ナメリア国物語(最終章)
そんなある日、イクーラで靴を投げられ、うまくかわしたのを見たテキ屋さんにスカウトされたギッシュさんからノルマさんへと政権が変わり、ナメリアから特使が来る事になりました。クルリー外務長官です。この人は凄い人です。何が凄いかって、大頭領選挙の時には、あれほど強烈に非難していたノルマさんの考えに、選挙が終わった途端にクルリと同調するようになったからです。
君子豹変と言いますが、ナメリアではハレンチントンのカメレオンチェンジと言われているそうです。あっ、そうそう夫のハレンチントンさんは大頭領のときに何を考えたか、モナカ フリンスキー女史と一緒に大頭領官邸をピンク色に塗り替えたんだそうです。それ以来ピンクハウスと呼ばれるようになりました。これは余談です。
夫唱婦随とはよく言ったもので、クルリーさんはそんな夫を別居しながら献身的に支えました。二人でチョイナへ電子爆弾の部品を送る姿がアーソーソーの地元でよく見かけられたそうです。この頃からチョイナ国とは蜜月関係で、夫は露骨にチャバンパッシングをしていました。クルリーさんは自分が大頭領になったらナメリア国全部を売り飛ばしても良いと思っていたくらいです。女性にしてこのスケールの大きさは、よく言えば宇宙的なのです。
それほど凄い人が凄い密命を帯びて来るのですから、よっぽど心してかからなければなりません。政府関係者だけでなく、抜け目がない事に次期総利と目されるオワーザさんにもご指名がかかりました。例えばこれから5年間、毎年100兆円くらい出せ、などと言い出しかねないのです。もっとかも知れません。。。
クルリーさんの要求はやはり想像を絶するものでした。そこで、どういう訳か、いつになくチャバン政府は冷静だったのです。言いなりになって国益を損ねる様な事はしないぞと、政府内がまとまっていたのは国内の緊急経済対策に目処がついていたからでしょうか。頭のいい学者の言う事をよく聞いて、既に政府紙幣の発行が軌道に乗っていたのです。経済は急上昇カーブを描くでしょう。
ナメリア救済のチャバン政府案は以下の様なものでした。
1、 チャバン国通貨建てによるナメリア国債の買い入れを30兆円、向こう3年続ける。必要に応じて延長もあり得る。
2、 ワイハ、アーラカスのいずれか、あるいは両方を担保に融資する。
3、 安心保全条約の見直しをする。チャバンに駐留するナメリア軍を補強、自守隊と混成としチャバン政府との共同指揮下に置く。これに関する全費用はチャバンが負担する。これは20年計画で段階的に自守隊比率を増やし、最終的にはナメリア軍は完全撤退する。
4、上記の支援の条件として、第二次宇宙大戦での間違った歴史認識を修正する。宙際法に違反し大量破壊兵器を非戦闘員に対して故意に使用した事実を認め、正式にチャバンに謝罪、被害者に対しては相応の損害賠償をする。またイーストブルグ裁判における戦犯の復権をする。
このような積極支援案の背景にはチャバンのしたたかな計算がありました。まず冷静に考えて、ナメリアはチャバンの支援がない場合は、後数ヶ月でデフォルトを起してしまう事は目に見えています。その場合の宇宙への影響は計り知れません。連鎖デフォルトがおきて、そこら中で火の手が上がるのは必至です。チャバンも膨大な債券を宇宙中から踏み倒されて、優雅にやっている場合ではなくなるのです。
最悪のケースは第3次宇宙戦争だって勃発しかねません。このところさかんにチョッカイを出して来るチョイナ民国、アーシロ連邦、ノースアリコ対策にも頭が痛いのです。それを考えれば一時的に大変な思いをしても、持てる国、知恵のある国が宇宙全体の安定の為に貢献しなければならないのは明らかです。更に歴史認識を大幅に修正して、周辺国からの恫喝をかわすのは、積年の課題でもありました。誘拐問題でも進展があるかもしれません。
藁をもつかむ気持ちのナメリアはこの提案を、大筋で認め受け入れました。やはり持つべきものは盟友だ、などと高く評価し、チョイナに向かっていた気持ちを切り替えたのは言うまでもありません。他の国もチャバンがそれだけ支援するなら安心だとばかり、ナメリア支援に積極的になったのです。
結局ノルマさんはナメリアの立て直しに10年かかりましたが、首尾よく成功して歴史に偉大な大頭領としての名を刻む事となりました。さらにこの二大強国は手を携えて末永く宇宙を治め、宇宙平和に貢献しましたとさ。目出たし目出たし。。。
(この記事はあくまでもフィクションで事実に基づいて書かれたものではありません。PHOTOはイメージ画像です)
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