自動車

2020年11月24日 (火)

クルマの価格が5分の1になる日(後編)


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 遅くなりましたが前編の続きです。

クルマの場合、現実にはいくら生産台数が増えても価格は下がっていません。むしろ上がっています。なぜなら人件費の安い途上国では、そんな最先端の高付加価値創造物を作れないからです。

先進国はと言うと、生産拠点を途上国に移して価格を下げる努力はしましたが、それでも抑えきれない程の高付加価値創造=莫大な投資があって簡単には下がりません。

生産拠点は出来ても重要部品は日本や他の先進国からの輸入に頼るしかないのも下がらない理由の一つです。さらに途上国の賃金も海外からの直接投資等によって上がって行きます。従って長期に渡って安い人件費を都合良く利用する事など不可能なのです。

日本の軽自動車で言えば、50年前は30万円ちょっとでした。それが50万になり100万になり、今では200万円近いものもあります。ボディが多少大きくなったとは言え6倍の上昇です。

高級車も30年前なら300万円程でしたが、今では国産でも500万円以上はざらで1000万円を超えるものもあります。それは付加価値が量、質共に激増したからに他なりません。

その付加価値は今後CASE 化が加速するにつれて増々増大します。さらに環境問題絡みの政治問題としてもどう転んで行くのか予測困難な状況になりつつあります。それはこれまでと違って桁違いに大きい不確定要素なのです。

パリ協定を持ち出すまでもなく、温暖化問題があり、環境汚染も限界に達するのは時間の問題でしょう。貴重な資源をこのまま消耗させていいのかという問題もつきまといます。

尤も、それらは政治的に都合よく利用され、日本のような真面目な国は往々にして割を食う事になるのです。私はここで何度も言っていますが、CO2温暖化ガス説を信じている訳ではありません。

むしろ疑わしいと思っています。エネルギー資源も簡単には枯渇しない筈です。それでも今回の菅総理の50年までにCO2排出ゼロの決定に関しては一定の評価をしてもいいのではと思い始めました。

但し、その場合でも原発ゼロという選択肢はないと思っています。再生可能エネルギーだけではいかにも心許ないからです。従って現存する原発をフルに活用するしかないのですが、それなら可能性は十分あり、日本にとって面白い展開になるかもしれません。

なぜそう思ったのかと言いますと、ミライを見たからです。いえ、タイムトラベルの話ではありません。トヨタのFCV(燃料電池車)新型ミライが全くイメージを変えて登場したのです。

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(全体としてはシンプルで好感が持てるが、虫の腹のようなRグリルは好きになれない。)

一見、クラウンクラスの普通のクルマに見えます。しかもトヨタにしては珍しくスタイリッシュなのです。プリウスのように奇をてらっていないし、カムリの様な得体の知れない気持ち悪さもありません。

それは真面目に未来のクルマとして考え始めた証です。早速資料集めをしました。実車もお台場のメガウェブに見に行ったのですが、それが写真以上に普通なのです。安心したと同時にやや拍子抜けしました。

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(このアングルが一番普通で良く見える。実物は意外にデカい。)

内装はと言うと、これまたこれまでのトヨタ車とは趣が違います。変にデザインっぽいところがないのです。機能本意でシンプルにまとめた感があり好感が持てます。

ただ、カラーリングのセンスは今一でスイッチ類やパッドの質感も含め、英国車は疎かジャーマン3にも劣ります。なかなか垢抜けませんね。そこはもっと本気でやって欲しいところです。

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(トヨタらしくなくスッキリしているインパネ、サイドミラーはカメラ化して室内に収めて欲しかった。)

さらに、圧縮タンクを3個に増やしたためにトンネルの出っ張りが大きく、後席の中央は大人はムリかも知れません。さらにそのタンクを守るためにサイドシルの高さと幅がかなりあって、乗降性に多少難があるのも事実です。

それでもDセグ車よりは広い感じがするので、許容範囲と言えるでしょう。全般的に言える事は凄い高級車というのではなく、近未来の真面目なセダンと言う感じでしょうか。

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(後席の下にも三個目のタンクが横置きで搭載される。二次電池はリチウムイオンでその上。)

さて、性能はと言うと、これが素晴らしいのです。航続距離が燃費新基準で850キロと大幅アップ、ハイブリッド車並になりました。水素の充填時間も3分と言いますからガソリン車以上で、EVとは比較になりません。

加速性能に関しては大容量バッテリーを搭載するテスラには敵わないようです。それでもEセグセダンとしては標準的と言えそうなので、クルマの性格上問題ないと思われます。

そんな事より静粛性や乗り心地、操縦安定性、旋回性能等ではレクサスLSをも凌ぐと言うのですから、凄い話ではないでしょうか。エンジン振動がない事、50対50の重量バランス、あるいはタンクを防御するため強度を上げたボディ剛性が奏功していると言います。

それによって少し重くなった車両重量も、悪い方に作用している訳ではなさそうです。むしろ重厚な乗り味と評価する人もいます。いずれにしても評論家が絶賛するこのクルマ、是非近い内に試乗して真価を試したいです。

問題は水素ステーションの数ですが、日本には既に130カ所以上あり、状況によっては今後加速度的に増えるかもしれません。航続距離が延びた事もあって、使い方によっては苦にならない場合もあり得ると思われます。

逆に言えば問題はそこしかないのです。肝心な水素の値段ですが、航続距離を加味すれば、現状ハイオク並と言います。供給側は今は多少無理しているのかも知れませんが、菅さんの今回の発言で劇的に安くなる可能性が出て来たという訳です。

再生可能エネルギー発電は自然頼みで非常に不安定です。そのため需要の倍くらいの供給力を持つ必要があります。この余剰電力を有効活用出来るかどうかが再生可能エネルギー発電の鍵だったのです。

ところが、その余剰電力を使って液化水素を生産するなら問題が一気に解決します。逆に電力が足りなくなれば、その蓄積された水素を電力に戻せばいいのですから無駄がありません。

肝心な時には使えない等、制約が大きいEVへの蓄電とは比較にならない程効率的です。となると後は魅力的な商品の登場を待つのみですが、そこに新型ミライが現れたという訳です。

トヨタは運がいいのか、あるいは読みが鋭いのか?分かりませんが、このミライがある程度成功すれば、既に計画のある商業車に加え、バリエーションが充実して来ます。一般的な乗用車だって商品化は十分あり得るのです。

ただ、車両価格という点では、EVと違って重厚長大的性格故そう簡単ではないと言えるでしょう。ましてコモディティ化して家電屋さんが作るなんて事はあり得ません。

従って5分の1になる日は永遠に来ませんが、価格はむしろ高くてもいいのです。普通の人が買えない程高いのは問題がありますが、クラウンサイズのFCVが500万円なら十分ではないでしょうか。

それで環境問題が解決するのなら安いものです。途上国は買えない?そんな事は知りません。(笑)地球のために自分たちで努力して、自分たちのコストで作ればいいのです。それが出来ないならクルマに乗るのは諦めてもらうしかありません。

いずれにしても、本命と見られていたBEB(バッテリーEV)の優位性が一気に失われかねない状況が出現したと言えるでしょう。FCVは安全性他で問題山積のEVよりはるかにポテンシャルがあります。何よりBEBと違って持続可能です。

これでまた欧米勢が大慌てで後追いをするか、ずるくルールを変えるか?まあ、何か嫌がらせをして来るのは間違いありません。(笑)

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2020年11月18日 (水)

クルマの価格が5分の1になる日(前編)


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 日本電産の永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は10日、第22回日経フォーラム「世界経営者会議」で講演した。世界的な環境規制強化を背景に電気自 動車(EV)が普及し、「2030年に自動車の価格は現在の5分の1程度になるだろう」と述べた。EVの核はモーターとバッテリーであるとして、「高額な バッテリー価格は技術革新で変わる」と話した。

 今日は日本電産の永守重信会長が2月の時点で言っていた内容(上記記事)を先日のWBSでもまた繰り返したので、前にも書いたかも知れませんが、電動化に関する新しい情報もあるので再度検証します。

結論から言いますが、はっきり言って高くなる事はあっても5分の1まで下がるなんて事は考えられません。凄く簡単な理屈ですが、それが分からなくても大企業のトップは務まるようです。

そもそもそんな事になったら、モーターはカーメーカーにいくらで買ってもらえるのでしょうか? モーターだけ特別待遇はあり得ないのです。他の部品と同じく5分の1近辺と考えるのが妥当でしょう。

そうすると売り上げも5分の1になります。ところが本人2030年には今の1兆5千億円を10兆円にしたいと言っているのです。???凄い矛盾ではないでしょうか。

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(日本電産の優秀な車載用モーター、中国に売り込みをかけているが、5分の1の値段でも売るのだろうか。それをやったら経営者としてはどうしようもなく、日本人従業員の敵と言えるだろう)

今の売り上げが仮に車載部品だけとすれば売り上げも5分の1の3千億円になります。10兆円にするには今の33倍もモーター他の部品を売らなければならないのです。いくら世界が相手だと言っても絶望的な数字です。

まず資本主義経済の仕組みを知ってもらいたいです。私も日本や西側先進国が全て共産主義なら、5分の1はあり得ないとは言いません。価格は国が決めればいいのですから何とでもなります。

逆にそれをやるから共産主義は発展しないのです。中国は別ですよ。資本主義経済のメリットだけは取り入れています。デメリットは無視する、あるいはない事にするから西側と摩擦が起きるのです。

つまり公正、公平でない資本主義は格差しか生まないし、技術も身に付きません。公正、公平、自由が担保されるから資本主義が成り立ち、競争が生まれ技術力が上がって発展するのです。

この場合政府の介入は国民(消費者として)を守るため、に限定すべきです。そういう意味では規制は必要です。何でもかんでも撤廃すればいいというものではありません。

という事は、国民のデメリットにならない範囲でならいくらでも自由に拡大が出来る訳です。拡大イコール付加価値アップ、資本増加です。その場合、付加価値分だけ資本が増える必要があります。

経済の基本ですが、お金は誰からも奪えません。自分で稼ぐしかないのです。ところが手持ち資金がゼロなら何も出来ません。そこで金融が役に立つという訳です。

銀行から借りて設備を作り、物を生産します。それを売ったお金で支払をし、給料を払い、返済に充てる訳です。つまりまず借金ありきなのです。GDPで言うところの民間設備投資です。

だから仕事をすればする程(設備を増やせば増やす程)生産と借金=資産が増えて行く訳です。よく拡大最生産と言われますが、右肩上がりが資本主義の基本、絶対原則です。

この金融資産を減らさないためには借金をし続ける必要があります。企業が増えて、その各社の借り入れ残高が返済額を上回りどんどん増える事によって企業と国民の金融資産が増えるのです。

よくものがあふれる飽和状態になったら成長はお終いと言って憚らないエコノミストがいますが、残念な人達です。そんなんじゃ資本主義は欠陥システムだと言っているようなものです。

全くそんな事はありません。付加価値は無限に上がっていくのです。その上がった分の投資がある=資産が増える、ので価格もアップしていくのが正常な状態と言えます。

もしアップしなければ為替で調整されます。それが日本の場合、円高不況でした。つまり他国より付加価値の高いものを他国並、あるいはそれ以下の価格で売ると貿易黒字が増えます。

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(所得が増えなくて経済成長する筈がない。ところが企業は収益を伸ばして来た。)

その黒字を円に替えた時点で円高になるのですが、円高になっても現地販売価格を維持したいがために人件費をケチると国内が不況になるのは自明です。だから円高になれば現地価格を上げなければいけなかったのです。

尤も、それを妨害したのが日銀と財務省、金融庁でした。90年以降、日本を借金するのが難しい体質の国に変えたのです。詳しい話は省きますが、では付加価値が上昇しているにも拘らず価格がどんどん下がる場合を考えてみます。

その場合当然ながら売り上げが減ります。売り上げが減ると設備投資が出来難くなり、給料も下げるしかありません。返済もままならなくなります。明らかな自殺行為です。

これを量でカバー出来ると考えるのが長森会長の考え方なのでしょうが、果たしてそうでしょうか? 自動車は世界で既に年間1億台も売っています。これが2030年に5倍の5億台になれば確かに売り上げは維持出来るかもしれません。

しかし価格の下げ圧力がかかる中、生産量を増やすのは至難の業です。新しい付加価値も創れません。新しい付加価値を生むには莫大な追加の投資が必要です。

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(製造業が就業者を大きく減らしたのは、生産性を上げたからではなく、海外へ生産拠点を移したからだ。これでは悪循環しか生まない。)

また、量産のための設備を作るには莫大な資金が必要なので、いくら生産性を上げても価格を下げるには限界があります。これまで物の価格が大きく下がったのは主に人件費の安い途上国が生産を受け持ったからです。

先進国が国内生産を続けていたなら、価格はどんどん上がっていた筈です。それが正常な姿と言えます。その場合為替の変動は起きません。

そのためには政府が上がっていく付加価値に対し、資金が遅滞なく行き渡っていく政策を採らなければいけないのです。日本の場合は逆をやったのでデフレ不況に陥りました。

でもそれでは価格競争力がなくなって世界で売れないじゃないかと言われるかも知れませんが、それで売れないような商品をムリして売る必要はありません。ムリをすれば皺寄せが必ずどこかに来ます。それが今の日本じゃありませんか。

想定より長くなりましたので、この続きは次回とさせて下さい。

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2020年9月23日 (水)

BEV(バッテリー式EV)に未来はあるのだろうか?


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 先日ある親しい友人がゴルフの時に、新しいプジョー208のEVに興味があるという話をしていました。その時は詳しい話が出来なかったので、ブログ記事にて私の個人的見解を述べます。

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(プジョーe208 オシャレでスポーティなクルマだが、EVとしての性能は未知数)

1)リセールバリュー
日産リーフなどは昔よりかなり良くなったようですが、将来的にはあまり期待は出来ません。特に二次電池の技術革新(全固体電池など)次第では暴落する危険性があります。

パリ協定離脱のトランプ大統領のちゃぶ台返しもバカに出来ません。CO2地球温暖化説自体がひっくり返る可能性があるのです。そうなるとあっという間にEVは消えます。(笑) 

2)バッテリー問題
懸念されているバッテリーの寿命自体は使い方にもよりますが、問題のないレベルになっているようです。但し、交換の場合は208でも100万円前後はかかると思われます。

このバッテリーの価格は下がる要素がありません。そもそも量産に向かない構造があり、リチウムなど原料のリサイクルも確立されていないのです。埋蔵量にも限界があるし、特にコバルトは今でも供給不足です。代替原料が見つかるまではコストは上がり続けるでしょう。

3)航続距離のウソ
208は満充電で403キロとなっていますが、これは使い方次第で全く変わります。ルノーの場合(中身は日産と同じ)は暖房を使う冬は半分だと言っています。

4)急速充電の罠
遠出の場合、どこかで充電する必要が生じますが、急速充電では80%までしか充電出来ません。それ以上は急速ではなくなります。なぜならバッテリーが劣化するからです。

同じ理由で30%程度は残す必要があります。という事は外で充電する場合は能力の50%しか使えないのです。冬には実質25%になります。
それはプジョー208で100キロ程度を意味するのです。

5)環境汚染問題
EVはゼロエミッションと言われますが、電源次第ではHVより劣ります。例えば排ガス対策のための浄化装置を故意に外すと言われている石炭発電がメインの中国では、EV一台とディーゼルバス一台が同等の大気汚染を引き起こすと言われています。

日本で東電などの電力を使って充電する場合、CO2に関してはやや優位と言えるでしょう。しかしながらNox Sox に関しては下手をすればガソリン車以下かもしれません。もちろん街中を汚さないという点ではアドバンテージがあります。

6)公害輸出
リチウム産出国はオーストラリア以外はボリビアなど南米に集中し、途上国が多いので環境より経済を優先します。採掘による土壌汚染は深刻だと言われています。その他倫理的問題も色々あるようです。

さらに先進国の横暴か、不利な条件で契約するので、現地に落ちる筈の利益の大半は持っていかれると言うのです。これでは途上国はいつまで経っても豊かになれません。

7)移動体としての基本概念から逸脱する
EVのバッテリーはパワーの源泉であり、内燃機関車の燃料タンクに相当します。従ってBEVの場合、長い距離を速く走るためには多く積まなければなりません。

それは車両重量増とトレードオフの関係にあるので、移動体として矛盾が生じます。自動車の場合、動的性能をアップするためには基本的に軽量化が至上命題です。

そのために設計者は1g単位で日夜戦っているのです。それがいきなり200キロ単位でドーンと増えるのではやってられません。(笑)さらにガソリンタンクと違って電池残量が減っても軽くなりません。

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(テスラモデル3、こんな味気ないクルマに500万円も払うなんて信じられない/笑)

この悪い連鎖を逆手にとったのがテスラです。桁違いのバッテリーを積んで、やたら速いクルマを作っていますが、環境に優しい筈のエコカーとしては疑問符が付きます。

LCA(ライフサイクルアセスメント)で見れば大容量バッテリーを積むコンセプトは明らかに不利だと言わざるを得ません。それを誤摩化すように、移動体とは直接関係のない付加価値をつけまくります。

どうせ高価になるなら思い切り高価にして、何でも付いている高級車にしてしまえ、という乱暴なやり方はいかにも南ア出身の白人、イーロン・マスク氏らしいのですが、短絡的であまり知的な感じはしません。

さらに利益がなかなか上がって来ないので、薄利多売をこの高価格車でやろうとしています。一体500万円以上のクルマを何台売るつもりなのか、気は確かかと言いたくなります。(笑)

しかも、それでいてフルスロットルでは1時間も走れないのです。EVは空気抵抗にはからっきし弱いのと、電池が連続高出力放電に耐えられないので高速走行は苦手なのです。

もちろん時速100キロ程度なら問題ありませんが、それでもガソリン車よりは劣ります。ポルシェタイカンでさえ同じ理屈でアウトバーン向きではありません。分かり難い事この上ないです。

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(ポルシェよ、お前もか。。アウトバーンで電欠なんてシャレにならない。頭は大丈夫か?)

ガソリン車の場合はエンジンのダウンサイジング化と燃費向上で、むしろ軽くする事が可能です。さらに理論上はフルスロットルで燃料がある限り走れます。昔アウトバーンで時速200キロ巡航をした時に往復400キロを無給油で走りました。

8)身近な話
私の親戚が数年前にリーフを買いましたが、ゴルフに行く途中電欠を起こしました。それ以来怖くて暖房が使えないと言っています。(笑)家族からはブーイングの嵐です。

余程頭に来たのか、補助金の縛りがあるにも拘らず、途中で売ってアコードハイブリッドに替えました。こちらは一回の給油で1000キロ以上走ります。

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(う〜〜ん。中身はいいんだけど、どうもあか抜けない。まさかわざと?)

このクルマは80キロ以下を低速に強いモーターで、それ以上は効率のいい専用のアトキンソンサイクルエンジン直結で走るので大変合理的です。それでいて車両重量は1.6t 以下で、ジャーマンスリーのDセグメント・ガソリン車よりかなり軽いのです。

いかがでしょうか。私は将来的にはEVの時代はあり得ると思っていますが、余程の技術革新が必要です。例えば走りながら道路からの非接触充電とか・・BEVは、残念ながら発展途上であり、商品として中途半端だと言うしかありません。

例えエネルギー密度がリチウムイオン電池比で二倍の全固体電池が実現しても不十分だと思われます。それよりは現実的で、ほぼ無限のポテンシャルがあるHVがお薦めです。

欧州は全力を挙げてEV化への道を突っ走っていますが、また似非クリーンディーゼルと同じ轍を踏まないか心配です。日本のジャーナリストも彼らのプロパガンダに乗せられて日本叩きに余念がありません。日本にだけ全ての技術があるにも関わらずです。

なぜかコロナ騒ぎと似ています。冷静に現実を見つめれば、何が今出来る最善の策かが見えて来る筈です。それは自動車メーカーだけの話ではなく、エネルギートータルの問題であるし、人類の生き方の問題でもあります。

パリ協定を盲目的に受け入れる前に、日本人、いや地球人として考えなければならない事がある筈ですが、あくまでも現状の延長としか捉えられない想像力では貧困化あるのみです。

 

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2020年3月27日 (金)

EV vs HV (後編)

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 前回からの続きです。クリーンディーゼル車に比べればEVは圧倒的に構造が簡単です。これなら何とかなるかもしれないと有象無象が飛びついても無理はありません。ところがそこには大きな落とし穴が待っていたという訳です。

まずEVは価格の点やメンテの点でも途上国向けでないのは明らかです。中国だって補助金とナンバープレートの優先的配布で急増させてきましたが、今後はそうはいきません。補助金は既に打ち切りでEV熱も冷めています。

先進国、特に欧米も政府の過保護とも言える後押しがあって何とかしてきましたが、何百万台もとなれば話は別です。他の産業とのバランスもあって無制限に支援は出来ません。

そもそも現システムでのEVなんてとても持続可能とは言えないビジネスモデルだったのです。それを知っていた日本企業のお尻が重かったのは当然と言えます。

欧州勢はディーゼルの嘘がバレて慌ててEVに飛びつきましたが、EUにはサプライチェーンさえ整備されていないのです。裾野を育てるのは生易しい話ではありません。そのため取りあえず中国や韓国を当てにしたと言う訳です。

しかしそんな事でブランド価値が維持出来ると本気で考えているのでしょうか。安全策として日本にもアプローチし、まんまと日欧EPAを締結しましたが、部品に関しては即刻関税ゼロというところに焦りが伺えます。

完成車は7年後にならないとゼロにはならないにも関わらずです。そういう付け焼き刃的その場凌ぎではいずれ立ち行かなくなるのは自明です。欧州は目論見通りにEVで食っていく事など出来やしないのです。そこは断言出来ます。

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(ホンダのEV こんな冗談としか思えない車が300万円以上だなんて、しかも200キロも走れない訳です。)

とは言ってもコミューターなどの小さな物や地域限定、あるいは公共トランスポーターとしては生き残るでしょう。従って一般的乗用車はガソリンエンジン車とそれをベースにしたハイブリッド車がメインという事になります。

法規がどうであろうが、それしかないのですからその方向に動くしかありません。でなければ産業自体が崩壊してしまいます。途上国に関しては熱効率がさらに上がった次世代ガソリンエンジン車&マイルドHVがメインになるのではないでしょうか。

その結果、EVの妥当な棲息空間は世界で10%にも届かない事になります。EVとガソリン車の欠点を併せ持つ、プラグインHVなどという中途半端な商品も消える運命でしかありません。

それをやるくらいならEVベースでEVの欠点を補うレンジエクステンダーで十分です。よほど分かり易いです。BMWのi3が良い例と言えるでしょう。

次に石油の価格ですが、今後も上がったり下がったりを繰り返すのは生産国の都合もあって致し方ありません。それでも莫大な埋蔵量があるのは既定の事実ですから基本的には下がっていくものと思われます。日本の場合はそれよりもガソリン税が問題です。あまりに高過ぎます。

軽油程度にまで下げたとしても咎められる理由はありません。さらにその上に消費税がかかるという二重課税という国家的インチキもやめるべきです。先進国として恥です。

そういう点も含め税制の抜本的見直しは必須と言えます。もちろん既得利権との戦いになりますが、国家財政の嘘も含め、もうそろそろ何とかしない事にはどうにもなりません。

次にトヨタですが、中国天津への投資を2月29日に決めたようです。えっ(笑)頭おかしいです。新型コロナ騒動の最中、経営者はとてもそんなモチベーションにはならないと思うのですが、もし本当に投資するようなら厳しい未来しかありません。本当にコモ被りになってしまいます。(笑)

私の考えですが、前回も言いましたように、このコロナ騒ぎが首尾よく収束したとしても今後はグローバル化の流れはかなり抑制され内需中心の考え方が主流になっていくと思われます。それから取り残されるメーカーは、それはそれで自己責任でやって下さいと言うしかありません。

今回の新型コロナ騒動で間違いなく世界は大きく変わります。一度こういうリスクを知ったなら、怖くて海外に投資なんて出来ません。その代わり国内に投資すればいいのです。それが生産性の向上に繫がっていきます。

人が足りなくても、海外からはおいそれとは呼べない状況ですから、そうならざるを得ません。日本にとって正に良い事尽くめなのですが、そこに気がついている経営者は今の段階では殆どいないのではないでしょうか。これに関しては国が方向性を示すべきは明らかです。

最後に温暖化と温室効果ガスと言われるC02の問題ですが、これは高々100年くらいのデータであれこれ言えるようなものとも思えず、中期的にみれば寒冷化だってあり得ると思っています。実際長期的には氷河期に向かっている訳ですから、温暖化よりそちらを心配すべきです。

CO2温暖化犯人説にも否定的な専門家の見解が多くあり、確定しているとは言えません。これからの時代、そういういかがわしい説に惑わされないようにする事が肝要です。今後エネルギーに対する常識は大きく変わり得ます。

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(日本の火力発電によるSOxとNOx の排出量は世界最低レベル)

日本の場合は化石燃料で発電しても、CO2はともかく、排出するPM、SOxやNOx はかなり抑える事が可能です。石炭でさえ世界トップレベルにあって2030エネルギーミックス計画が達成出来れば、当面それで十分だと思われます。

もちろんパリ協定の、根拠の薄いCO2削減目標は達成出来ませんが、万が一それで地球がどうかなったとしても日本の責任ではありません。米中や途上国の問題であり、日本はただ範を垂れるだけです。

ちょっと竜頭蛇尾かも知れませんが、EV とHV どちらが近い将来の主役かご理解いただけたと思います。万が一にもEV全盛となったなら、そこには大きな政治の力が働いたとしか思えません。

誤解なきよう言っておかなければいけませんが、私はEVを毛嫌いしている訳でもポジショントークをしている訳でもありません。然るべき時が来ればEV全盛は当然あり得ると思っています。

その第一条件としては、電車のように車外からの充電が可能になる事です。非接触で道路から電力の供給を受けるならEVは華麗に蘇ります。重たい電池を積まない訳ですからポテンシャルと魅力が倍増するのは明らかです。

何よりコストと走行距離の問題が解決するのですから鬼に金棒です。そのためには全国津々浦々にインフラ整備が必要ですが、巨額公共投資をすれば十分可能と言えるでしょう。

少しだけ電池を積んでラストワンマイルは自力でと言うなら、もっと実現性は高くなります。それはそれで楽しい未来ではないでしょうか。

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2020年3月23日 (月)

EV vs HV (前編)

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 今日は読者の方からのご質問にお答えします。最近さぼっているので自動車の話もとんとしていませんが、その間、特に何かが大きく変わったという事はありません。もちろん今回の新型コロナ騒ぎは抜きにしての話です。

それはそれで大きく世界が変わるかも知れないのですが。その話はもう少し時間が経ってみないと分かりません。日本に限って言えば夏までに収束してもおかしくないし、あるいは不測の事態に発展しないという保証もありません。

専門家が言うには日本のピークはこれからだそうです。欧米の悲惨さをみると説得力があります。日本だけがこのままというのはないのではないでしょうか。

いずれにしても世界規模で俯瞰するならば、最低一年を通してみる必要はありそうです。そういう意味では、現状の話というのは大して意味を持たないかもしれません。

従ってこの記事はコロナ後の世界が大きく変わらず、原状復帰が90%以上という楽観的前提で書きます。本当にそうなる事を祈らざるを得ません。

まず電気自動車関連ですが、結論から言いますとEVが今のガソリンエンジン車のように世界を席巻する事はあり得ません。少なくとも二次電池を積んで走るEVシステムという前提ではそう見ています。

その根拠は山ほどあって整理するのが困難な程です。専門家ではないので遠い将来の事は分かりませんが、まず二次電池には限界がありそうです。

基本的にはメーカーが巨額投資を嫌がります。未だ固定されたデバイスではなく、いつ何時革新的なものが出て来るか予測不能という点が悩ましいところです。

従って急速に伸びる需要には対応が難しいです。さらに向こう10年くらいで見てもリチウムイオン電池では何の解決にもならないし、大手がこぞって開発している全固体電池でも圧倒的能力不足と言わざるを得ません。

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(ポルシェよ、お前もか、と驚きを隠せない超弩級 EVスポーツカーのタイカン、失笑してしまうのは私だけ?)

全固体でもハイブリッド車との比較で、走行距離では実質半分がいいところです。強引に沢山の電池を積んで走行距離をカタログ上500キロ程度まで伸ばしているEVもありますが、これこそ本末転倒、愚の骨頂と言えます。自動車の本質が分かっていません。

今走っている車の大半は重量との戦いの成果と言っても過言ではないのです。設計者は日夜グラム単位で軽量化に血道を上げています。コストと重量がその商品の存在価値を決めるとさえ言えるでしょう。

軽量化は燃費や走行性能向上には切っても切れず、耐久性にも影響します。従って重量増がエコに反する事くらいは小学生にも分かる理屈ですが、テスラの経営陣はどうも理解していないようです。

闇雲に車をデカくし高コスト高付加価値化に励んでいます。本当に地球の事を考えるならミニマム指向、つまりマイナスしていく考え方で設定すべきは明らかです。

電力爆食いで際限なく電力需要を増やしていくビジネスモデルに勝算などある筈がありません。それでトヨタ並の大企業にするなどと夢を見ている訳ですから頭がおかしいです。

と言うか、ニッチ狙いならあり得たビジネスモデルを中途半端に安い「モデル3」を上市して量をとろうとしたのが間違いでした。そうは問屋は卸しません。

今は時価総額がバブル的に高いので誤摩化せていますが、実力相応の株価になった時が企業としての正念場でしょう。私はこういうヤクザな企業は近い将来に消える運命にあると見ています。

昔のような国内好事家向けのニッチメーカーに戻らない限りその運命しかありません。その点は欧州車も同じです。ジャーマンスリーの御三家と言えど高級車の市場は限られます。

そもそものEVの基幹部品である二次電池の材料、リチウムそのものが有限で、今分かっている埋蔵量ならすぐに底をつくのは自明です。とてもほぼ無尽蔵と言われる石油には勝てないのです。

従ってコストの点でも不利な戦いを強いられます。さらにリチウムイオン電池は工業製品としては例外的に量産効果が出難い商品と言われています。リサイクルシステムさえ確立されていません。

従って不完全と言えるこの商品を前提に量産を考えるなんてあり得ないのです。余程人件費の安い国で作るなら話は別ですが、品質に神経を使う製品故にそれも限界があります。

もっと悪い事にはリチウムの採掘は産出国を汚染しているという事実があるのです。リチウムだけでなく他の金属の採掘も含め土壌汚染、水質汚染等、掘れば掘る程環境汚染が進みます。

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(ボリビアのウユニ塩湖は世界の総埋蔵量の50%が眠ると言われる世界最大のリチウム鉱床である。)

EV生産国では問題がないかも知れませんが、先進国のエゴで途上国を汚染してしまっては元も子もありません。地球トータルで考えるべきという視点がない事に驚かされます。

EVを使用する先進国にもまた違った問題が発生します。肝心要の電力をどうやって作るかによって全く違う結果が導き出されるのです。今までのような火力発電で石炭を主に使う場合などは、国によってはガソリン車より汚染が酷くなる事もあり得ます。

少なくとも歴史が20年以上と長く低価格化が進んだハイブリッド車には一定の安定感があり、さらに同じ延長線上にもっと上を狙えるポテンシャルもあるのです。

それが分かっている欧米メーカーは自分たちでは上手く作れないストロングハイブリッド車で勝負をする気はありません。そこで何とか引きずり下ろしたいというのが本音なのです。

ところがこれから増々厳しくなる各国の排ガス規制を見た時に選択肢はそうはありません。欧米勢は多くの排ガス浄化装置に依存せざるを得ないディーゼルエンジンでは成り立たない事を知っているのでEVに向かいます。

デンソーがリードするコモンレールも燃料噴射の圧をどんどん高くせざるを得ないし、日産ディーゼルが大型のために開発したNOx除去装置の尿素SCRも小型車にはコストやメンテナンスがネックになります。

他のデバイスも同じで、とても小型車が堪えられる装備ではありません。そもそも重くてデカく高いディーゼルエンジンそのものが小型車には向いていないのですから何をか言わんやです。

当然欧州メーカーも全て承知の上で、行きがかり上繋ぎでしかない今は採算度外視して作っているものと思われます。かなり内情は厳しいのではないでしょうか。

長くなりました。続きは出来る限り早くアップする予定です。

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2019年3月15日 (金)

一見成功したかに見える、テスラというビジネスモデル(続編)

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 前回からの続きです。
簡単に電動化、EV化と言いますが、充電のための電力以外にもクリアすべき問題は山積しています。

1)肝心要なバッテリーに必要とされる天然資源の供給は十分見通せるのか、

2)バッテリーをリサイクルするための有効なシステムは構築されたのか、

3)大気汚染やCO2排出量削減が、EV化によって満足のいくものになるのか、

見えない点が多過ぎるのです。

まずバッテリーに必要な天然資源、リチウムやコバルトですが、致命的に足りないと言われるコバルトに比べれば、リチウムの埋蔵量は相当量ある事が分かっています。

コバルトを使わない技術も一部で確立されました。しかしながらリチウムの供給の方は全く目処が立っていません。急に沢山掘れと言われても追いつかないのです。

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(需要とほぼリンクしているリチウムとコバルトの価格、欧州勢が本格参戦すれば下がる事はないだろう。)

そのため中国がEV増産を始めた15年頃からリチウムの価格が急上昇し始めました。元々材料費が60%以上を占め、量産効果が薄いとされるリチウムイオンバッテリー、価格に関しては今以上に下がる要素は殆どありません。例え全固体電池が実用化に成功したとしても、その効果は限定的と言えます。

中国では既に安いバッテリーを製造しているではないかと言われるかも知れませんが、この国は政府がバックにいるので参考になりません。そもそも重要部品の大半はリチウムイオン電池の発明国、日本が抑えている訳ですから、中国以外の国で低価格を実現する事はあり得ないと言えます。

次にバッテリーのリサイクル技術ですが、未だ確立されていません。という事はリサイクル前提でバッテリーを作れば作る程価格が上昇します。今でさえバカ高いというのに、それで大衆車クラスの量産が成り立つとは思えないのです。

最後の環境問題に関しては、もっと悲惨です。今既に一部の地域では最悪に近い状態だと言うのに、今後新興国の電力需要増加に加え、さらに電動車分が急激に増えて来る事は避けられない状況です。

その増加分に関してはゼロエミッションにする以外、地球をクリーン化する事などあり得ない筈ですが、原子力発電に足枷が嵌っている今、その実現は非現実的と言うしかありません。

地球規模で考えると、人類は既に車など持てる状態ではないのです。酷くまじめに考えるとそういう事になります。しかし、残念ながら新興国や発展途上の大国(中国やインド)、あるいは覇権を維持したいアメリカなどは、自国の都合しか考えません。

PM2.5 などで環境汚染が酷い中国では石炭から天然ガス発電へのシフトが進んでいるとされていましたが、最近の石炭火力発電監視機関(米NGO)の報告では、中止されていた石炭発電所の建設が再開され、止めた筈の従来の石炭発電所も再稼働していると言います。

つまり経済優先で環境対策は逆行しているという恐ろしい現実がそこにあるのです。もう一つの発展途上大国インドはあまり騒がれていませんが、中国以上に酷いと言われています。

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 世界の石炭火力発電所13000以上を追跡している米NGOのCoalSwarmが、Planet Labs の衛星画像を使った分析によると、中国国内では、新設あるいは再稼働準備中の石炭火力発電所が合計46.6GW分に達してることがわかった。これらの胎動 分がすべて稼働すると、今年の中国の石炭火力による電力は前年比4%増すると推計している。

現実問題としてパリ協定は既に有名無実化していると言って過言ではありません。大国にやる気がないのですから他が従う筈もないのです。日本だってあり得ない数字が突きつけられていましたから、ハナから無理です。(笑)じゃあ、人類はどうなるのか? 地球は住めない星になるのかというと、そんな事もないような気がします。

大気汚染を含む環境問題では一部の地域や国は存亡がかかる程の大問題になるかも知れませんが、方向性を明確にしている先進国や未発展地域は多少余裕があるのです。今後改善が進めば、さらにマージンは増えるでしょう。従って汚染が進む国をどう抑え込むかだけが課題になります。

そうは言ってもC02問題だけはどうにもならないのでは?と言われるかも知れませんが、そこは非常にグレーゾーンです。実は確定されたものは何もないのです。事実1965年から2000年頃までは平均気温の上昇が見られましたが、それ以降はむしろ下がっているという報告もあります。

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だからと言って無制限に増やしてもいいというものではありませんが、現在大気中に0.04%しかないCO2が倍になったところで人体への影響は皆無です。温暖化にしても諸説あって定まっていません。この手の議論には政治的なものやポジショントークがあるので、今一信用出来ないのです。

いずれにしても温暖化に関しては人類にとっての喫緊の問題ではないと言えます。それより毎年何百万人も死んでいると言われる大気汚染を何とかする方が先決です。

そのためにしなければならない事は電力需要を直接増やすEV化ではなく、発電所や自動車、航空機、船舶から排出される有害物質の除去、つまりPMやNOX、SOX等の排出量規制である事は論を俟ちません。

それがある一定のレベルに達しないものは廃止するしかないのです。まず石炭火力発電はやめるべきです。次に石油、それらを天然ガスに置き換えるだけで、かなり改善されます。

その状態でのEVなら価値がないとは言いませんが、逆にそのレベルであれば汚染に関しては内燃機関も大差がないのです。むしろSOXでは圧倒的に有利です。但し、ディーゼルエンジンは除きます。

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結論としては、再生エネルギーによる発電や脱火力発電に成功した国はEV化が有効です。そうでない国は車外から充電をしない電動車、つまりハイブリッド車や天然ガスエンジン車を選択する事が大気汚染を軽減する近道なのです。

再生可能エネルギーや常温での核融合等の新技術が発電のメインになるまでは、発電は天然ガスがメイン、自動車はハイブリッド、特にエンジンを最も高効率で稼働出来るシリーズハイブリッドが、妥当な解ではないでしょうか。

シリーズハイブリッドの代表例としては日産ノート等の eパワー、ホンダ・アコード、インサイト等の i-MMDがあります。市街地走行が多い場合は日産方式、オールラウンドならホンダ方式が有効です。

テスラ? そうそう、最初はテスラのビジネスモデルの話でした。(笑)石炭、石油火力が総発電量の50%を超えるアメリカではEVは最新のハイブリッド車に劣ります。テスラのようなEVが増える程、大気汚染が原因で亡くなる人が増えるという訳です。

因に米国の発電による1kWh あたりのSOX 排出量は日本の8倍、NOX は2倍だそうです。他の先進国ではもっと酷いケースもあります。(東京電力の資料による)

EVは小型にすればする程そのメリットが増えるのですが、大型にしてしまってはコストと環境負荷が増えデメリットが増幅されます。存在意義が限りなく薄れるという訳です。

テスラより日本の軽自動車の方が余程クリーンだという事実を、東京でテスラに乗っている人たちは恐らく知らないのでしょう。アメリカで乗るよりは多少ましですが、バカ高い車両価格に見合ったものは何もありません。

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(テスラに近いコンセプトでデザインされたBattista / Pninfarina のデザイン 1900ps 2億円?のモンスターEV 限定150台の生産になる。)

そもそもあそこまでデカくして、さらに動力性能を誇りたいのであれば、数を取りに行くのは間違いです。上のスーパーEVのようなニッチマーケットで勝負すべきでした。それなら多少の生存空間もあるというのに、欲をかいては虻蜂取らずで滅亡あるのみです。

テスラというビジネスモデルは70年代までのアメ車を彷彿とさせます。爆食いの恐竜には絶滅の未来しかないのですが、同じ間違いは繰り返されるようです。

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2019年3月13日 (水)

一見成功したかに見える、テスラというビジネスモデル

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 最近東京の街を歩いていると、見慣れないマークの車に遭遇する機会が増えた事に気がつきます。米製EV、テスラが随分と目につくようになったのです。その、ちょっと先進的で無国籍なデザインは日本人にも受け入れられたように見えます。

今はデカいセダンのモデルSと、さらにデカいSUVのモデルXだけですが、近い内に日本車に近いサイズ、いわゆるDセグのモデル3も加わるようです。モデル3は500~700万円程度で比較的割安ですが、モデルSは1000万円前後、Xだと1300万円前後というベンツの最上級にも匹敵する高額車です。色々な意味で驚きを禁じえません。

私の想像に過ぎませんが、この車のユーザーは恐らく、環境性能、自動運転?などの先進性、あるいはEV独特の加速や乗り味が気に入っての購入だと思われます。イーロン・マスクのファンもいるかもしれません。特にIT系企業の経営者ともなれば、そのライフスタイルにうってつけの車かもしれないのです。

これまでの、高級車と言えばベンツ、BMW、アウディ、国産ではレクサスあたりがポピュラーでした。それらが持つマンネリ感、おやじ臭さがない事も新鮮で、十分選ばれる理由になり得るのです。驚くべき事に米ではモデルSがベンツSクラスを抑え、そのクラストップの売れ行きだと言います。(下の表)

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これは画期的です。ベンツ神話の崩壊と言えるのではないでしょうか。日本では長年ダサイ、ガス爆食い、派手、などの理由で敬遠されて来た米車ですが、このままうまくいけば失地回復に繫がるのかもしれません。

往年のアメ車は素晴らしく立派でした。私なども子供の頃には憧れたものです。デカくて豪華なアメ車を所有するような身分になりたいと単純に思っていました。何と言っても真夏のクーラーの効きには驚嘆したのです。こんな贅沢な世界があるのかと。(笑)

時は流れ、二度のオイルショックや幾度かの経済危機を経て、デカさや派手さは影を潜めました。経済性が選択理由の上位を占める時代となり日本車が世界で活躍する条件が整ったのです。あの自動車王国のアメリカで日本車がシェア40%も占める時代が来るとは誰も予想しませんでした。

ところがさらに時代は動きます。オイルサンド等の出現で、今は経済性よりむしろ安全性に重きが置かれるようになったのです。次に環境性能でしょうか。特に米では大型化が進み、販売の主役はSUVがセダンに取って代わりました。そのシェアは60%にもなり、さらに勢いは増しています。

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(テスラのSUV モデルX 5Mを越す全長に2Mの全幅、重量は2.5トン、正にモンスターだ。)

環境問題に関してはカリフォルニアのZEV規制や中国のNEV規制などでEV化が急速に進んで来る事は間違いありません。欧州の主要国も電動化を宣言して方向性を明確にしました。その波は日本にも怒濤の如く押し寄せるのでしょうか。

ここまで読まれた方は、お前もついにEV化路線に宗旨替えしたか、とガッカリされたかも知れません。(笑)否、そんな事はないのです。ず~っと先の将来の事は分からないし考えたくもありませんが、少なくとも私の目の黒い内はEVの時代にはなりません。自信を持って言えます。

尤も、政治家達がおかしな選択をしなければという注釈は付きます。内燃機関廃止!とか言い出すとややこしいのです。そうではなく賢明で妥当性のある判断を、これからしていくだろうという前提での話です。

まず、この問題は地球単位で考える必要があります。それには非現実的な理想論でしかないパリ協定はともかくとして、実現可能な範囲で高い次元の妥協点が求められるのです。その先の事はその時に決めればいいのであって、今の時点で不確定な遠い未来の事を云々する意味はありません。

恐らくですが、今一番いいのは乗用車の個人所有をあるレベルで規制し、日本の様に公共の交通機関を充実させる事です。カーシェアリングも合理的な解と言えます。それでも人口増加や経済発展によって増えるであろう絶対量(CO2や汚染物質)をいかに抑え込むかという問題が残ります。

先進国の方向性は、好むと好まざるに関わらず電動化がある程度見えてきましたが、途上国はそういう訳にはいかないのです。ただでさえ供給が不足している電力を車に使う訳にはいかないので、ガソリン車メインにならざるを得ません。

途上国で電動化するにしても車外から充電の必要がないものに限ります。つまりハイブリッドです。それもストロングは技術、整備、インフラ等で非現実的なので、マイルドハイブリッドにいかざるを得ません。さらに今後熱効率が50%を超えるなら従来型内燃機関も未だ未だ使えます。

今後増々需要が増える電力に関しては期待の再生可能エネルギーは不安定さやコストがネックになるので、全てをそれに置き換えるとなると時間がかかります。それまでの繋ぎをどうするかによっては車の方向性も大きく変わって来るのです。

人命を尊重するなら脱石炭、脱石油しかありません。出来れば化石燃料系では一番クリーンで発電コストも低いと言われる天然ガス発電が望ましいのですが、搬送や冷凍保存には液化が必須で、そのために電力が大量に消費されるというパラドックスを解決しなければなりません。

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(発電別の大気汚染や事故による死亡率、圧倒的に石炭発電が不利である。天然ガスはバイオマスより死なないようだ。原子力が一番安全だというのに差別されているようで、新規の需要は少ない。)

ちょっと話が大きくなり過ぎて実は後悔しています。(笑)悪い癖とは言え、どうまとめるか不安になって来ました。こればかりは独断と偏見で、という訳にもいきません。少し時間が必要なので続きは次回とさせて下さい。

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2019年1月26日 (土)

EV化というワードに踊らされる日本マスコミ

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今日は久々自動車の話をします。

先日のテレ東WBSでコメンテーター(エコノミスト)の一人が「EV化で出遅れたトヨタが・・」と言っていました。未だこんな事を言う人がいるのかと口あんぐりですが、日本のマスコミのレベルは世の変化とは関係なく何も変わっていないようです。

あの、いいですか。(笑)ハイブリッド車というのは一種のEVなのです。思い切り分かり易く言えば、EVにガソリンエンジンをプラスしたのがハイブリッド車で、EVとガソリン車双方のいいとこ取りをしている訳です。これは過渡期の技術などではなく既に確立された持続可能な先端技術と言えます。

と言うのは、シンプルで二次電池以外には発展の余地が大して残されていないEVと違って無限とも言える可能性を秘めているからです。分かり易いところでは燃費です。モデルチェンジ毎に改良されます。価格も低廉化が進んでEVとは致命的な差が開きました。その構造のバリエーションもデバイスの組み合わせによって無数にあります。

例えばロータリーエンジンとの組み合わせや、エタノールを使ったFFV(フレックス燃料車)とのマッチングもあり得るのです。その他、新しいアイデアは今後も日本を中心に続々と登場して来る事でしょう。

日産が販売好調で得意になっている e-POWERですが、実はこれもシリーズハイブリッドと呼ばれるハイブリッドシステムです。ハイブリッドで出遅れた日産はそう呼びたくないようで、レンジエクステンダーなどと嘯いていますが、ユーザーを欺くようで感心しません。

本来のレンジエクステンダーはEVベースで、航続距離の足りないところを補うために小さめのエンジンを積みます。あと100キロくらいは走りたいなあ、と言う気持ちに応えるのがこの方式です。従ってバッテリーの量がシリーズHVとは致命的に違います。BMWの i3がこれに相当します。

一方の e-POWERは重くて高いリチウムイオン電池の代わりに発電用エンジンを積みます。という事は出力も搭載するモーターに見合った大きなものが要求されるのです。この場合、殆ど発電しながら走りますからガソリンも普通のガソリン車並に積む必要があります。

ただ、日産ノート e-POWERのケースは既存のエンジンをそのまま発電用としているのでベストな仕上がりとは言えません。この割り切った方式の場合、発電専用エンジンにすればもっと効率を上げる事が可能だというのに、なぜか採用していないのです。

それを実直に実行し、発展させたのがホンダのアコードやオデッセイに搭載されている2モーター式ハイブリッドシステム、iMMDです。基本構造は e-POWERと似ていますが、より高効率にするために色々工夫が凝らされています。

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(内容は素晴らしいオデッセイ・・しかしデザインが・・)

モーターは得意な低速域のみを担当し、その時発電用に徹する専用のアトキンソンサイクルエンジンは80キロ以上の高速では駆動用に切り変わり駆動輪直結となるのです。正にいいとこ取りです。

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(iMMDは三菱アウトランダーPHEVと近い方式/静止状態での充電が可能かどうかと電池の量の差か)

この劣化板とも言えるのが日産の e-POWER方式ですが、後発なのになぜ?という疑問が拭えません。これだと80キロを超える高速では燃費がた落ちです。さらにブレーキペダルを踏んでもエネルギー回生はしないと言います。

要するに普通の走り方をしたのでは高燃費が維持出来ないのです。ユーザーにメーカー都合の走り方を強いるのでは車として一人前とは言えません。メーカーの姿勢にも疑問符が付きます。

付け焼き刃的でやっつけ仕事的なこの日産式シリーズハイブリッドは過渡的なものと言えるでしょう。進化版のモデルチェンジが待たれます。ゴーンさんのいない日産なら期待出来るのではないでしょうか。

ちょっと横道にそれましたが本題に戻ります。意外かも知れませんが、実は欧州がEVへの繋ぎとして本命視しているのはプラグインハイブリッド(PHV)とマイルドハイブリッドです。前者は限りなくEVに近く、後者はガソリンエンジン車に近い存在だと言えます。

素朴に今なぜそこ?という疑問が浮かびますが、トヨタやホンダのようなストロングハイブリッドが上手く開発出来ないので逃げているのでしょうか。PHVの場合はEVが持つ、高い、重い、充電が面倒というネガをそのまま持っています。これこそ繋ぎ技術と言って差し支えありません。

一方の簡便で低価格なマイルドハイブリッド(発電と駆動を兼ねる1モーター方式)はいずれ途上国の本命になると思われます。日本では小型車しか持たないスズキが採用し実を上げていますが、この構造も未だ未だ改良の余地がありそうです。

以上、ハイブリッドシステムのポテンシャルとメカとしての面白さがお分かりいただけたでしょうか。全てのカテゴリーに対して柔軟に対応可能なこのシステムの熱効率はトヨタによると55%(理論値)が目標だと言います。(今は40%前後か)

この数字を額面通り受け取れば、従来の電力インフラを使う前提だとEVのWELL TO WHEELでの熱効率と大差ありません。その意味はCO2排出量が同等という事なので、EVの唯一と言えるアドバンテージに赤信号が灯る訳です。

実はこれにはパラドックが隠されていて、折角EVを増やしたとしても、その分の電力を効率が最も悪い石炭発電に依存するのでは返ってEV全体の熱効率が下がります。EV増加分は再生可能エネルギー発電を増やす事によってのみ意味のあるものとなるのです。

いずれにしても電動化はEVと多様化するハイブリッド群の棲み分けによって進んで行きますが、10年以内に純ガソリン車が消えてしまう事はあり得ないし、EVが30%以上のシェアをとる事も考え難いと思われます。電動化全体で50%に達したとしても、その大半はハイブリッド車になるでしょう。

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( EVの製造コストの3分の1から2分の1を占めるとされるリチウムイオン電池。その電池を構成するのが、正極材、負極材、電解液、セパレーターといった主要4材料だ。それぞれの材料において、日本メーカーが存在感を発揮している。

正極材でトップを走るのが住友金属鉱山。電池を高容量化することが可能なニッケルの含有率が高いニッケル酸リチウムを使用し、原料からの一貫生産を手掛ける。

 2018年中にも約40億円を投じた磯浦工場(愛媛県新居浜市)の設備能力増強が完了し、従来比約3割増の月産4550トン体制となる。パナソニックと共同で開発しており、最終的には米テスラ向けに供給されている。)

さらに電動化に関してはは技術だけでなく、そのための部品供給インフラ、サプライチェーンを必要としますが、それが質量共に確立しているのは日本だけです。国内に電動化のための部品製造会社が山のようにあるのです。

ドイツなどは長年ディーゼルに傾倒して来たツケが廻り、国内にEV化のための部品インフラを持ちません。メンテナンスのためのサービスインフラさえないのです。全てこれからなのですが、昔からEV先進国だったような顔をしています。(笑)

肝心なリチウムイオン電池さえないので、取りあえず中国から調達するなどと言っているのです。他の重要部品は日本からになりますが、それを見据えての日欧EPAでした。ここでも日本は手玉に取られています。

しかし、それで高級ブランドとしてやっていけるのか人ごとながら心配になります。韓国製リチウムイオン電池はよく燃えると定評がありますが、中国の電池は韓国経由と思われます。燃える高級車ではシャレにもなりません。

これでお分かりのように、出遅れではなく、世界で最も電動化が進んでいるのがトヨタであり日本メーカーとその部品供給インフラ、サービス網なのです。これ程明々白々な事実は滅多にあるものではありません。EVは時期尚早として期を伺っているだけです。

今のEVでは賢明な日本人ユーザーは一部のもの好きを除いて誰も買いません。それが分かっているからこそ日本メーカーは慎重なのです。それにしても、あのWBSの人、出遅れていないのはどのメーカー(国)をイメージしていたのでしょうか。全く謎と言うしかありません。

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2018年11月20日 (火)

絵に描いた餅か?

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=ベトナム初の自動車会社の新モデル 日本車と遜色ない出来か=

(前略)

 ビンファーストには母体がありました。それがベトナムの大手不動産企業である「ビングループ」です。近年ではリゾート施設やショッピングモール、病院や学校経営まで行うなど、事業の多角化を図っています。そして、今度は自動車です。

 しかし、彼らの進める自動車ビジネスは本気も本気。「プロトタイプを出品して、様子を見る」とか「話題となって、何か続きができるといいな」とか、そういうレベルではありません。

 すでに2017年からハノイ郊外のハイフォン経済特区に15億ドルの費用をかけて335ヘクタールの工場を建設しているというのです。起工式には、ベトナムの首相も参加。相当に期待されているようです。

CEOに元GMのジェームス・デルーカ氏を起用。プラットフォームとエンジンは、古いBMWのものを使います。BMWだけでなく、マグナ社、ボッシュ社、シーメンス社など欧州の有力企業の協力も得ることに成功しました。

 また、新しいクルマのデザインは、イタリアのデザインハウス「ピニンファリーナ社(Pininfarina)」と共同で設計しました。そんなベトナム&欧米の協力の元に生まれたのが、今回のパリで発表された「LUX A2.0」(セダン)と「SA2.0」(SUV)の2台の新型車です。

 パワートレインは、2リッターの4気筒ガソリン・ターボ・エンジンとZF製8速AT。セダンは後輪駆動、SUVは後輪駆動と4WD。最高出力はセダンが130kW(175馬力)/170kW(231馬力)、SUVが231馬力だそうです。

そんなパリのモーターショーでビンファーストは「ニュースター賞」を獲得。さらに本国では販売店を募集中で、2019年には販売を開始する予定とか。さらに、乗用車だけでなく、電動バスなどの電動車両の開発も行っていると報じられています。

(別記事)
ベトナム政府は2018年1月から、主要な自動車部品の関税をゼロにする。東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体の完全実施で域内からの輸入車の関税が撤廃されることに合わせ、国内の自動車組み立て産業を保護する。ベトナムの新車販売は16年に過去最高の30万台となった。

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 日曜夜にBSカーグラテレビでパリサロン(モーターショー)特集を観ていると、ベトナムから二台の乗用車の出展があったとレポーターが物珍しそうに伝えていました。日本車と遜色ない出来映えだと他のメディアも伝えています。カルチャーショックでも受けたのでしょうか。(笑)

いえいえ、何をおっしゃるウサギさん。二台のショーカーだけを見て何が分かると言うのでしょうか、「日本車と遜色ない?」気は確かですか?と言いたくなります。そもそも一人当たり名目GDPが2500ドル(28万円) 日本の20分の一程度の国でEセグメントの車を開発して販売する??

う〜〜ん、日本車でもそのクラスは300万円以上はします。そんな車をベトナム国内で作って売るなんて事を本気で考えているのだとすれば、その経営者は頭がおかしいとしか言いようがありません。

自動車生産では先輩格のインドだって、タタが20万円台の国民車ナノを10年程前に投入しましたが、大赤字になり結局上手くいきませんでした。

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(安いのはいいが、装備が充実していないなど、ユーザーからの不満が多かったタタ・ナノ)

車ビジネス(開発、販売、その後のサービス)は本当に一大事業なんです。GDPがベトナムの比ではない台湾やタイだって自国オリジナルは作れていません。中国のように国ぐるみで資金力にものを言わせてもあの程度です。謎だらけで突っ込みどころ満載の上記記事、今日はこの件を少し分析をしてみたいと思います。

ともあれ、この手の無責任記事は結構あって、10年程前にも中国某メーカー生産の乗用車をアメリカの某企業が輸入販売するという話をセンセーショナルに伝えるニュースがありましたが、いつの間にか立ち消えになっています。

その中国メーカーはかなり大手で中国内の実績もありますが、先進国へ輸出するなんて言うのは10年早いというか、あれから10年以上経っても実現する気配すらないのですから、30年くらい早かったのかもしれません。(笑)もっとか?

先進国以外で曲がりなりにも先進国へ輸出が出来ているのは韓国しかありません。なぜ韓国にそれが可能だったのかと言えば日本が傍にあって、最大限の協力を惜しまなかったからです。三菱自動車などがグループぐるみで手取り足取り教えた過去があり、その結果としての現在があります。

しかし、それも最近になって電動化等の技術的立ち後れから失速が目立つようになって来ました。おまけに最近の度を過ぎた国を挙げての反日ですから、見通しは暗いと言わざるを得ません。つまり半導体などと同じく重要部品を日本に頼っている立場で、何を血迷ったかという事なのですが、本人達は気がついていないようです。

翻ってベトナムはどうでしょうか。ボディはイタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリナのデザインと言いますから、確かにそういうところに依頼すればあるレベルのボディ設計は出来ます。スタイリングもお洒落で悪くないでしょう。

元GM経験者をトップに据え、プラットフォームとエンジンはBMWから供給されれば格好はつきます。部品の調達も欧州メーカーからの協力で問題ないと思われます。

しかしながらこのクラス(E セグメント)では輸出は無理です。途上国では高過ぎるし、例え数々の難問をクリアして先進国に輸出が出来たとしても名もないブランド、先進国では誰も買いません。ではベトナム国内で売れるかと言うと、これも無理があります。こんな高級車、公官庁を除いて誰が買えると言うのでしょうか。

そこでふと気がついたのですが、ベトナムに世界で一番投資をしている日本の姿がどこにもないではありませんか。これは全く腑に落ちません。今後必要とされる電動化や自動化技術の殆ど全てで先頭を走っている日本の姿が見えないというのは不可解です。

だからと言う訳ではありませんが、この話も近い将来立ち消えになるでしょう。いや絶対になります。(笑)その理由は主に金銭面からですが、テスラを見ても分かるように赤字続きでは会社は保ちません。

大赤字のテスラを何とか保たせているのは政府からの補助金と錯覚した一部の新しいもの好きのファン、さらにトップ、イーロン・マスク氏の詐欺師的錬金術のお陰で、普通ならとっくに潰れています。莫大な市場を持つ米国でさえ新参会社は大変なのです。

ベトナムの場合も今回の新型車開発にテスラ同様莫大な費用がかかる事は言うまでもありません。協力してくれる相手が皆世界の一流企業ですから技術にせよ部品にせよ安く売ってくれるなんて事はあり得ないのです。むしろ足下を見ます。

さらに彼ら欧州企業は技術移転など全く眼中にないでしょう。そんなお人好しな事をすれば今後継続するかも知れないお得意さんを失うのですから、する筈がありません。

その辺りは全く日本人とは違うのです。日本の場合は企業としてその気はなくても、派遣されたエンジニアが一生懸命地元のエンジニアを教育したり情報提供したりします。ゴルフと同じで、教え魔が多いのです。(笑)損得関係なくそれをやりますから日本が協力している国は皆繁栄しているではありませんか。

韓国、台湾、中国等、近いという事もありますが、日本企業が入り込んだ国は払った金額以上の恩恵を受けるのです。倍返し?それ以上でしょう。遠くではタイ、これは親日国だし料理や国民性が日本人好みなので得をしています。

反対に欧米企業が入ると国であれ企業であれ、まず草狩り場になります。中国よりはましかもしれませんが、元々植民地主義の国々です。時代が変わった今、露骨な事は出来ないとは言えメンタリティは昔と大して変っていないのです。

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(スズキジムニー・シエラ 原点回帰で大成功した例。一目で車の性格が分かる。やはりシンプルで骨太コンセプトが一番。欲しくなる一台だが、買い物等の街乗りでも威力を発揮するだろう。疫病神のVWと分かれてから元気がいいスズキ車。こうでなくちゃ。)

日本の例で言えば、VWとの別れ話に手こずったスズキ、ダイムラーに現在進行形で痛めつけられている三菱ふそう、上から目線で対等な立場に立たせてもらえません。ニッサンもそうです。どんどん利益や技術が海外へ移転しています。(この件、ゴーン氏の逮捕によって歯止めがかかるかも知れません。ニッサンにとっては千載一遇のチャンスが巡って来たと言えます。今後を注視しましょう。)

そういう強欲な人達を相手にして自分がのし上がるには相当な資金力と精神的しぶとさが必要です。さらに将来展望がないと話にならないのですが、一人当たりGDPが2500ドル(28万円)ならナノクラスでも国民車として難しいかもしれません。

日本は一人当たりGDPが3000ドル(今の為替レートの3分の1の円安時代なので100万円くらいか)を超える頃から車が爆発的に普及し始めました。つまり年収の半分くらいが普及の分岐点と言えるのかも知れないのです。

そう考えた時に、ベトナムは時期尚早と言えます。しかも、国民車を作る条件としては、普及し始めた頃の日本の様に部品のサプライチェーンを国内に持つ必要があります。部品の大半を海外に依存して低価格は実現しません。

つまり裾野(生産要素)を充実させなければならないのですが、その資金や人的リソースを考えると気が遠くなります。途上国が日本の協力もなしに一朝一夕に実現出来る話ではないのです。

そんな事より現実問題として鉄道やバスの交通インフラを充実させるのが先決ではないでしょうか。それによって生産性を上げ内需を拡大し経済力をつけてからでも遅くはありません。いずれにしても日本なしで実現出来る話ではないのですが、そこに気付かない限りベトナムに明日はないでしょう。(笑)

絵に描いた餅は食えないのですから、叶わぬ夢を追うのはやめるべきです。まあ今回の件、一言で言うと金持ちの道楽ですかね。ビジネスモデルとしてはあり得ないと言っておきます。もっと地に足をつけなきゃ。

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2018年10月31日 (水)

日本車の天下はいつまで続くのか。

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サウジのジャーナリスト殺害事件に続き、これまた中東から生還した日本人ジャーナリスト(自分は韓国人ウマルだと言っている、二重国籍か?)の話題がマスコミをにぎわせています。しかしこちらは少し様子が違うようです。

安田氏お得意の政府批判は、どう見ても甘えているようにしか見えません。自分の身は安全なところに置いて、駄々をこねているようにしか見えないのです。

彼を英雄視しているのはお仲間のマスコミだけで、我々一般の日本人は彼の無責任さに呆れを通り越して腹を立てています。そもそも本当に捕虜だったのか大いに疑問です。命の危険に晒されながら3年間も狭い空間での拉致、監禁生活を余儀なくされていた人には見えないのです。

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憎まれ口の叩き方も元気一杯です。ひょっとしてテロリストとグルなのでは(?)という疑念さえ浮かびます。そうでなければ渡航禁止で、しかも何度も捕まった危険極まりないところにノコノコ出て行くでしょうか。身代金目当ての商売に加担しているのなら話は別です。

結果的にはカタール政府が身代金を肩代わりしたようですが、表向きにはテロ集団支援が難しいカタールの苦肉の策に見えなくもありません。実際そのような事を言っている専門家もいます。人道的措置を隠れ蓑に資金援助をしているのでしょうか。従って日本政府に請求書が廻って来る事はなさそうです。

とにかく中東、特に紛争地は複雑怪奇なのでジャーナリストと言えども個人レベルでは近づかない事です。よく自己責任論と言いますが、そんな範疇ははるかに超えています。3億円も払ってもらって責任がとれる訳がありません。情報収集をするにしても国家レベルで対応するしかない問題です。

あれだけ政府に楯ついて、廻りに迷惑をかけまくり挙げ句はテロ集団に資金援助するのでは疫病神と言うしかありません。そんな人は渡航禁止、パスポート剥奪が妥当な扱いと言えます。ブタ箱に入れられないだけ有り難く思うべきです。

次に韓国の元徴用工訴訟問題も腹が立ちます。そもそも当時彼らは日本人だった訳で、戦時中に強制徴用されても文句を言える筋合いではないのです。実際には朝鮮人が朝鮮人を斡旋して日本に送ったようで、強制性など微塵もありません。豊かな日本に出稼ぎに来ただけです。

この問題、日本政府の対応のまずさが今日まで問題を引きずり、返って悪化させてしまいました。お陰で民間に大損害が発生しています。口先だけでなく本当に毅然とした態度をとりましょうよ。河野君だけが頼りでは情けないです。胸くそが悪いです。

さて気を取り直し、今日は久々自動車の話題です。破綻しない米シリーズはお休みします。

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米国の有力専門誌『コンシューマー・リポート』が発表した自動車ブランドの信頼調査で、日本の企業が上位を独占したという。共同通信が配信した記事を、今日の産経などが取り上げている。

 それによると、首位がトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」、2位が「トヨタ」で前年の1、2位が入れ替わった。3位には「マツダ」が前年12位から急上昇、「スバル」も前年6位から4位にランクアップしている。

 このうち、マツダの急上昇については「ロードスター(日本名)などの評価が高かったためとしている。

 自動車ブランドの信頼度調査は、50万台超の車のデータを集め、性能や品質などを分析。日本勢では日産自動車の高級車ブランド「インフィニティ」も前年の7位から6位に上がったが、日産の「ニッサン」は14位、「ホンダ」は15位にランクを下げたそうだ。(RESPONSEから)

相変わらず日本車の信頼度が高いようですが、順位が前年と比較して、いつも大きく動く状況が気になります。車自体は1年くらいで大きく変わる筈がないので、その原因は何だろうと思わざるを得ません。調査された車が50万台超と、かなりな分母なので余計謎です。

しかしアメリカで調査されたというのにアメ車はフォードの18位が最高で、テスラに至ってはビリから3番目の27位、キャディラックは28位ですから高級車の名が泣きます。そして最下位は何と、日本ではジャーマンスリーに次ぐブランド力を持つボルボですから驚きました。

やはり生産地というのが効いているのかもしれません。アキュラ(ホンダの高級ブランド)、ホンダが13位、15位というのも現地生産が多いせいという分析もあるようです。最下位ボルボも高級車のS90など、一部が中国製らしいので頷けます。

因に日本に入って来るボルボも今後は中国製が増えて行くと言います。それが吉利汽車(中国資本)を受け入れたボルボ社の方針ですから確かです。金は出すがボルボの開発方針には口を出さないという事に対する謝意でしょうか。

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(急に2ランクくらいグレードが上がった最近のボルボ PHOTOはS90)

ジャガー・ランドローバーが元気がいいのもタタ(インド)が金を出しても口は出さないからです。今後も素晴らしい高級車ラッシュの予感がします。さらに日欧FTAで優秀な日本製部品が格安で手に入りますから欧州の巻き返しが恐ろしい事になる事は避けられそうもありません。

とにかく今の日本車はデザインがダメ!

中国での販売台数ベスト10(17年度総販売台数2900万台)

1位 フォルクスワーゲン(独) 314万台
2位 ホンダ 142万台
3位 吉利汽車(中)125万台
4位 ビュイック(米)122万台
5位 トヨタ 114万台
6位 ニッサン 112万台
7位 長安汽車(中) 
8位 上汽通用五菱汽車(中)
9位 HARVAL (中)
10位 フォード(米)

話を少し戻します。モデル3の量産化に手間取って赤字を限りなく膨らませて来たテスラですが、ようやく軌道に乗ったようです。それも週に5000台生産と言いますから驚きです。年間だと26万台にもなります。これだと量産メーカーそのものです。

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日本国内で言えばホンダのN-BOX(上)が22万台(17年)でトップですが、それより多く売ろうというのは、テスラが本格的な量産メーカーを目指しているからに他なりません。それにしてもEVだけで目指すというのは、かなり無謀と言えます。

頼みの綱、トランプさんだってEVに対する補助金打ち切りを言い出しているご時世です。もしそれが実現すればテスラのような新参者はひとたまりもありません。数年後にはそんなカステラあったの?と言われるのがオチです。

冗談はともかく、EVの存在価値を疑われかねないコンセプトの製品をどんどん出して来るところがアメリカらしいというか、深く考えていない証拠です。とにかくEVのネガを力技で克服しようと言うのですから呆れてしまいます。

航続距離が伸びない、あるいはバッテリーを積む事による重量増等のハンデを克服するため、さらにバッテリー量を増やして解決しようとしました。その結果は決してエコカーと呼べるものではなくなっています。

まず価格がバカ高いものになり、WELL TO WHEEL で見たCO2排出量に至っては小型ガソリン車にも劣る程です。EV生産の当初の目標、理想からは程遠いと言わざるを得ません。ニッチ狙いだからこそ生存空間が存在したのです。

少量生産のニッチなら世界の名だたる高級車メーカー並にはなれたかも知れないというのに、何をトチ狂ったかトヨタを目指したがために自らを存亡の危機に陥らせました。

日本車もアメ車だけには負けそうもありませんが、気がつくと欧州車の足音がすぐ背後に・・・グローバリズムの罠に嵌った日本車の未来はいかに。

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