけは取り入れています。デメリットは無視する、あるいはない事にするから西側と摩擦が起きるのです。
つまり公正、公平でない資本主義は格差しか生まないし、技術も身に付きません。公正、公平、自由が担保されるから資本主義が成り立ち、競争が生まれ技術力が上がって発展するのです。
この場合政府の介入は国民(消費者として)を守るため、に限定すべきです。そういう意味では規制は必要です。何でもかんでも撤廃すればいいというものではありません。
という事は、国民のデメリットにならない範囲でならいくらでも自由に拡大が出来る訳です。拡大イコール付加価値アップ、資本増加です。その場合、付加価値分だけ資本が増える必要があります。
経済の基本ですが、お金は誰からも奪えません。自分で稼ぐしかないのです。ところが手持ち資金がゼロなら何も出来ません。そこで金融が役に立つという訳です。
銀行から借りて設備を作り、物を生産します。それを売ったお金で支払をし、給料を払い、返済に充てる訳です。つまりまず借金ありきなのです。GDPで言うところの民間設備投資です。
だから仕事をすればする程(設備を増やせば増やす程)生産と借金=資産が増えて行く訳です。よく拡大最生産と言われますが、右肩上がりが資本主義の基本、絶対原則です。
この金融資産を減らさないためには借金をし続ける必要があります。企業が増えて、その各社の借り入れ残高が返済額を上回りどんどん増える事によって企業と国民の金融資産が増えるのです。
よくものがあふれる飽和状態になったら成長はお終いと言って憚らないエコノミストがいますが、残念な人達です。そんなんじゃ資本主義は欠陥システムだと言っているようなものです。
全くそんな事はありません。付加価値は無限に上がっていくのです。その上がった分の投資がある=資産が増える、ので価格もアップしていくのが正常な状態と言えます。
もしアップしなければ為替で調整されます。それが日本の場合、円高不況でした。つまり他国より付加価値の高いものを他国並、あるいはそれ以下の価格で売ると貿易黒字が増えます。
(所得が増えなくて経済成長する筈がない。ところが企業は収益を伸ばして来た。)
その黒字を円に替えた時点で円高になるのですが、円高になっても現地販売価格を維持したいがために人件費をケチると国内が不況になるのは自明です。だから円高になれば現地価格を上げなければいけなかったのです。
尤も、それを妨害したのが日銀と財務省、金融庁でした。90年以降、日本を借金するのが難しい体質の国に変えたのです。詳しい話は省きますが、では付加価値が上昇しているにも拘らず価格がどんどん下がる場合を考えてみます。
その場合当然ながら売り上げが減ります。売り上げが減ると設備投資が出来難くなり、給料も下げるしかありません。返済もままならなくなります。明らかな自殺行為です。
これを量でカバー出来ると考えるのが長森会長の考え方なのでしょうが、果たしてそうでしょうか? 自動車は世界で既に年間1億台も売っています。これが2030年に5倍の5億台になれば確かに売り上げは維持出来るかもしれません。
しかし価格の下げ圧力がかかる中、生産量を増やすのは至難の業です。新しい付加価値も創れません。新しい付加価値を生むには莫大な追加の投資が必要です。
(製造業が就業者を大きく減らしたのは、生産性を上げたからではなく、海外へ生産拠点を移したからだ。これでは悪循環しか生まない。)
また、量産のための設備を作るには莫大な資金が必要なので、いくら生産性を上げても価格を下げるには限界があります。これまで物の価格が大きく下がったのは主に人件費の安い途上国が生産を受け持ったからです。
先進国が国内生産を続けていたなら、価格はどんどん上がっていた筈です。それが正常な姿と言えます。その場合為替の変動は起きません。
そのためには政府が上がっていく付加価値に対し、資金が遅滞なく行き渡っていく政策を採らなければいけないのです。日本の場合は逆をやったのでデフレ不況に陥りました。
でもそれでは価格競争力がなくなって世界で売れないじゃないかと言われるかも知れませんが、それで売れないような商品をムリして売る必要はありません。ムリをすれば皺寄せが必ずどこかに来ます。それが今の日本じゃありませんか。
想定より長くなりましたので、この続きは次回とさせて下さい。
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